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Columnコラム

杉浦大介の「スポーツ見聞録 in NY」 2011/06/27
過去に感謝し、現在を祝福する ~ヤンキース”Old Timers' Day”
 今日は恒例の「Old Timers' Day」。
 ヤンキースタジアムに歴代のグレートプレーヤーたちが集結し、セレモニーとゲームを行なっております。

 注目は初参加のバーニー・ウィリアムスと、そして2007年オフに退団以来初めてピンストライプのユニフォームに袖を通したジョー・トーレ氏。この2人とルー・ピネラは公式会見の場にも登場し、軽妙な受け答えで記者たちを喜ばせてくれました。

 バーニーはちょっと肥えましたが、相変わらずクールでしたね。
 レギュラーシーズンの出場は2006年が最後ですが、それでも「正式引退はしない」と。「現実的にはもう(現役復帰は)無理だろうけど、可能性を残しておいた方が楽しいだろ?」と爽やかに語っておりました

 トーレは,,,,やっぱり話上手ですね。

 就任当初は堅苦しさが目立ったジラルディ監督も、最近は記者とのやりとりはめっきりスムーズになりました。ただ今朝のトーリの巧みな話術を久々に聴くと、やっぱり違うな、と(ま、年の功もあるので2人を比べるのはアンフェアですが)。

 そう、トーリは苦境時でも笑うことが出来る希有な度量を備えた人でした。松井秀喜在籍時代のことも思い出し、何だか懐かしい気分に。。。

 オールドタイマーたちの試合自体は、例年みるべきものは特にないもの。かなりご高齢の方も出て来るため、おっさんの草野球とそんなに変わらないレベルだったりします。

 ただ今年のBombers(BombersとClippersに分かれます)は、2〜7番までバーニー、ポール・オニール、ティノ・マルチネス、セシル・フィルダー、ダリル・ストロベリー、ルー・ピネラと続く強力打線!

 そして実際にバーニーはデビッド・ウェルズから左中間に痛烈な二塁打を放ち、さらにティノはデビッド・コーンからライトスタンドに豪快なホームラン!!いやはや、オールドタイマーズ・ゲームでサク越えを観たのは初めてでした。

 しかしストロベリーもライトのウォーニングトラックあたりまで軽々と飛球を持って行ってましたが、やっぱりこのスタジアムの右翼って,,,,,(笑)

 過去に感謝し、現在を祝福する。
 「Old Timers' Day」は素晴らしいイベントだと思います。ヤンキースファンでない自分も、過去のスターの登場とともに数々の名場面を思い出し、つい感慨を抱いてしまいます。

 ヤンキースほど盛大なものは難しくとも(特に歴史の浅いフランチャイズには)、各チームとも何らかの形でこういった日を設けて欲しいですね。

 そしていつか松井秀喜選手も,,,,,ヤンキースのOld Timers' Gameに?
 引退して数年経ったら、間違いなく声はかかるでしょう。ワールドシリーズMVPの功績は燦然と輝くだけに、特に1年目はかなり盛大なオベーションを浴びせられるのではないでしょうか。

 そう改めて考えると、彼のやり遂げたことはやっぱり凄い。日本人うんぬんというレベルを越えて、ニューヨーカーに成功者として記憶されてますもんね。
スポーツナビ スーザン・スラッサー 2011/06/22
Hideki Matsui is back.
番記者スーザンのアスレチックス通信
松井の起用を真っ先に明言した監督代行

 監督交代を受け、チームが生き生きとし始めた。重苦しかったクラブハウスの雰囲気が変わった。恩恵という言葉を使うなら、アスレチックスの指名打者ほどそれを受けた選手はいないだろう。

 かつて、マリナーズ、ダイヤモンドバックスで指揮をとったボブ・メルビンは、監督代行に就任すると、「彼がいなければ、われわれは勝てない」と、スタメンを外れることの多かった松井秀喜のレギュラー起用を真っ先に明言したのである。

