Matsui's Space 松井秀喜ファンサイト

Columnコラム

MATSUI55.TV 2011/03/28
アスレチックスで新たな1年のスタート
はい、みなさんーこんにちは!松井秀喜です。

とうとう2011年開幕も目の前という風になりました!
今年はですね、アスレチックスで新たな1年のスタートを切りますが、開幕を迎えてですね、
今年は非常に良い状態で準備ができております。
体も気持ちもですね、シーズンに向けて充実しているところです。

みなさんもですね、ぜひ今年はサンフランシスコ・オークランド・ベイエリア一帯にですね、
観光に来て頂いて、ぜひオークランドでね、野球観戦をして頂きたいなと思います。
僕も元気な姿を今年1年お見せしたいと思っております。
そして、秋にはアスレチックスがプレーオフに出てワールドシリーズに出れるように頑張りますので、
応援して下さい!
NHKスポーツオンライン 高橋洋一郎 2011/03/22
野球の力
メジャーリーグのスプリグトレーニングもすでにその日程の3分の2以上が終了、残すところあと10日あまりとなった。
連日行われるオープン戦もここにきてだいぶ熱が入り始め、レギュラー組は開幕を見据え本格的な調整に入り、またマイナーからの招待、もしくは開幕時25人のロースター入りを狙う当確線上の選手たちは最後のアピールに必死だ。

アリゾナ州フェニックス周辺ではメジャー30球団のうち、その半分の15球団がスプリングトレーニングを行っている。
ここ数週間は天気にも恵まれ、各チームともここまで順調に調整を進めているようだ。
連日、燦々と照りつける太陽に空はどこまでも青い……。

3月11日から10日あまりが過ぎた。

あの日、朝8時のオークランド・アスレチックスのクラブハウス。
普段からそれほどにぎやかではないロッカー内はいつにも増してしーんとし、選手、職員は一様にテレビ画面に見入っていた。
アリゾナ州と日本とは時差が16時間ある。
そこにはアメリカのメジャーネットワークが報じる、日本の姿があった。

見入っていた選手たち、職員、そしてチームを取材するアメリカ人記者たちは、日本メディアを見つけるやいなや、家族の安否を気遣い、お見舞いの言葉をかけてくれた。
始めはどこの球団のクラブハウスでも同じような光景が見られたに違いない。
しかし、そのような『お見舞い』の小さな言葉は、次第に大きな『声』となっていった。

メジャーリーグ機構はすぐさまバド・セリグコミッショナーが声明を出し、甚大なる被害に遭った日本への『連帯』を表明した。
そのような表明は、もちろんアメリカだけでなく世界中のアスリート達の間にも広がり、団体・個人を問わず、たくさんの声が寄せられた。

メジャー各球団もその例外ではない。
特に日本人選手を抱える球団の中には、試合前に震災による犠牲者に黙とうを捧げたり、その後選手たち自らが先頭に立って球場内外で募金運動をしたり、と具体的な活動にもつながっているところもある。

そんななか、今季から松井秀喜選手の所属するオークランド・アスレチックスも今週になり具体的な支援策を発表した。

球団の公式ウェブサイト内にファンからの募金を募るページを開設、また4月3日の対マリナーズ戦において各種オークションを行い、その売上金の全てを赤十字を通じて寄付する、というものだ。
球団副社長のケン・プリース氏は、あくまで個人的な考えと前置いた上でこう話す。

「我々は球団として何ができるのか、どんな事をすれば日本の人たちのヘルプになるのか、正直現時点ではまだわからないんだ。我々にできる事と言えばほんのささいな事、ただそれが少しでも被災した日本の方たちの役に立ってくれれば…」

オークランド・アスレチックスは3年前の2008年、開幕を日本で迎えた。
滞在はたったの6日間、その間にオープン戦を2試合、対レッドソックス公式戦2試合をこなすという、目まぐるしいスケジュールの旅だったという。

「ただあの短い間、我々は日本でとても幸せな時間を過ごした。会う人会う人すべての人が我々によくしてくれた……私にできる事があれば、今すぐ日本に飛んで行きたいくらいだ。」

