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Columnコラム

SPORTS COMMUNICATIONS 二宮清純「唯我独論」 2010/12/22
マネー・ボールにハマる松井の出塁率
 イチローと松井秀喜、打率と出塁率にしぼって今季の二人の記録を見比べてみよう。
<打率>
イチロー 3割1分5厘(ア・リーグ7位)、松井 2割7分4厘(ア・リーグ29位)
<出塁率>
イチロー 3割5分9厘(同18位)、松井 3割6分1厘(同17位)

 打率では大きく差をつけられている松井だが、出塁率では2厘、イチローを上回る。原因は四球の数だ。松井が67であるのに対しイチローは45。これが松井の出塁率を押し上げた。
 ここにアスレチックスの敏腕GMビリー・ビーンが目を付けたのは想像に難くない。限られた資金でチームを強化するビーンのチームマネジメント戦略を描いた「マネー・ボール」(マイケル・ルイス著、ランダムハウス講談社)の解説を依頼されたのは2003年秋のことだ。

 潤沢な資金を誇るチームが、ほぼそれに見合った成績を収めるのがメジャーリーグのみならずプロスポーツ界の常だが、当時、アスレチックスだけにはこの原則が当てはまらなかった。
 いかにしてビーンはローリスク、ハイリターンを可能にしたのか。ビーンがまず取り組んだのはデータの選別である。ひらたく言えば、どの記録を重視し、どの記録を無視するか。打者に関して言えばビーンは「出塁率」を最も重視した。要するに四球もヒット同様「テイク・ワンベース」と見なしたのである。

 一方でビーンはバントや盗塁を有効な攻撃手段とは見なさない。みすみす敵にアウトをひとつプレゼントしたり、やってみなければわからないギャンブル系のプレーをビーンは徹底的に排除した。
 さて、再び松井の今季の成績を見てみよう。盗塁も犠牲バントもゼロ。ビーンの目にはこれも魅力的なデータに映ったに違いない。

 マイケル・ルイスによればメジャーリーグには<プロ野球をやる人々の王国と、プロ野球について考える人々の共和国>の対立がある。これを意訳すれば、王国が主観で成立するのに対し、共和国は客観で成立する。来季、松井は「共和国の民」となる。そこで、どんな新境地を見出すか。
web Sportiva 2010/12/18
松井秀喜がDH専任になることで得られるもの
福島良一が語る「ゴジラを獲ったアスレチックスのチーム事情(3)」
 松井秀喜選手とオークランド・アスレチックスの関係についていろいろ語ってきましたが、最後に松井選手の2011年がどんなシーズンになりそうか、整理していきましょう。

 松井選手がアスレチックスを選んだ理由には、①四番として常時出場できること、②優勝を狙えるチームだということ、③大都市サンフランスシスコに近くて住環境もいいこと、④同じ西地区なので対戦相手に不安の少ないこと、が挙げられると思います。逆にデメリットは、チームの人気がないことのほかに、もうひとつあります。守備につきたい松井選手の希望に反して、アスレチックスが『DH専任だということ』です。一部の報道では「レフトの守備も兼任する」という話も出ていますが、アスレチックスというチームは、ア・リーグでも数少ない”DH専任を置くチーム”なのです。だから、高額年俸だけでなく守備機会も求めたアダム・ダンやランス・バークマンに逃げられたわけです。

 現在、メジャーの多くは、DHを何人かで回そうという考え方が主流です。松井選手が在籍したニューヨーク・ヤンキースも、ロサンゼルス・エンゼルスもそう。松井選手の獲得に動いていたとされるタンパベイ・レイズも、ボルチモア・オリオールズも、DH専任ではなく、守備を兼任させる考え方です。

 しかし、アスレチックスは違う。なぜかというと、アスレチックスは資金力が不足しているので、守備も兼任できるベテランのスター選手を集められないからです。どうしてもチーム構成は若い選手が中心になり、その若手たちはまだ動けるのでDHになる必要がない。よってアスレチックスは、守備に多少問題を抱えるベテランのパワーヒッターを格安の年俸で獲得し、DHに置こうと考えるのです。最近のフランク・トーマスしかり、マイク・ピアザしかり。

 さらにアスレチックスは選手層の薄さをカバーするためにも、主力選手のケガ人をできるだけ少なくしないといけない必要がある。そうなると、松井選手をレフトの守備につかせてケガを招くリスクは、できるだけ避けたい。常時出場してもらうためには、松井選手にDH専任になってくれたほうが、チームとしてはありがたい話なのです。