 メルビン監督代行が引き継いだ6月9日(現地時間、以下同)の試合前の時点で、松井の打率は2割9厘、3本塁打、20打点。

 意外、という反応がなかったわけではないが、メルビン監督代行は、就任要請を受諾した段階で松井中心の打線をイメージしたそうである。
 指揮を執って3日目には松井を3番で起用。その後は、3番もしくは4番という打順だが、これまでのように相手の先発投手が左だからといって、彼が先発を外されることはなくなった。

松井の好調とともにチームも連勝

 メルビン監督代行は、チームの中心打者がそういう形でスタメンを外れることを好まず、中軸を任せる限りは、その選手を信用するというのがスタンスのようだ。

 白羽の矢を立てられた松井は、その期待、信用に応え、メルビン監督代行が初采配(さいはい)を振るった6月9日は、いきなり本塁打を含む2安打2打点の活躍。その後も休みなく出場を続けている松井は、監督が代わってからの10試合で、30打数9安打(3割)、3本塁打、9打点と結果を残している。
「彼がいなければ勝てない」という言葉もやがて証明された。チームは目下、5連勝中(6月20日現在)。松井の状態が上向いたことで、チーム状態もつられて上向いた。

 チーム全体にメルビン監督代行の野球が一気に浸透したのは、偶然ではないだろう。
 メルビン監督代行は、起用法が定まらず、一部では去就問題さえ取り沙汰されていた松井に、まず明確な起用方針を伝えた。チームメートらは、そのベテランを尊重する姿勢を評価。また、監督代行は、選手一人一人に役割を説き、目的をクリアにさせたのである。

「もちろん人間、誰でも期待されればうれしい」と松井。それは、他の選手も同じで、それぞれが今、意気に感じている。

DH制のない交流戦でも積極的に起用

 21日からは交流戦。敵地でメッツ、フィリーズとの6連戦が控える。
 指名打者が使えないため、前監督がまだ指揮を執っていたのなら、松井の出場機会は限られたはず。

 一方でメルビン監督代行は当初、不慣れな右翼を守らせてでも、3試合に1度は松井を先発出場させようとしていた。
 正左翼手のジョシュ・ウィリンハムが左アキレス腱を痛めたことから、松井はおそらく、守り慣れた左翼の守備につくことになるが、であるならば、守備の負担が多少は軽減されるとの読みから、メルビン監督代行が松井に頼る機会はもう少し増えるのかもしれない。
web Sportiva 福島良一 MLBコアサイド 2011/06/22
メルビン監督代行が松井秀喜を起用する理由
ボブ・メルビン(オークランド・アスレチックス)

 長い不振から抜け出せなかったボブ・ゲレン監督を解任し、ボブ・メルビンを監督代行として迎えたオークランド・アスレチックス。この監督交代により、松井秀喜選手の環境はガラッと変わりました。そこで今回は、メルビン監督代行にスポットを当てたいと思います。 メルビンは、カリフォルニア州パロアルトというサンフランシスコのベイエリア出身で、幼少時代からアスレチックスとサンフランシスコ・ジャイアンツの大ファンでした。地元ベイエリアにある高校からカリフォルニア大学バークレー校へと進学し、1981年ドラフト1巡目でデトロイト・タイガースに捕手として入団。1985年にメジャーデビューを果たします。しかし常に控えのポジションから抜け出せず、メジャー10年間で7つもの球団を経験し、1994年に33歳で現役を引退。そして1996年、ミルウォーキー・ブルワーズのスカウトとして新たな人生を歩みます。

 メルビンは、カリフォルニア州パロアルトというサンフランシスコのベイエリア出身で、幼少時代からアスレチックスとサンフランシスコ・ジャイアンツの大ファンでした。地元ベイエリアにある高校からカリフォルニア大学バークレー校へと進学し、1981年ドラフト1巡目でデトロイト・タイガースに捕手として入団。1985年にメジャーデビューを果たします。しかし常に控えのポジションから抜け出せず、メジャー10年間で7つもの球団を経験し、1994年に 33歳で現役を引退。そして1996年、ミルウォーキー・ブルワーズのスカウトとして新たな人生を歩みます。