アメリカでは何か大きな災害が起こった時など、できるだけ早急に、そのような災害が起こる前の状態に戻ろうとする。
それはこの国自体が多くの苦難を乗り越え、『新世界』としてここまで発展して来た、という成り立ちに負うところが大きい。
災害に負けない、負けたわけではない、という克己心の直接的な現れ、災害による「異常」な状態を「平常」に戻す事で、「負けたわけではない。我々は(災害に)打ち勝った。」と、形だけでも示す事を至急の命とするところがある。

現在日本では、プロ野球の開幕に関してそのタイミングが妥当であるかどうかの議論が交わされている。

「事情が事情なので、軽はずみなことは言えない。とにかくリーグにしても選手会にしても、その他すべての関係者がしっかりと議論を重ねて結論に至るしかないと思う。」

いつ開幕するかどうか、そのタイミングの是非についてはここで論ずる事はない。
ただ、野球というものが人々に勇気と希望を与えてくれるものである、という事に異論はない。
そのような野球の力を信じたい。

今回、アスレチックスの松井選手の発したコメントは非常に短く、簡潔なものだった。

「ただ皆さんの無事を祈るだけ、それだけです。一人でも多くの方が無事でいて欲しいと思うだけです。」

まさに軽はずみな事は言えない、今はこれだけしか言えない、というコメントだ。
しかし、どんな短いコメントだろうが、きっとそれは人々の心に届き、ゆくゆくは微力ながらも人たちに元気や勇気を与えてくれるはずだ。
そのようなコメントを発する事のできる野球の選手は、そう多くはない。
ZAKZAK 2011/03/15
松井、メッセージはバットに託す HRボールは宮城出身者へ
 13日のロッキーズとのオープン戦で、移籍後初となる本塁打を放ったアスレチックスの松井秀喜外野手(36)。

 深い右中間フェンスを悠々と超える特大の第1号は、球団発表で飛距離約140メートル。試合後、手元に届いた記念のホームランボールを報道陣の1人に手渡した。

 今回の震災で深刻な被害を受けた宮城県出身の20代のカメラマンで、故郷の両親は無事こそ確認されたが、詳しい被災状況は分からず。傷心のまま取材を続けていた。

 「大変だと思うけど、頑張ってください」。そう声をかけた松井が帰途に就くのを見届けた後、カメラマンは人目もはばからず号泣。周囲にももらい泣きが広がった。

 ここ数日間、日本から遠く離れた異国で春季キャンプを張る日本人選手と同様に、スタッフや報道陣も日本にいる家族や知人の安否の確認に追われた。また、日本が大きな困難に直面している状況で、普段通りに野球を続けること、それを取材して日本に伝えることへの葛藤も抱えている。不安感やもどかしさで、取材現場にはモヤモヤした空気がわだかまっていた。

 できることなら、少しでもいいニュースを届けたい-。球場に居合わせた日本メディアが共有する願いを乗せ、この日の打球は母国がある東の方角にアーチを描いた。

 日本からの報道などを通して、震災の被害が現在も進行中であることは当地にも伝わっている。復興へ歩き出す以前の段階で、野球を通して励ましのメッセージなど「伝えられる状況ではないと思う」と松井は話す。

 「皆さんの無事を祈るだけです。1人でも多くの方に無事でいてほしい」。試合後も野球人として以前に、1人の人間として祈りを込めた。 (米アリゾナ州フェニックス=笹森倫)
Number Web MLB東奔西走 2011/03/09
松井の復活にかけるアスレチックス。優勝への活路は指名打者にあり!
 いよいよオープン戦も開幕し、スプリング・トレーニング真っ直中のメジャーリーグ。アスレチックスに移籍した松井秀喜選手のニュースは明るい話題が続いている。

 その順調な調整ぶりを見ても、両ヒザの状態が昨年とは比較にならないぐらい良好であることは一目瞭然だ。

 報道によれば松井がキャンプ初日からフルメニューを消化したのは実に4年ぶりのこと。「ヒザの感じを比較すれば去年よりいい。(ヒザを)意識する割合も減っている気がする」。言葉自体は控えめだが、松井自身の中でヒザへの不安が着実に解消されつつある。昨年のこの時期は守備へのこだわりを示す発言が多かった気がするが、今年はまったくといっていいほど聞こえてこないのも、ヒザの状態が良好だということの裏返しなのだろう。