 2011年のアスレチックスの外野陣は、カンザスシティ・ロイヤルズから獲得したデビッド・デヘススがレフトに入り、ココ・クリスプがセンター、ライアン・スウィーニーがライトと、守備が巧みで高い身体能力を持つ選手がすでにそろっています。松井選手がレフトに入ることで守備力が上がる、というわけではありません。

 個人的な見解ですが、2009年ヤンキース時代に松井選手はジョー・ジラルディ監督の考えによってDH専任としてプレイしたことが、結果的に体力の負担軽減となり、最後の一番大事なワールドシリーズでの、あの大活躍につながったのだと思います。そう考えると、地区優勝を目標に掲げるアスレチックスも、松井選手にはDH専任という形でシーズンを通して試合に出てもらい、体力を余計に消耗することなく、できればプレイオフで爆発してもらいたいと期待しているでしょう。

 アスレチックスのホームはナイトゲームが寒いので、その分、デーゲームが他球団と比べて多いのが特徴です。ナイトゲームの翌日にデーゲームとなる日程が続くと、チームは翌日のデーゲームで主力を休ませ、前日のDHだった選手を守備につかせることが多いのですが、主力が故障することを危惧するアスレチックスは、松井選手をその枠には当てはめないんじゃないでしょうか。ずっとDH1本に絞ってもらったほうが安心だと考えているでしょう。

 ともあれ、松井選手の2011年がどのようなシーズンになるのか、今からいろいろな想像が膨らみます。イチロー選手のいるシアトル・マリナーズとも19試合戦いますし、古巣ロサンゼルス・エンゼルスとの対戦も見どころです。面白いことに、来年4月1日のアスレチックスの開幕戦は、ホームでマリナーズ戦です。そして9月のシーズン最終戦も、今度はアウェーでマリナーズと戦います。言い換えれば、メジャーの日程作成者が「ア・リーグ西地区は、王者テキサス・レンジャーズとエンゼルスが優勝争いをする」と考えたともスケジュールから見てとれます。しかし、我々にとってはまるで、日本人が盛り上がるためのシナリオができていたかのようです。

 オークランドという土地は、日本人からすると馴染みが薄いかもしれませんが、アメリカ本土の玄関口ともいわれるサンフランシスコ国際空港から非常に近いんです。空港から”BART(バート)”という地下鉄に乗ると、簡単に対岸のオークランドに行けます。ロサンゼルスから約64キロも離れ、クルマがないと不便なアナハイムに本拠地を置くエンゼルス時代と比べても、格段に海外旅行ツアーにも組み込みやすい。アスレチックスに入団したことで日本人観光客も増え、ひょっとしたら、スタンドはアメリカ人よりも日本人のほうが多いという現象が起きるかもしれません。

 そんなスタジアムで松井選手が常時出場し、大活躍できれば、本当に”アスレチックスの救世主”となるかもしれません。
web Sportiva 2010/12/17
松井秀喜は低迷するベイエリアの救世主となれるか!?
福島良一が語る「ゴジラを獲ったアスレチックスのチーム事情(2)」
 もちろん、松井秀喜選手を獲得したオークランド・アスレチックスには、パワーヒッターとしての活躍だけでなく、日本人スター選手に低迷する観客動員数を増やしてほしいという狙いもあります。オーナーのルー・ウォルフも「松井にはグラウンド以外の価値もあるので、入団すれば収益もあがる」と言っています。

 2010年、アスレチックスの観客動員数は、メジャー30球団中29位。年間入場者は141万8391人で、1試合平均は1万7511人。一方、サンフランシスコ湾を挟んだ対岸のジャイアンツは、56年ぶりのワールドシリーズ制覇を果たしたことでさらに野球熱が高まっており、2000年に新スタジアムのAT&Tパークを造ってからは、毎年のように300万人の大台を突破しています。つまり、観客動員数で倍以上の差をつけられているのです。

 サンフランスシスコとオークランドは別の都市ですが、ニューヨークのヤンキースとメッツ、シカゴのカブスとホワイトソックスと同じように、ジャイアンツとアスレチックスは強力なライバル関係にあります。事実、ふたつのスタジアムは約17キロしか離れておらず、これほど至近距離にあるチームは他にありません。