 その後、メルビンはブルワーズで巡回コーチやGM補佐を経て、1999年にベンチコーチに抜擢されます。そのときの監督がフィル・ガーナーという人物。メルビンの監督論に大きな影響を与えた人です。2000年、ブルワーズを解雇されたガーナーがタイガースの監督に就任すると、メルビンも彼に同行してベンチコーチを務めました。そして2001年にボブ・ブレンリー監督の率いるアリゾナ・ダイヤモンドバックスのベンチコーチとして引き抜かれると、そこで世界一を経験。史上最速となる球団創立4年目での世界一に貢献します。すると、その功績が認められ2003年、メルビンはついにメジャーの監督に招聘されます。それが、イチロー選手の所属するシアトル・マリナーズです。

 前任者は、1995年にマリナーズを初の地区優勝に導き、2001年にメジャータイ記録となるシーズン116勝を樹立した闘将ルー・ピネラ。マイナーリーグでも監督経験がなく、41歳で初めて監督に就任したメルビンにとって、”ピネラの後釜”というプレッシャーは凄まじかったと思います。しかしその年、93勝69敗で西地区2位。見事そのプレッシャーを跳ねのけたのです。当時のメルビンはほとんどスタメンを変えず、不動のオーダーで戦うスタイルでした。さらにイチロー選手を3番に起用したことは、日本でも話題になりました。2004年は成績を落として解任されるのですが、翌2005年に古巣ダイヤモンドバックスの監督に就任。5年間チームを率い、2007年には地区優勝(90勝72敗)を成し遂げ、ナ・リーグ最優秀監督に選ばれます。

 マリナーズ時代は経験を生かしきれませんでしたが、ダイヤモンドバックスでのメルビンは、学んできた監督理論を全面に押し出しました。そのひとつが、前述したガーナー監督の影響を多大に受けた”日替わり打線”です。地区優勝した2007年は、162試合のうち、なんと146パターンものラインナップを組んで戦ったのです。というのも、ダイヤモンドバックスの打線は非常に弱く、2007年のチーム打率はわずか.250のナ・リーグ最下位。得点圏打率もメジャー最低で、総得点数が総失点を下回っていました。それでもポストシーズンに進出したのは、史上6チーム目という出来事。メルビンが日々、いかに苦労したかがうかがえます。

 もうひとつメルビンが大事にしたのが、ベテラン選手の存在です。「若手主体のチームには、優勝経験のあるベテランのリーダーシップが必要」と語り、当時のダイヤモンドバックスでは、1997~1999年タイガース時代に3年連続30本塁打を記録し、2004年ニューヨーク・ヤンキースの地区優勝に貢献したトニー・クラークを重宝し、見事復活させました。まるで、今のアスレチックスの状況とかぶります。

 アスレチックスの監督代行に就任後、10試合を戦って6勝4敗(6月20日現在)で5連勝と上り調子。メルビン体制になって一番ビックリしたのは、彼らしい打順の変更で、チーム最年長37歳のベテラン松井選手を3番に起用したことです。ご存知のようにアメリカでは”3番最強説”があるので、それまでベンチを温めていた松井選手を3番に据えたということは、非常に松井選手を信頼している証でしょう。かつてのトニー・クラークのように、松井選手のようなベテランを好んでいるのは間違いありません。