 このままの状態でキャンプを終えれば……。多くのファンが今季の松井にはかなり期待しているはず。

 松井を獲得したアスレチックスにしても、今季に賭ける意気込みは相当なものだ。ポスティング制度による岩隈久志投手の獲得には失敗したものの、松井以外にも弱点箇所の戦力補強を着実に行なったというのは以前に紹介した通りだ。

成績が振るわない、アスレチックスの歴代指名打者。

 しかし、である。今季、混戦必至が予想されるア・リーグ西地区をアスレチックスが制するためには、松井の活躍が相当の比重を占めているのも間違いないのである。

 まずはこの表を見てほしい。2001年からアスレチックスの指名打者の年度別成績をまとめたものだ。

●アスレチックス 指名打者 年度別成績
シーズン 選手(年齢) 試合数 打率 本塁打 打点 OPS
2001年
(地区2位)
ジェレミー・ジアンビ (26) 124
(8位)
.283
(4位)
12
(6位タイ)
57
(7位)
0.841
(4位)
2002年
(同1位) 
レイ・ダーラム (30) 54
(10位)
.274
(4位)
6
(9位タイ)
22
(10位)
0.806
(4位)
2003年
(同1位) 
エルビエル・デュランゾ (29) 154
(3位タイ)
.259
(4位)
21
(3位タイ)
77
(4位)
0.804
(3位)
2004年
(同2位)
エルビエル・デュランゾ (30) 142
(5位)
.321
(1位)
22
(3位タイ)
88
(1位)
0.919
(1位)
2005年
(同2位)
スコット・ハッテバーグ (35) 134
(4位)
.256
(9位)
7
(9位)
59
(4位)
0.677
(8位)
2006年
(同1位)
フランク・トーマス (38) 137
(3位タイ)
.270
(4位)
39
(1位)
114
(1位)
0.926
(1位)
2007年
(同3位)
マイク・ピアザ (38) 83
(7位)
.275
(4位)
8
(7位タイ)
44
(7位)
0.727
(7位)
2008年
(同3位)
フランク・トーマス (40) 55
(10位)
.263
(3位)
5
(7位)
19
(10位)
0.751
(2位)
2009年
(同4位)
ジャック・カスト (30) 149
(1位)
.240
(9位)
25
(1位)
70
(2位)
0.773
(3位)
2010年
(同2位)
ジャック・カスト (31) 112
(8位)
.272
(5位)
13
(2位タイ)
52
(4位タイ)
0.834
(1位)

 まず真っ先に気づくのは、本来なら“打撃の職人”であるべき指名打者という割には、2006年のフランク・トーマス以外、見栄えのしない成績だということ。それはリーグを代表する指名打者、デビッド・オルティスの年度別成績と比較すればより明白だ。

●デビッド・オルティス 年度別成績
シーズン 試合数 打率 本塁打 打点 OPS
2001年 89 .234 18 48 0.799
2002年 125 .272 20 75 0.839
2003年 128 .288 31 101 0.961
2004年 150 .301 41 139 0.983
2005年 159 .300 47 148 1.001
2006年 151 .287 54 137 1.049
2007年 149 .332 35 117 1.066
2008年 109 .264 23 89 0.877
2009年 150 .238 28 99 0.794
2010年 145 .270 32 102 0.899

 特に本塁打や打点の違いをみればわかるように、主軸打者として打線の要になる存在が指名打者であるべきだ。しかしながら、アスレチックスは過去10年間、決して指名打者に恵まれているとは言えなかった。

 それでも2000年から2003年までの4年間で3度の地区優勝を飾る実力を誇っていた。当時はティム・ハドソン、バリー・ジト、マーク・マドラーという若手先発陣が台頭し、投手陣が充実していたのも要因の1つ。そして、確固たる指名打者が存在しなくともジェイソン・ジアンビ、ミゲル・テハダ、エリック・チャベスという主軸打者が揃っていたからだ。

