Matsui's Space 松井秀喜ファンサイト

Columnコラム

スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/31
トーレ監督 「松井は映画の中の主人公だ」 MLB日本開幕戦第2戦 会見
「いい思い出と素晴らしい経験という宝物を抱えてアメリカに帰る」

 これ以上の満足はありえないでしょう。連戦で1勝1敗のタイ、それも最後の試合を勝利して、帰路につける。これからの長い遠征を非常に楽にしてくれました。まず先発のケビン・ブラウンがすべてですね。試合の行方を決めたと思います。そしてもともとオーダーに入る予定ではなかったクラークが本塁打を打って、みんなの緊張が解けたと思います。それからは試合の流れがうまいこといきました。

――松井が凱旋して、このように活躍したことについてどう思いますか

 まさに映画の中の主人公のような活躍だったと言えるでしょう。しかし松井選手に対して非常に驚くのは、たえず落ち着いていることです。シーズンの開幕にはだれもが緊張するものです。ところが彼は非常に落ち着いていた。さらに彼の母国で開幕を迎え、これだけ集まったファンを全員、満足させたことを関して、まったく驚嘆しています。

 ここで皆さんに謝罪しなければいけません。なぜなら松井秀喜をアメリカに連れて帰らなければいけないからです(笑)。

 でも彼のやったことを誇りに思いますし、私も満足しています。

――A・ロッドについてはどう思われますか

 やや疲れているのは事実でしょう。ただ最後の2打席で、彼がライト方向とセンターへ打ち返したのは、非常にいい内容だったと思います。次につながる打席だったと言えると思います。

 昨日も負けた後に、チーム全員を集めて、「そんなに力入れる必要もないじゃないか。162試合負けるわけじゃないし」と言ったのですが、どんな高額な年俸をもらっている選手だろうが、どれだけのベテラン選手であろうが、力みは入ってしまうものです。

 先ほども言いましたが、クラークの本塁打で緊張がとれたと思います。

――松井選手が主人公だとしたら、2打席連続本塁打のポサダ選手が女優といったところでしょうか

 私はポサダのことを“ジョージ”と呼んでいますが、ジョージに「君が母国のプエルトリコに帰って、2本打たない限り、MVPになれないんだろうね」と言ってなぐさめました(笑)。

 しかし彼も力んでいたと思います。その力みで、自分の結果がでないことに腹を立てていました。キャッチャーというポジションが、自分を見失うことはあってはならないことです。ブルペンコーチが、ポサダの肩に手を回して、自分の息子に話かけるように、何かささやいていました。内容は分かりませんが、そのことが2本塁打につながったのではないでしょうか。

――デビルレイズのGM(ゼネラル・マネージャー)が言っていたんですけど、昨日は小泉首相とジュリアーニ前ニューヨーク市長の始球式や観客の雰囲気が、まるでプレーオフの雰囲気だ、と言っていたんですけど、今日に関してはいかがでしたか

 それは疑う余地はないでしょう。この観客の騒ぎ、すべてを取り巻くエネルギー、メディアからの注目はプレーオフさながらの雰囲気でした。ご存知のとおり、このような雰囲気の中では、選手も影響を受けやすい。またそういった騒ぎを、エネルギーにしています。

 ひとつ、私が懸念しているのは、毎試合、試合前に花をもらっているので、アメリカに帰って、花をもらえなかったらガッガリするのでは、と思っています(笑)。

 この長い距離を飛んできての遠征で、両チームとも試合を行わなければならない、その中において、どういったことが受け入れられるのか、まったく予想ができませんでした。われわれはこれで帰路につきますが、いい思い出、素晴らしい経験をした、という宝を抱えて帰ることになります。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/31
松井 「アメリカに気持ち良く帰れる」 MLB日本開幕戦第2戦 会見
「アメリカで日本遠征を“I was very happy”と振り返りたい」

――本日の試合の感想を教えてください

 まず3回の同点タイムリーですが、最初1点負けていたので、同点に追いつくことができて、うれしかったです。ホームランについては、しっかりと甘いボールを打てました。ベースを1周しているときは、神様に感謝しながら1周しました。昨日負けたことで、今日は勝ちたいという気持ちでプレーしていましたし、これで気持ち良くアメリカに帰ることができると思います。

――松井さんはホームランを打った後、ボールがよく見えるようになるとおっしゃっていましたが、巨人とのオープン戦でホームランを打った後、そのような感覚はありましたか

 あのジャイアンツ戦のホームランというよりも、ここに来る前の何試合かは、ずっと僕の中ではいい打撃ができていたと思います。

――アメリカに戻られてニューヨークの人に「デビルレイズとの開幕戦はどうだった?」と聞かれたら、どのように答えますか

 英語で答えるんですか? “I was very happy(とてもうれしかったです)”(笑)

――ホームランを打たなければならないというプレッシャーは感じましたか。また、今年は16本より多く打てそうですか

 もちろん日本のファンの皆さんがホームランを期待しているというのはすごく感じていましたが、それが僕のプレッシャーになることはなかったです。常に自分がチームのために今できることをする、ということに集中していますので、あまり周りが期待していても、期待にこたえようと、そういう風にはなりません。その辺はまったく問題なく、気持ちの中でコントロールしながらプレーできたと思います。

 昨年より打てるかという質問ですが、分かりません。皆さん、予想してください。

――2002年の日米野球では、あまりいいプレーができませんでしたが、今回は満足してアメリカに帰ることができますでしょうか。また、ファンのようにこのようにプレーできて満足していますか

 2002年のときは、これからメジャーに行く、ということを決めて、それでいてジャイアンツのユニフォームを着てプレーするという、僕の中では複雑な気持ちでプレーしていたので、なかなか集中できなかったのかもしれません。今回は、しっかりプレーに集中できていたし、僕にとっても素晴らしいシリーズだったと思います。