 また、メルビンは名監督の条件ともいうべき”コミュニケーション能力”が非常に長けている人物です。現役時代はキャッチャーで、長年ベンチコーチも務めた経験が生きているのでしょう。試合中でもダグアウトで冗談を言ったりしているらしく、選手からの評判もいい。就任直後も松井選手を監督室に呼んで会談したそうですし、例年夏場に強いアスレチックスは、これから非常に楽しみな存在。松井選手は、突然舞い降りたこの幸運を逃さず、ぜひとももう一度、復活してもらいたいものです。
草野仁の日々是精仁 2011/06/17
嬉しい松井秀喜選手の復調ぶり
アスレチックスの松井秀喜選手の今シーズンの活躍を楽しみにしていましたが、出だしは勢いに乗れないまま5月も終え6月に入りました。ここまで目覚ましい結果が出てこなかったので「もう松井は衰えてきた」「スウィングスピードが落ちている」「このままではマイナーリーグに落とされるのでは」など、色々な観測記事が流されました

でもそれは違うと私は思い続けていました、フルに出場していてこの不振であればそのような見方が出て来ても仕方がありませんが、なにせゲレン前監督の松井選手起用法には一貫性がありませんでした。活躍した翌日にベンチスタート、あるいは何試合も連続してスタメン出場無しなど、選手のやる気を削ぐような起用法が目立っていたので、「これは松井選手も内心フラストレーションが溜まっているに違いない、ずっと出続けていて調子を上げて行くタイプの選手である彼には辛すぎる仕打ちだな」と思っていたからです。

そしてチームの連敗が続いたところで突然のゲレン氏解任、新たにメルビン監督就任となって松井選手にとって状況が一変しました。メルビン監督は松井選手の特長を良く知っていて、例え相手が左投手でもスタメンで起用、そして打順も中軸を打たせるという、選手のやる気を刺激する方法をとりました。すると途端に不調だった松井選手が打ち出し既にここ7試合でホームラン3本を放つ活躍を見せています。

彼は監督の起用法に一切文句を言ったりしません、仮に連日ベンチスタートであったとしても、「それは起用されない自分の側に問題があるのです」と言い続けて、決して不平不満を言わない自制心の強い男です。でもそれが却ってゲレン前監督には何でも我慢してしまうタイプの選手と勘違いされたのかも知れません。

メジャーリーグでスタートしたときのヤンキース、ジョー・トーリ監督(当時)がいつも選手とコミュニケ―ションを交わし一人一人の選手を理解しようと努める理想的な監督であったので、松井選手も自ら監督に働きかけようとはしなかったのだと思います。とはいえ、やはり一般的にはトーリ氏のような人は珍しい存在なので、恐らく普通は選手の側からも積極的に言いたいことをきちんと伝える必要があるのでしょう。(今回松井選手理解派のメルビル監督なのでそこまでの必要はなさそうですが。)

松井ファンにとって嬉しいのは22日からの交流戦で3年ぶりにライトの守備に付くことが決まったということです。膝の状態も良く何時でも動けると言っていたので、守備についてそしてバッティングでも思い切りのよさを見せてくれることを期待せずにはいられません。
NHKスポーツオンライン 高橋洋一郎 2011/06/13
熱い夏
ほんの2週間ほど前までは、ゲーム差1.5の中に4チームがひしめく混戦模様を呈していたアメリカン・リーグ西部地区。
それがほんのそれだけの間に、1つのチームが一気に上からの差を広げられ、早くも優勝戦線から脱落しかけている。
松井秀喜選手の所属ずるオークランド アスレティックスである。

現地5月30日、前日までの4連勝で成績を27勝27敗の五分に戻した時には、6月の攻勢が期待されたものの、この日からのホームでのニューヨーク・ヤンキース戦で3連敗。
そのままの勢い?で敵地ボストン、ボルチモア両3連戦でも1つも勝ち星を挙げることなくずるずると9連敗を喫する。

この間、主力選手がけがから復帰した地区首位をいくテキサス・レンジャーズが本来の調子を取り戻し、勝ち星を重ねたため、この連敗がそのまま上とのゲーム差につながってしまった格好だ。

この結果、今季メジャー30球団トップをきる形でシーズン途中での人事、監督解任劇が起こる。
ボブ・ゲレン前監督に関してはこれまでその采配や選手起用に関して、何かとメディアからは批判が出ていたが、この9連敗の前にはそのような批判が選手本人から噴出、地元各紙をにぎわすようにもなっていた。

