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Columnコラム

スポーツナビ 杉浦大介 2005/11/17
契約問題に見えた松井秀の評価
相思相愛で問題ない、が大方の見方

 松井秀喜の再契約が遅れた事は、多くのニューヨーカーにとっても少なからず驚きではあった。
 松井はこれまで常にヤンキースへの「Loyalty」(忠誠心)を感じさせて来た。金銭にほとんど拘らないという暗黙のイメージは、アメリカ人の間にも定着していた。そして何より、ヤンキースというチームと松井という選手は最高のハマり具合を見せていた。
 相思相愛の両者にとって、契約問題など物の数ではない。それが大方の見方だった。それ故に、ブライアン・キャッシュマンGMとアーロン・テレム氏の我慢比べの末に、交渉期限ギリギリまで決着が伸びたのは、誰にとっても意外な事だったのだろう。

 だがだからと言って、一部でささやかれたように、「松井も結局は金次第という悪イメージを地元に植え付けた……」とも、正直言って思えないのだ。
 だいたい、松井が最終的にたどり着いた4年5200万ドル(約61億8800万ドル)という金額は、今のMLBでそれほど法外なものだろうか?
 1年平均で見れば、スター軍団ヤンキースの中で松井の年俸は7番目である。3年連続で100打点を突破した主力打者としては、大騒ぎするほどの額ではないだろう。例え本当に金額に拘ったのだとしても、彼は当然の事を主張しただけではないか。

ファンもメディアも納得の高額契約

 実は契約成立直前の15日夜、スポーツファンが集まるミッドタウンのバーで、筆者は偶然ながら数人のヤンキース支持者に意見を聞く機会があった。そして松井の場合、いわゆる「酒場の評価」も抜群に高い事をここであらためて思い知らされた。
「A・RODが2500万ドルも貰っていて、松井がその半額ってのもおかしな話さ。元々過去3年間がバーゲンだったんだから、還元してやるべきだよ」
「いくら要求されたからって、ヤンキースが松井を去らせる訳がないだろう。もしそうなったら誰がチャンスに打つんだい?」
 彼らの意見は筆者と同じだった。意外に交渉が難航しているからと言って、批判の声などない。また、大方のNYメディアにとってもそれは同じである。契約延長がようやく決まった16日の朝、地元紙『ニューヨーク・タイムズ』には以下のような社説が掲載されていた。
「松井はもしもFA宣言していれば最高級の人気を集めただろうし、テレム氏も昨季のマグリオ・オルドネス級(5年7500万ドル・現タイガース)の契約を他チームから見つける事もできただろう」
 松井は、おそらく多くの日本人が思っているよりずっと高い評価をNYで受けている事が、これらの言葉からはうかがい知れる。

「日本」という枠を飛び越えたスタープレーヤー

 16日昼、ヤンキースタジアムで遂に行われた再契約記者会見で、松井秀喜はこう語った。
「日本人最高額の年俸は、名誉な事かもしれないけれど、ある意味責任でもある」
……松井は自覚しているのだろうか?
日本人最高額?それも素晴らしいが、しかしニューヨーカーはもう彼を「日本人選手」などという色眼鏡では見てはいないのだ。ヒデキ“ゴジラ”マツイは、母国の枠を飛び越えた、ニューヨークの立派なスタープレーヤーである。
 ちょっと時間がかかった末に得た高額契約も、彼が自身の力で勝ち取った、当然要求すべき権利だったのだ。