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Columnコラム

スポーツナビ スーザン・スラッサー 2011/02/25
松井秀喜とレディー・ガガの接点?
番記者スーザンのアスレチックス通信
松井加入でチームは華やかに

 アスレチックスは21日(現地時間)に野手組がキャンプインをした。昨年5月9日のレイズ戦で完全試合を達成したダラス・ブレーデンは、その日を「今日か、明日か」と、首を長くして待っていた。
 よほど時間があったのだろう。おそらく日本でも報道されたと思うが、例の“ゴジラの人形”を用意したのは、ブレーデンである。彼は人形に松井秀喜のユニホームを着せ、アスレチックスの帽子をかぶせた。足元――白いスニーカーは、彼が2008年に日本へ行ったときに買ったものらしい。
 ブレーデンは、興奮気味に言った。
「うちのチームには、本当の意味での“スター”がずっといなかったからね。そしたら、チームは国際的なスター選手を連れて来た。まるで、マツイは、レディー・ガガだ」

 今や、音楽界だけでなく、ファッション界でもカリスマ性を誇る彼女との対比が適当かどうかは分からないが、野球界において松井は、確かにレディー・ガガと似た存在感を持つ。
 先日のグラミー賞でもレディー・ガガは、ステージで圧倒的なパフォーマンスを披露したが、彼女が卵から登場した瞬間、会場は騒然となった。松井がキャンプ地に到着したときもまた、暗い部屋に一斉に明かりがともったような華やいだ雰囲気になっている。
 そんな賑やかさは、06年にフランク・トーマスが移籍してきたとき、また09年にジェイソン・ジアンビがアスレチックスに復帰したときもなく、1人の選手がこれほどまでに場の空気を変えるというのは、アスレチックスのキャンプを取材して14年目で初めてのことかもしれない。

メディアも選手も大きな期待を寄せる

 やはり、松井を取材する40人は下らないと思われる日本人メディアの存在も大きい。これまで、アスレチックスのキャンプといえば、たった3人の記者で取材をしてきたのである。
 多くのメディアと一緒に取材をしていると、何か大きなイベントを取材している雰囲気に包まれ、選手もまた、それに刺激され、集中力が増しているように見える。それは、松井がもたらしたポジティブなインパクトの1つにほかならない。

 彼は、オークランドという街にも似たような影響をもたらすだろう。アスレチックスというチームは、人気面で、常に対岸にあるサンフランシスコ・ジャイアンツに劣ってきた。しかも昨年は、ジャイアンツがワールドシリーズを制している。これでますます、アスレチックスの影が薄くなると思われていたが、松井が歯止めをかけるかもしれない。

 彼がもたらすものはそれだけにとどまらず、戦力面での期待が何より大きい。中軸を打てて、きっちり打点を挙げられる選手――アスレチックスはずっとそんな選手を探してきた。松井の実績はそれを補う。
 今、メディアの中には、アメリカン・リーグ西地区の優勝候補にアスレチックスを挙げる人もいる。もともと、先発投手陣がしっかりしているだけに、問題は打線だったが、松井のほかに、デビッド・デへスス、ジョシュ・ウィリングハムも加わり、解決の糸口が見えた、との見方が背景にはあるようだ。そして、これで十分に戦える、との見方も選手に生まれており、そんな心理的作用も小さくない。

 さて、2日ほど、松井のワークアウトを見た。その限りでは、素晴らしいコンディションといえる。ダッシュも行うなど、懸念されたひざの状態を気にする素振りもなかった。
 状態を問えば、「So far, so good」(今のところ順調)と英語で答えた松井。ただそれは謙そんで、実際にはかなりいい状態に映る。監督やチーム、チームメートも同じように感じたはずである。
NHKスポーツオンライン 高橋洋一郎 2011/02/21
ダラス
アリゾナ州フェニックス市営球場。
1964年につくられた古い球場だが、その後プレス席などを改装、古めかしいながらもモダンな構造を併せ持つ、とても渋い、味のある球場だ。

オークランド・アスレティックスがここでスプリングトレーニングを行うのは今年でちょうど30年目、そのアスレティックスに移籍した松井秀喜選手のメジャー9年目、2011年のシーズンもここで始まる。

正式なキャンプインを翌日に控えた現地時間20日、シンプルで簡素ながらこの手の球場としては非常に広いホームチームのロッカールーム、その片隅に妙な人形が鎮座、というか直立していた。
シャワー室の入り口脇にあるため、選手たちはその人形をいちべつし、ほほえみながら奥へと消えて行く。

緑色のゴジラだ。
背番号55のユニフォームをまとい、スパイク、リストバンドをはめ、下着までしっかりとつけられている。

「俺たちなりの歓迎のしるしさ。マツイが来たら怒るかなあ、びっくりするかなあ」
いたずらの主はダラス・ブレイデン投手。
昨シーズンの先発投手防御率が3.47、とメジャートップを誇るアスレティックスのローテを担う一人、5月9日にはタンパベイ・レイズを相手にメジャー史上19度目となる完全試合を成し遂げたサウスポーだ。