当時クローザーを務めていたフエンテス投手からは
「(起用法に関して)監督からの話や説明はまったくなし。何を考えているのかわからない」

また以前このチームでプレイしていた選手からも
「彼(ゲレン前監督)はそういう人、信用できない」

当時から監督の進退について、解任があるのでは、それはいつなのかといったうわさはすでに流れ始めていた。
そこにきての9連敗。
予定どおりと言っては言い過ぎではあるが、まったくもって想定内の動きではあった。

ゲレン前監督がそのような空気を察していたのかどうかはわからない。
ただ結果がすべてであるこの世界に長く身を置く者として、「寝耳に水」ということはありえまい。
ボストンでの3連戦中、試合前の会見での、目は落ち着きなくおよぎ、質問する記者に目を合わせることもなく、それまで何度も言ってきた答えを再度繰り返すだけのような対応に、そう勘ぐってしまうだけの根拠はあった。

もちろん前監督にとって、気の毒な要素もたくさんある。
メジャー屈指と言われた先発ローテ5人のうち2人が早くもけがにより離脱。
その代わりの投手までけが。
6月7日には3本柱の1人アンダーソン投手もが故障者リストに入ってしまった。

一方、攻撃陣はシーズン当初からまったく上向いていかない。
チームの1試合当たりの得点は3.60、アリーグ最低の数字だ。
これでは勝てまいとチーム構成の責任者であるビリー・ビーンGMの責任を追及する声も地元メディアの中には聞こえる。

そういった外野からの声を一気に静めるためにも、今回の監督人事はぎりぎりではあるが、タイムリーな時期になされたのではないだろうか。
そしてこの人事が大きく今後の活躍を左右することになりそうな選手が一人。
松井秀喜選手である。

9連敗中先発出場したのはたったの4試合。
しかも古巣ヤンキースとの対戦では相手が右投手であったにもかかわらず2試合連続でスタメン落ち。

「月が変われば運も変わる」

こう出場機会が減ってしまったのでは運も変えようがない。

「チームが勝つために監督が決めたオーダー。しかたがない」
松井選手のコメントは素っ気ない。実際そう言うしかないからだ。

復調するためには試合に出るしかない。
しかし、出ても結果が出ない、結果が出ないことが更に出場機会を奪ってゆく。
現地6月9日の試合終了時点での打率は.209。
このまま落ちるところまで落ち込んでしまうのか、というぎりぎりの段階に足がかかった。
これ以上上位のチームから離され、優勝戦線から脱落すれば、その時点でチームは来年以降を見据えた選手起用に移行する。
そうなれば、残念ながら今の成績の松井選手にはチーム内での居場所はなくなる。
「落ちるところ」というのは事実上の戦力外、を意味する。

試合に出れない。チームに貢献することができない。
チームの敗戦をベンチでもんもんと迎える試合が増え、自らの不振からの脱出の糸口を手探るなか、監督が代わったのである。
ゲレン監督から、メルビン監督(代行)へ。
どちらもファーストメームはボブ、ともに49歳、元捕手。
だから?と言われれば、何も返す言葉はない。たまたまだろう。
そのメルビン監督代行のもと、早くも松井選手にはまだ微風ながら、背中を押すように空気が動き始めている。

監督が代わって初めて、現地6月9日の試合。
スタメン表には、それまで1ヶ月以上左投手相手の試合では先発を外れていた松井選手の名前があった。
その第3打席にこれまた1ヶ月以上ぶりとなる第4号ホームランを放ち、いきなり新監督にプレゼントした。

そのメルビン監督は相手投手が右だろうが左だろうがチームのレギュラーの指名打者は松井選手であることを確認。
また、6月11日、指揮をとり始めて3試合目には、松井選手にとってはヤンキース在籍時の2009年以来、およそ2年ぶりとなる打順3番で起用。
早くも「メルビン流」を全面に出してきた。
松井選手の復調が今後のチームの巻き返しにどうしても必要である、そのためにも試合に出続けなければいけないとの認識からの動きであろう。