 サンフランシスコ湾周辺のベイエリアというのは、気象条件がよくなく、昔から観客動員数が低迷している地域でした。両チームとも本拠地移転の噂が絶えなかったのですが、ジャイアンツはバリー・ボンズの人気もあって収益が増加。一方、アスレチックスは近隣への移転の話もあったが頓挫してしまうなど、その差は広がるばかり。アスレチックスは、最大のライバルに少しでも人気・実力で追いつくために必死なんです。ずっと人気面でジャイアンツに負けていたアスレチックスファンにとって、松井選手は救世主になりうる存在だと、その期待は非常に高いと思います。

 別名”マスターシュ・ギャング”と呼ばれ、選手全員が口ひげをたくわえた荒くれの集まりながら無類の強さを発揮し、1972年から1974年にワールドシリーズ3連覇を果たしたアスレチックスの一番の黄金時代ですら、観客は年間で100万人に届くか届かないかという不人気ぶりでした。日本でも人気が高く、松井選手も昔ファンだったと語っていたホセ・カンセコとマーク・マグワイアの”バッシュ・ブラザーズ”時代(1980年代後半~1990年代初め)のアスレチックスでも、初めて観客動員数が年間200万人を越えたほどでした。

 僕が1973年に初渡米したとき、初めて見たメジャーの試合がオークランドでのアスレチックス戦でした。僕にとっては思い出のある特別なチームなんですが、たしかに人気はありませんでした。当時、日本で形容されていたのは『阪急ブレーブスみたいだ』と。1975年から1977年にかけて日本シリーズ3連覇を果たしているにもかかわらず、西宮球場はガラガラで……。その状況が非常に似ていたのです。

 あれから37年――。人気面での低迷はいまだ変わっていません。ぜひとも松井選手に期待したいところですが、アスレチックスの歴史で気になる点がひとつあります。それは1973年にア・リーグではDH制を採用したのですが、それ以来『アスレチックスのDH』というポジションは、当時も今も、”大スター選手が現役最後にプレイしている”という歴史があるのです。

 古くはDH制の導入間もないころ、”ミスター・カブス”ことアーニー・バンクスに次ぐシカゴの大スターだったビリー・ウィリアムズ。彼は1975年にアスレチックスに移籍し、DHとして2年プレイした後に引退しました。そして”ミスター・オクトーバー”ことレジー・ジャクソンも、ニューヨーク・ヤンキースからカリフォルニア(現ロサンゼルス)・エンゼルスという松井選手が辿っている同じルートで古巣アスレチックスのDHとなり、彼も1年間プレイしてから引退しました。最近では、通算521本塁打を誇ったシカゴ・ホワイトソックスの”ビッグハート”ことフランク・トーマスも、そして1990年代後半にドジャーズで野茂英雄投手とバッテリーを組んだマイク・ピアザも、最後はアスレチックスのDHとして過ごしました。松井選手には、絶対に、この負のジンクスを吹き飛ばしてほしいと思います。
ブログ報知 もうひとつのMLBスクラップ メジャー担当・楢崎記者のブログ 2010/12/17
譲れなかったアスレチックス・松井の3つのプライド
 12月14日。松井選手のメジャー3球団目のチームが決まりました。オークランド・アスレチックス。どんよりとした曇り空でしたが、松井選手は晴れやかな表情で、会見場に現れました。

 来季の所属先がどこか。それを突き止めるために頭の中でいろいろと整理をし、取材をしました。昨年のヤンキースからエンゼルスに移った時の背景もいろいろ、思い返しました。エンゼルスが松井選手をどう考えているのか。取材するためにエンゼル・スタジアム内の球団事務所からGMが出てくるのを待ちました。松井選手の考えも聞かなくてはならないため、イベントが行われたニューヨークや南カリフォルニアを何度も往復し、追いかけました。代理人は? 他球団のGMは? スカウトは? 一体、誰がどう考えているのか。いろんな人の意見、考えを集めることが何よりも重要でした。

 新聞報道で、いろいろなチーム名が出てきました。スポーツ報知でもいくつかの名前を出し、読者の皆様を混乱させてしまったことでしょう。すいません。11月中旬のGMミーティングではホワイトソックス、12月上旬のウインターミーティングではオリオールズなどが獲得へ興味を持っていたのがわかりました。しかし、その当時に興味があっても最終的に獲得に動きませんでした。松井選手に行くまでに、それらの球団は左の強打者の獲得に成功したからです。