 だが、2002年にジアンビ、そして2004年にテハダが移籍し、さらにチャベスも2006年以降故障が続き出場数が激減し、昨季には引退している(今季、突然ヤンキースとのマイナー契約を結んだが、一線に戻るのは難しいだろう)。

 改めて【表1】を見てほしい。各成績に括弧で記されているのは、各ポジション別にチーム内で出場数が最も多かった選手10人の中での順位を示したものである。ジアンビ、テハダが抜けた2004年以降、2006年のトーマスや出場数の少ない選手を除いた指名打者の成績自体は大差はないのに、平均的にランク順位が上昇しているのがわかる。

 例えば2001年のジェレミー・ジアンビは57打点でチーム7位だったのに、2005年のハッテバーグは59打点で4位にランク。また2004年のデュランゾや2009年のカストは、本塁打、打点ともにずば抜けた成績ではないにもかかわらずチーム上位にランクされているのだ。

松井のケガがなく最低ノルマさえクリアできれば……。

 この数字が意味することは至って明快だ。かつての主軸打者が抜けてからというもの、世代交代が円滑に進まず彼らの穴を埋めることができていないということである。

 このことは、そのまま打線内での指名打者への負担増にもつながっているのだ。2004年以降で見ると、指名打者が活躍した2006年しか地区優勝ができていない。これを単なる偶然と片づけるアナリストは存在しないだろう。

 昨季のチーム防御率リーグ1位が示すように、投手陣に関しては新世代の台頭で地区内はおろかリーグ屈指の陣容を揃えている。5年ぶりの地区優勝のカギを握るのは良くも悪くも打線の出来次第なのだ。長打力補強のため松井以外にもジョシュ・ウィリンハムを獲得したが、シーズン自己最多は26本塁打(2006年)、89打点(2007年)に留まっており、主軸打者というにはもう一つ物足りなさが残る。

 結論はたった1つ。アスレチックスが地区優勝を狙うには、松井がシーズンを通してケガなく出場し続けるしかない。そして数字的にも30本塁打、100打点が最低ノルマになってくるだろう。

 もちろんこれまでの実績を考えれば、両ヒザさえ問題なければ十分にクリアできるはず。そしてそれを達成した暁には、日本の紙面を“松井復活!”というニュースで賑わすことになるはずだ。
NEWSポストセブン 2011/03/09
チーム最年長・松井秀喜「球団のお荷物にはなりたくない」
 新天地となるオークランド・アスレチックスでメジャー9年目のシーズンに挑む松井秀喜(36)。アリゾナでキャンプを続ける松井の肉声を、スポーツジャーナリストの古内義明氏がリポートする。


 今季で37歳になる松井に、「チーム最年長」という言葉の響きを聞いた。「もう松井秀喜もそういう年になったのか、という感じですよね」としみじみと語った。

「20年近く現役でやっていれば、いつかは最年長になる日が来ます。選手として残された時間が残り少ないと思われても仕方がないし、一年一年が勝負の年なのは間違いありませんね」

 彼の表情と言葉からは今年にかける意気込みが感じられると同時に、選手生命をかけた厳しいシーズンになることも十分に予感させた。

「毎年選手生命はかけていますよ。何度もいいますが一年一年が勝負ですし、球団のお荷物にはなりたくありませんからね。この年齢で“お荷物”になったら、そのチームでは終わりですよ。『心・技・体』の一つでも欠けたら、期待されている結果は出せないと思います。一つでも欠けたら引退する気持ちに変わりはありません」

 甲子園で5打席連続敬遠された男は、いつしか「巨人の4番」から「ヤンキースの4番」に飛躍を遂げた。体にメスを入れながらも、世界一の美酒を味わった。そして今季、選手生命をかけたプロ19年目の戦いが始まった。
MATSUI55.TV 2011/03/08
非常に楽しみなシーズンに
はい、みなさんーこんにちは!松井秀喜です。

今ここアリゾナのアスレチックスのキャンプ地でございます。
今年はですね、非常に今のところ体調も良くですね、膝も痛みもなく元気にキャンプを送っております。
まだあと1ヶ月くらいね、開幕までありますが、
これからオープン戦に向けて調整していきたいという感じです!