この起用に応えるかのように、松井選手はメルビン監督下3試合すべてで打点をあげる。
残念ながらその間チームは1勝2敗、11連敗こそ免れたもののまだ連勝へとは転じていない。
そんなチームを自らのバットで勝利へと導き、少しでも上位のチームとの差を縮めること。
起用法や采配に違いこそあれ、それこそがこれまでのボブさんが松井選手に求めてきたことであり、これからのボブさんが求めるのもまったく同じことである。
しかも、今すぐに。
逆に言えばそれがなされない場合、後半戦に入った時、松井選手が胸にアスレチックスの名の入ったユニフォームを着ているという保証はどこにもない。

熱い夏が待ち遠しい。
NHKスポーツオンライン 石田大輔 2011/06/06
松井秀喜 本来の姿を取り戻せるのか
松井秀喜が松井秀喜でなくなっている。

開幕から60試合を終了し、打率は2割1分3厘、本塁打は3本しかない。
それだけではない。
選球眼が良く、ボールを振らない選手のはずが、選んだ四球はわずかに13個。
その一方で三振の数は32個に増えている。
メジャー通算で四球は496個に対し、三振は615個だから、今季どれほどに四球が少なく、三振が多いかがわかる。

寂しい数宇はこれだけではない。

松井と言えば2塁打や本塁打の長打が売りであるのはご存知の通りだが、通算4割3分7厘の長打率に対し、今季は3割2分2厘しかない。
出塁率に至っては通算3割6分5厘が、今季は2割6分5厘しかない。
すべての面で数字は厳しいものをはじきだしている。

ただ調子が悪いだけなのか、それとも衰えが忍び寄っているのか。
この目で確かめてみようと、6月3日から5日のボストンとの3連戦を取材した。
松井はこの3連戦で12打数1安打。安打はライト前のシングルで長打はなかった。
三振は4個に対し四球はゼロ。5日の試合は今季16度目のスタメン落ち。
今季残してきた数字同様の結果であり、好材料が多いとは言えなかった。

この3連戦、松井の打撃を見ていて感じたのはバットのヘッドが出てこないことだ。
スイングスピードに以前の切れが見られない。
だからであろうか、ボールを呼び込んでから体に巻き付くようにして振り抜く、彼らしい鋭いスイングは少なかった。
ヘッドが出てこない自覚があるからだろうか。
スイングの始動は早くなり、ミートポイントが以前よりもかなり前になっている。
それを象徴するようなシーンがいくつかあった。

3日の試合の5回表、松井は無死2塁のチャンスでセンターへライナー性の打球を放った。
結果はセンターフライ、この3連戦では内容のある打席の部類だったが、ミートポイントが前で強くたたけていないから打球が上がらない。
彼本来のポイントで打てていれば、おそらく打球はセンターの頭上を越えていただろう。

また、4日の試合では7対7で迎えた9回表2死1、3塁で打席に立ったが、空振りの三振に倒れた。
この打席で松井は95マイルと97マイルの外角直球にはバットが出てこず、3塁側へ力ないファールを打った。
そして、空振りが2つあったのだが、この内容が良くない。
いずれも球種はスライダーだったが、そのボールはキャッチャーの手前でワンバウンドするボール球だった。
なのに、バットは止まらない。
球を呼び込めていない、ポイントが前になっている打撃の典型と言えた。

何か寂しいことばかりを書き立てたが、光明がなかったわけではない。
4日の試合の第6打席、松井はライト前へクリーンヒットを放ったが、この時は外よりの90マイルの直球を呼び込んでしっかりとたたくことが出来ていた。
この打撃を安定して発揮することが出来れば、松井秀喜本来の姿を取り戻すことは可能だろう。