実はこの前日、このブレイデン投手とブレスロウ投手、そしてベイリー投手、このチームきっての先発、中継ぎ、そして抑えの3人がゲラゲラ笑いながらこの人形をドレスアップしていた。
やや度を過ぎて、ここで書けないような格好にもなったが、何とか普通のユニフォーム姿に落ち着いたようだ。

「彼はチャンピオンの血統を持った選手だ。勝つことがどういうことか、そのために何をしなくてはいけないかを知っている。彼が入ることでラインアップ全体がよくなるはずだ」

昨年は得点力不足に泣き、シーズンのチームの総得点は663点とアメリカン・リーグ14チーム中12位、ホームランの数は109本とそこちらも同13位だった。
投手がいくらがんばっても味方が打ってくれない、といった試合を何度も経験したブレイデン投手としては、松井選手のような大砲の加入に大きな期待を寄せるのは当然のことだ。

「彼がラインアップに加わることで、昨年は3対1で負けていた試合も、4対3で勝てるようになるはずだ。今年のアリーグ西部地区はどのチームが優勝してもおかしくない、もちろん我々にも大きなチャンスはあるんだ」
と、まあ“チームがすべて”的なことをニヤニヤしながら話した後は、
「しかし、インターナショナルスーパスターがうちらにチームに来るなんてすごいことだよ」

オークランド・アスレティックスは松井選手本人にとって、少年時代のあこがれのチーム、1988年から90年まで3年連続でワールドシリーズに出場(うち、優勝は89年のみ)、マーク・マグワイア選手やホセ・カンセコ選手、リッキー・ヘンダーソン選手といったスター選手を抱え華々しい時もあった。

しかし、90年代にはいると低迷が続く。
その後はいい成績を残してはいるが、チームのカラーとしてはとても地味といった印象は否めない。
2006年のプレーオフ出場を最後に、3年連続負け越しのシーズンが続くも、昨年は81勝81敗の5割、アメリカン・リーグ西部地区2位でシーズンを終えた。
先発ローテの平均年齢が25歳以下ということを考えると、まだまだ若いこのチームの先行きは明るい。
しかし、やはりこのチーム、何となく地味だ。

そんなチームにあって、ブレイデン投手は唯一の悪ガキ、チアリーダー的な存在なのだ。

一緒になってゴジラの人形にユニフォームを着せていたベイリー投手も、
「こんな事を考えつくのは、うちではダラスしかいないよ」。

また、ゲレン監督も
「うちのチームは確かにみんな静かだ。その中でブレイデンだけは一風変わった選手かもしれないね」。

根っからの陽気者、みんなでわいわいとするのが大好き、やって来たのは松井選手、しかもチームにはたくさんの日本人メディアが取材に訪れるようになった、というわけである。
どうやらそれがうれしいらしい。

「これから何十人もの記者がうちのチームの取材をしてくれるんだろ。楽しみだよ。たくさんの記者に囲まれるなんてさ。たとえ僕に話しかけてくれないとしても、彼らを見ているだけでエキサイティングだよ」

今シーズンの松井選手はこの『ダラスとその仲間達』とともに、2年ぶりとなる頂点を目指すことになる。
草野仁の日々是精仁 2011/02/07
新たな1ページに期待します!
キャンプ入りを控えて間もなくアメリカにわたる予定の松井秀喜選手と久々に食事をする機会がありました。

待ち合わせ時間に遅れることもなくやって来た松井選手はとても爽やかで充実した表情をしていて、ああやはり、今年プレーをするオークランド・アスレチックスと契約して心から良かったと感じているようです。

というのも昨年のエンゼルスはマイク・ソーシア監督が強い権限を持っているチームだそうですが、松井ファンの私から見てそのソーシア監督の松井選手起用法には強い疑問を感じざるを得なかったからです。

前の年のワールドシリーズMVPだった松井選手に強い期待感を持ってソーシアは彼を迎えたのですが、監督自身の期待以上の活躍ができなかったせいでしょうか、途中からその起用法に一貫性が見られなくなりました。素晴らしい快打を放った翌日の試合でまさかのベンチスタートとなったり、左投手には強いのにも拘わらず相手チーム左投手が先発の場合はスタメンから外したりなど非常に冷たい采配が続きました。

松井選手は例えそうなったとしても決して不平不満を漏らすことは無く、「それは起用してもらえない自分に問題があるからだ」と答え、大人の対応を取り続けましたがでも想像するところ、フラストレーションは相当なものだったのではないかと思うのです。

今年所属するアスレチックスは契約に当たり、GM 自らが松井選手の打力に期待し、環境整備はきちんとやると約束してくれているので、昨年とは全く違う雰囲気でプレーできそうです。

そして、松井選手自身も今年は大リ―グ生活の中でまた新たな1ページを書き加えなければならない年と位置付けているということなので、大活躍が間違いなく期待できるという強い確信を持ちました。来週にはキャンプ地アリゾナに旅立つとのこと。私もシーズン中の激励訪問を約束して別れました。本当にいつも爽やかな松井選手でした。