今年はほんとに僕自身も非常に楽しみなシーズンになるんじゃないかなという風に思ってますし、
新しいチーム「アスレチックス」でね、良いシーズンになるようにしたいと思っております。

えーまあ、アスレチックスはね、若いチームでね、
ピッチャーが非常に良いのでプレーオフに行くチャンスもね、十分あると思っております。

僕がチーム最年長ですので、チームを引っ張っていってこれから頑張っていきたいと思います。
NHKスポーツオンライン 高橋洋一郎 2011/03/07
もう一人のボブさん
アリゾナ州フェニックス。
オークランド・アスレティックスのスプリング・トレーニング。朝7時。
集合時間までまだ数時間あるにもかかわらず、すでに練習用のユニフォームに着替えた選手がちらほら、バットを持って打ち込みのためケージへと向かう気の早い選手も見受けられる。

朝早く球場に入る選手のほとんどは、キャンプに参加しメジャーに残るためのシビアな競争にさらされている若手選手、すでに開幕に向けて逆算調整に入っている投手陣などだが、なかでも一番多いのはけがや故障をかかえた選手、またオフの間に手術をした選手達だ。

アスレティックスにはそのような選手がたくさんいる。
ロッカーの横にあるトレーナー室は、まるではやりの病院の待合室のように、朝からずっとトリートメントをする選手で込み合っている。

「どの選手よりも早く球場に来るようにしている。選手が必要だと思った時に、そこにいて的確なアドバイスができるようにね」

ボブ・アレーホ氏。
アスレティックスの選手強化・コンディショニングのディレクター(Director of Strength and Conditioning)だ。
アスレティックスで、最も忙しいスタッフの一人。

「トレーニングのメニューは私がつくる。身長、体重がちがうように、選手達のトレーニングメニューは個々すべて違う。全員の選手に当てはまるメニューなんてないよ」

昨年チームは4年ぶりに負け越しを脱し、81勝81敗の5割の成績。
アリーグ2位でシーズンを終えたが、シーズン中はずっとけが人に悩まされ続けた。
2010年シーズン、チームは23度も故障者リストに選手を登録。
これは2008年の25回に次ぐ球団ワースト2位の多さだ。
同じ選手が複数回、もしくは一度に複数の選手が故障者リストに入ることもあるが、単純に考えると、昨シーズン1年で23人の故障者を出したということになる。

メジャーリーグでは、ベンチ入りできるロースターの数は25人なので、乱暴ではあるが数字だけを見ると、ほぼ全員が一度は故障者リストに入ったということになる。

「メジャーのようなトップレベルでプレイする選手にとってけがや故障はつきもの、なくす事は不可能なんだよ」

それゆえに大事なのは、いかにけがをする確率を下げるか、またけがをしたとしてもその程度をどれだけ軽いものに抑えられるかを考えることだという。

実際にトリートメントをするのはトレーナーの仕事だが、いかにけがを“しずらい”、もしくは“再発しずらい”状態に選手を導くのは、ボブさんの仕事だ。

「選手がけがをしたら、その理由を徹底的に調べるんだ。なぜしたのか。なぜ防げなかったのか。何をしたからか、逆に何をしなかったからかとね。けがのメカニズムを科学的に分析することはよりよいプログラムをつくる事に役に立つんだ」

今シーズン、アスレティックスの前評判は非常に高い。
要の投手陣は先発4本がすでに固まり、5番手の枠を4、5人の投手が争うという、とても『健康的な競争』の中でキャンプは進んでいる。
松井選手を筆頭に補強した打線も昨年の得点力不足を解消してくれるはずだ。

しかし、それには条件がある。
当たり前ではあるが、選手がシーズンを通じてヘルシーな状態で試合に出続けることができるならばである。

クリーンアップの一角を担うことが期待される、ロイヤルズから獲得したデヘスース外野手、ナショナルズから獲得したウィリンガム外野手、どちらも昨シーズン後半をけがの手術で棒に振っている。
ローテ5番手候補にと期待されレンジャーズから獲得したハーデン投手も、キャンプ序盤に右腕の古傷を再発させ、実戦での登板はまだ見えない状況だ。