オークランド・アスレチックスは6月5日現在、借金6個で地区最下位に沈んでいる。
巻き返しに松井秀喜の打力が必要なことは言うまでもないが、このチームが遅れをとることは夏場以降、選手起用が若手主体に切り替えることに直結する。
時間はない。松井秀喜が衰えたとはまだ思いたくない。
松井自身が危機感を1番持っているのも間違いない。
打棒復活を信じ、松井秀喜らしい打撃を見せてもらいたい。
web Sportiva 2011/06/06
松井秀喜、極秘トレーニングで再生を誓う
 ある日の試合前、アスレチックスのクラブハウスには、まだ松井秀喜の姿はなかった。ダグアウトに続く通路脇の連絡ボードにはすでにスタメン表が貼られており、松井の名前はそこにはない。

 4月後半から相手先発が左腕の場合はスタメンから外れるようになっていたが、その日の先発は右腕。ボブ・ゲレン監督は「今日休ませることはヒデキとは話していない。まだ彼の姿を見ていないから」と言った。しばらくして姿を現した松井は、クラブハウス中央にあるソファーに腰を下ろして雑誌を読みはじめ、長時間そのまま動かなかった。その姿は、落胆する気持ちを鎮めているかのようでもあった。

 松井は打撃の調子が上がらないのと連動するように、5月以降の欠場が増えていた。5月のスタメン落ちは28試合中11度。試合に出ない日は、試合前や試合後に室内ケージで打撃練習に励むことも増えた。

 両リーグ交流戦で「ベイブリッジ・シリーズ」として知られるジャイアンツとのシリーズが敵地で行なわれた時、DH制を取らないということで出番がなかった松井は、ジャイアンツ本拠地AT&Tパークの室内ケージで、ジェラルド・ペリー打撃コーチと多くの時間を費やしていた。そこで行なわれていたのは、右手を腰のあたりに添え、左手一本でバットを振るという練習である。

 左手一本での打撃練習は、同コーチによると「ハンド・アイ・コーディネーション(HEC)を鍛えるもの」だという。HECという概念は日本ではほとんど使われていないが、米球界では頻繁に語られる身体能力のひとつだ。日本では「視力の衰え」という言い方をされるが、米国では「目で知覚したものを腕で反応する能力」として考えられており、もし視力が多少衰えたとしてもHECを鍛えればそれをカバーすることができるという考え方がある。松井は室内ケージで、そのHECのトレーニングを繰り返し行なっていた。まもなく37歳、年齢的衰えはあるだろうが、それをカバーするトレーニングはあるのだ。

 調子が上がってこないのは、チーム全体が不振ということも影響しているという。あるメジャーのコーチは「好不調は伝染するもので、打線全体が調子よければそれに引っ張られるように波に乗っていけるが、その逆もまたある」と話す。今のアスレチックス打線は不調の打者が多く、打率、本塁打、得点ともにリーグワースト3とかなり苦しいのが現状。

 ただ、ゲレン監督は「選手を出したり休ませたりしながら状況に応じて臨機応変にやっていくしかない。全ての試合を勝つつもりでやっている。もし調子のいい選手がいれば起用し続ける」と言うように、あくまでも結果を最優先する考えだ。

 試合に出場できないという状況の中で、調子を上げていくのは簡単なことではない。だが松井は、すべてを承知した上で淡々と、そして黙々と日々練習に取り組み続けている。ペリー・コーチは「調子は必ず上がる。室内ケージでの練習の時も、スイングは申し分ない。あとは結果。ヒットになるかどうかだけ」と言う。

 松井自身も「練習では決してそんなに悪くない。あとは試合の中でしっかり調整できるか、ピッチャーにきちんと対応できるか」と言う。そして「結果を出せれば毎日出られるわけですから。そういう状態にできるかどうか」とも話す。自身もチーム関係者も、結果は必ずついてくると信じている。その時、松井はまだ終わっていないと周囲はわかるはずだ。