 アスレチックスは、一貫として、松井選手へラブコールを送っていました。取材を進める中でア軍が有力という情報に行き着きました。ですが、しっくりこない点があったのです。

 ウインターミーティングで、代理人のテレム氏が松井選手は所属先に対し、3つのこだわりを持っていると明かしました。①レギュラーとしてプレーする。②自分(松井)を好意的にサポートしてくれるところ。③優勝するチャンスがあるところ。この3つです。

 私は③の条件がア軍には当てはまらないのでは?と思っていました。同地区のエンゼルスが低迷したこともあり、ア軍は81勝81敗で地区2位でした。攻撃面に問題があり、30球団中28位の本塁打数など得点力不足。破壊力もないため、優勝を狙えるチームとは思えなかったのです。

 しかし、その謎は松井選手が会見で解明してくれました。「先発からクローザーまで素晴らしい投手陣がいるのは最大の武器。あとはいかに点を取るか。僕自身も中心なればチャンスはある」。防御率はリーグ1位。クォリティースタート(QS・・先発投手が6回3失点以内)は30球団トップと投手陣は安定している。中軸に得点力のある選手が入れば攻撃に厚みが増すと分析していた。つまり、『松井が加入すれば、アスレチックスだって、優勝できる』というのがテレム氏の考えだったのです。

 地区優勝したレンジャーズはエースのリーが移籍。ゲレロもFAになっています。エンゼルスはレイズをFAとなったクロフォード外野手を逃し、課題の攻撃陣の補強が進んでいません。マリナーズはDHにカストをとったくらいで補強をあまりしていません。しかし、ア軍は松井、デヘイスス、ウィリンハム、ハーデン・・・と着実に戦力補強し続けています。ア軍は優勝を狙えるチームに変貌を遂げている最中でした。

 今回の取材活動は複数の球団や、FA市場に残る外野手、DH、左打者の動向で大きく変わっていったため、まるでパズルのようでした。テレム氏が掲げた松井選手の3つのこだわり。”自分が入れば優勝できる…”あてはまらなかった最後のピースは松井選手自身が持っていました。
web Sportiva 2010/12/16
松井秀喜が西地区を選んだ最大のメリット
福島良一が語る「ゴジラを獲ったアスレチックスのチーム事情(1)」
 現地時間12月14日、ついに『オークランド・アスレチックスの松井秀喜』が誕生しました。契約内容は年俸425万ドル(約3億4000万円)の1年契約。アスレチックスは楽天・岩隈久志投手との交渉決裂で、オフシーズンなにかと注目を集めましたが、松井選手を獲得した背景にもさまざまな事情があります。まずはアスレチックスのチーム状況から説明したいと思います。

 2010年のアスレチックスは、前年の西地区最下位から2位へと躍進し、勝率も81勝81敗の5割まで引き上げることに成功しましたが、それはすべてア・リーグ1位の防御率を誇る20代の若手ピッチャーたちのおかげでした。一方、バッターのデータを見てみると、2009年にリーグ最低のチーム本塁打数135本、リーグ唯一4割未満のチーム長打率.397だったのが、2010年にはさらに減って、チーム本塁打数109本、長打率.378と下降の一途をたどっています。つまり、アスレチックスにとって今オフの最優先課題は、充実した投手陣のさらなる補強ではなく、”パワーヒッターを獲ること”だったのです。

 当初アスレチックスは、メジャーきっての大砲アダム・ダン(前ワシントン・ナショナルズ)を第一候補として狙っていましたが、シカゴ・ホワイトソックスに奪われました。次にニューヨーク・ヤンキースをFAになったスイッチヒッターのランス・バークマンに切り替えたのですが、今度はセントルイス・カージナルスに奪われてしまう結果に。アスレチックスというチームは資金力に乏しいので、他球団との争奪戦で負けてしまうのです。そういう背景もあって次のターゲットとして、比較的安い年俸で、かつ実績もあり、いまだパワー健在の松井選手に白羽の矢を立てたというわけです。