選手をいかにヘルシーに保ち、シーズンを通じて活躍できるコンディションを作り上げるか、ボブさんにかかる責任は大きく、また、本人もそれを十分承知している。

「大きな責任を感じるよ。ただ私には自分のつくるプログラムに自信がある。うちのプログラムで調整すれば、きっとけがのリスクは減っていくはずさ」

そのボブさん、今シーズンの松井選手のひざの状態には太鼓判を押している。

「ヒデキには昨年契約のため訪れた時にオークランドで会った。その時に一緒にランチを食べて、うちらのプログラムについて話した」

実はこのボブさん、ヤンキースで松井選手のチームメートだったジェイソン・ジオンビー選手のパーソナルトレーナーだったこともあり、松井選手とは旧知の仲だ。

「現時点で、1年通して彼がヘルシーでプレイできない理由は見当たらないね」

ぜひそうあってほしいものである。
今年大きな躍進が期待されるアスレティックス、それを支えるのは、ゲレン監督もさることながら、同じボブでもこのアレーホ氏になるかもしれない。
週プレNEWS 2011/03/03
松井秀喜を笑顔にさせるコンディションとアスレチックスというチーム
現地時間2月28日のオープン戦で、昨シーズン在籍した古巣エンゼルスと対戦したオークランド・アスレチックスの松井秀喜。3番・DHで出場し、レフトフライ、空振り三振、押し出し四球の、2打数0安打1打点。新生“グリーン・ゴジラ”として、調整の遅れもなく順調なスタートを切っている。

試合前にはかつての同僚たちと笑顔で再会。特に親交の深い、エンゼルスの中心選手でメジャーを代表する外野手のトーリ・ハンターとは、固い握手を交わしていた。

今シーズンの松井からは、非常にリラックスした雰囲気が伝わってくる。すでにメジャーで8シーズンプレイし、ワールドシリーズMVPも獲得した実績から言えば、新チームでもどっしり構えていて当然といえば当然なのだが、それ以上にコンディションの良さが、松井を笑顔にしているように見える。

松井をずっと取材している記者も、「今年は、例年に比べヒザの状態が格段にいい。最近ではベストに見えた昨年よりも早いペースで仕上がっている。すでに全力疾走もできているしね」と語る。ヤンキース最終年となった09年のキャンプでは、まともに走ることもままならず、練習後にひとりで顔をゆがめながら屈伸運動する姿が見られた。そして、シーズン中は何度もヒザに溜まった水を抜きながら、ボロボロの体で戦っていた。その当時とは、比べものにならないほどコンディションは良さそうだ。

そしてもうひとつ、松井を笑顔にさせる要因に、アスレチックスというチームが非常にフィットしていることも挙げられる。

03年から09年まで在籍したヤンキースは、いうまでもなくメジャーリーグにおいてすべての面でナンバーワンのチーム。ケタ違いの年棒で各球団から集められたスーパースター軍団は、常にワールドシリーズ優勝をニューヨークのファンから要求され、メディアの数、ファンの数も他チームとはケタ違い。常に厳しい視線にさらされている。

一方、アスレチックスは1970年代初期、そして1980年代の終わりに黄金期を迎えた名門チームだが、近年はア・リーグ西地区の2~3番手といったところ。ホームであるカリフォルニア州オークランドには“ブラックホール”と呼ばれる熱狂的なファンを持つNFLのレイダースがあるため、ファンは分散している感じだ。チームにはスーパースターもおらず、キャンプ地にはのんびりとした空気が流れている。松井も気軽にファンのサインに応じることができる環境だ。

ヤンキース時代、ヒザの怪我をおして打席に立つ松井には、どこか悲愴感が漂っていた。だが、世界一という究極の目標もMVPという勲章つきで手に入れた今、こうしたチームでのびのびプレイすることで、本来のバッティングを取り戻せる可能性は高い。高校時代から、常に「自分の成績よりチームの勝利」と言い続けてきた松井のスタイルは、今年こそ真価を発揮するだろう。