 また、アスレチックスのチームとしての特徴も、松井選手獲得に至った大きな要因です。卓越した球団運営でメジャー屈指の名GMのひとりと言われているビリー・ビーンは、バッターの『出塁率』と『選球眼の良さ』を最重要と考えるGMです。たとえば2007年から4年間、アスレチックスで主にDHを務めたジャック・カストの成績をみれば明らか。彼の4年間のアスレチックスでの通算打率は.245なんですが、出塁率は.378と非常に高く、その差は1割以上。ア・リーグで最も多い4年間で377個もの四球を選んだ選手でした。松井選手も通算打率は.290ですが、出塁率は.369をマーク。パワーヒッターでありながら選球眼も良いというのが、松井選手のメジャーでの評価です。しかも松井選手は三振も少ない。ビーンGMにとって松井選手は、アスレチックスの特性にピッタリの選手なのです。

 それともうひとつ。2010年のアスレチックスがこれほど打撃成績が悪かった理由として、主力選手の相次ぐケガが挙げられます。今年は球団ワースト記録にあと2つ迫る、述べ23人もの選手が故障者リストに入りました。さらにアスレチックスは資金力がなく選手層も薄いため、主力選手がケガをすると代役がいない。それが決定的に攻撃力低下へとつながった要因です。

 2011年のアスレチックスのテーマは、攻撃力のアップと、主力がケガをしないこと。今年までDHだったカストが112試合しか出場していないことに比べ、松井選手は今年145試合出場し、2年つづけて140試合以上出ています。ひざのケガを抱えながらも故障者リストに入らずフルシーズン戦っているところが、松井選手の評価を挙げている点とも言えるでしょう。

 また、松井選手にとっても、アスレチックス入団にはメリットがあります。個人的にはニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスといった実力・人気ともに高いア・リーグ東地区でプレイしてほしい願いもあったのですが、いかんせん松井選手は左ピッチャーに対して成績が芳しくありません。ヤンキースはCC・サバシア、レッドソックスはジョン・レスター、レイズはデビッド・プライスと、東地区上位はどのチームも強力な左のエースを擁しています。

 一方、西地区は、左投手の充実しているチームは入団したアスレチックスだけ。シアトル・マリナーズの絶対的エースであるフェリックス・ヘルナンデスは右投手ですし、テキサス・レンジャーズからFA宣言していたクリフ・リーもフィラデルフィア・フィリーズに戻りました。

 西地区は、東地区に比べるとエース級の左ピッチャーが圧倒的に少ないんです。しかもアスレチックスは選手層が薄いので、ロサンゼルス・エンゼルス時代のように、相手が左ピッチャーだからといってスタメンから外されるということもないはずです。松井選手が願っていた常時出場も満たしてくれるでしょう。我々日本人ファンが望んでいる四番で常に出場できるアスレチックスは、松井選手にとってベストの選択ではないでしょうか。
MATSUI55.TV 2010/12/15
来季はアスレチックスで
こんにちは、松井秀喜です。
本日は松井55TVのメンバーのみなさんに、ご報告をすることがあります。

このオフはエンゼルスからフリーエージェントとなって、
ファンのみなさんを少しやきもきさせたかもしれませんでしたが、
このたび来季はオークランド・アスレチックスでプレーすることを決め、本日、正式に契約を交わしました。

今回の契約を結ぶにあたって、僕が望んだことは基本的にはただ一つでした。
それは優勝を目指せるチームでプレーすること。
そこでチームの力になることです。
そういう意味ではアスレチックスはうってつけのチームだと思います。
僕がメジャーにきてからヤンキース、エンゼルスと同じリーグのライバルとして戦い、
特に西地区のチームとして非常に手ごわい相手でした。
若くて才能ある選手がいっぱいいて、そういう選手と一緒に、
来季は世界一を目指してチームを引っ張っていけるようなプレーをしたいと思っています。

実はアスレチックスは、僕にとっては不思議な因縁のあるチームなんです。
ちょうど中学から高校時代の1980年代後半にアスレチックスはホセ・カンセコ、
マーク・マグワイアというホームランバッターを擁してア・リーグを3連覇、
89年にはワールドチャンピオンになっています。
そのときにし合いを見て一気にファンとなってしまった僕は、
父にねだってアスレチックスの帽子を買ってもらいました。
初めて手にしたチームの帽子が、グリーンを基調にしたアスレチックスの帽子だったわけです。

2011年はそんな因縁のあるチームの帽子をかぶり、ユニフォームを着て、
皆さんに全力プレーをお見せすることを約束します。
本拠地のオークランドはサンフランシスコからベイブリッジを渡ればあっという間のところにあります。
ぜひ、機会があったら本拠地のオークランド・コロシアムでプレーをする僕を見に来て下さい。