――MVPの授賞式のときは、どのようなことを考えていましたか。また、ファンへはどのようなメッセージを送りましたか

 もちろん表彰式のときは非常にうれしかったですし、幸せな瞬間でした。ファンへのメッセージは、やはり感謝の気持ちですね。これだけの声援を受けてプレーできるというのは、なかなかないことですし、その声援が僕のプレーを後押ししてくれたと思いますし、パワーにもなりました。その感謝の気持ちを皆さんに伝えたつもりです。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/30
MVPルーゴと猛打賞ホールのコメント MLB日本開幕戦第1戦 会見
ルーゴ遊撃手 「たくさん勝ってファンを増やしたい」

(6回にヤンキースの反撃を止める好守備と3対3から勝ち越しの二塁打を放つ)

――本日のプレーについて振り返ってください

 とにかくいい勝利だったと思います。ヤンキースが相手だったということもありますし、非常に本拠地から遠い場所で勝ったというのは良かったと思います。

――今日の試合はホームでありながら、ヤンキースの応援が多かったですが、やりにくくはなかったですか

 ヤンキースは特別なチームでして、どこへ行っても非常にたくさんのファンがいます。ですから、私どももたくさん勝って、多くのファンに応援してもらえるようにしなければならないと思います。

――6回に素晴らしい守備がありました。あれで試合の流れが変わった思いますが、振り返っていかがですか

 あれは非常に難しいプレーでした。僕とセンターとセカンドの3人にとって難しい位置に飛んだ打球でした。ただザンブラーノも非常に頑張っていましたし、幸運にも僕が捕ることができて良かったです。

――時差ボケはいかがですか

 個人的には長い時間飛行機に乗らなければならないのは、非常に苦痛なんですが、今回日本に来たことは、いい経験でした。たくさんのファンが応援してくれますし、僕のプレースタイルというのは9回全力でプレーするということなので、そういう意味でもいい経験になっていると思います。

ホール捕手 「最高のディフェンスを見せ、攻撃も積極的だった」

(8番ながら3安打3打点の大活躍)

――本日のプレーについていかがでしたか

 本当に最高でした。チームは最高のディフェンスを見せ、攻撃も積極的で、チームが一つになって、いい試合ができたと思います。

――ザンブラーノ投手は昨年に比べてコントロールが良かったと思いますが、その秘訣は?

 コントロールについては、春季キャンプの間、最も力を入れて練習していました。もともと非常に力のある投手だと思いますので、ストライクが入れば、今日のような素晴らしいピッチングができると思います。

――6回にムシーナ選手を交代に追い込んだ二塁打を放ちましたが、あの場面を振り返ってください

 あの時は、確か無死二塁ということで、とにかく走者を還すことだけ考えていました。最高の結果が出たと思います。

――今年の松井選手の印象は捕手から見ていかがですか

 ほかのメンバーもすごいので、特に松井だけというわけではなくて、とにかくアウトを取れるように頑張るしかないですね。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/30
ピネラ監督 「歴史的な勝利だ」 MLB日本開幕戦第1戦 会見
「松井選手がいくら打とうが、勝てば問題ない」

――本日の試合についてお話ください

 まず試合を振り返って、最初にジアンビー選手の本塁打が出ましたけど、ザンブラーノがその後をしっかり抑えてくれました。また、いいバッティングも見せてくれました。終盤に入ってからは、ムシーナを打ち崩して勢いに乗り、リードをカーター、バエスとつないで逃げ切りました。本当にいい試合でした。歴史的な勝利で、興奮しています。

――ヤンキースとの金銭面の違いについては

 ユニフォームを着てグラウンドに出れば、あとは野球をするだけです。ヤンキースだけでなく、ほかにも多くのお金を使っているア・リーグのチームもありますが、われわれがやらなければいけないことは、とにかく試合に勝って、観客をたくさん呼ぶこと。そうすれば給料も上がるでしょう。

――今日のヤンキースの7本のヒットのうち6本が長打、同じくデビルレイズにも6本の長打がありました。この長打については、この球場だから多かったのでしょうか

 ヤンキースはとても強力なメンバーがそろっていて、力もあるので、長打も多くなるでしょう。またこの球場も、アメリカの球場に比べると狭くて長打が出やすいと思います。あと、まだシーズンは始まったばかりということで、投手の調子がそんなに上がっていないことも(長打が多かった原因として)挙げられます。

――両チームとも新しい選手を獲得していますが、本日のマルティネスの活躍についてはいかがでしたか

 昨シーズン終了後、組織として議論をしたところ、ベテランで優勝経験もあり、リーダーシップがとれる選手が必要だ、ということになり、そこで真っ先に名前が挙がったのが、ティノ・マルティネス選手でした。彼は、過去にマリナーズ、ヤンキース、カージナルスと、いずれも成績のいいチームに在籍していましたし、今日も3本ヒットを打ちましたが、守備、打撃ともに期待できる選手です。ただ、本塁打をたくさん打つということよりも、チームが若いものですから、リーダーシップを発揮してもらえればと思います。そういったことに期待しています。

――松井選手が打つと球場が盛り上がってしまうということで警戒はしましたか

(球場の盛り上がりは)もともと予想していたことで気にはならなかったです。日本で長い間プレーしてヒーローでしたし、ヤンキースでも昨年大活躍をしました。とにかく、松井選手がいくら打とうが、われわれが勝てれば特に問題はないです。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/30
トーレ監督 「松井に不安はない」 MLB日本開幕戦第1戦 会見
「ロドリゲスの守備は素晴らしかった」

――ムシーナ投手についてですが、少し長く投げ過ぎたと思いますか

 そうは思いません。特に彼の投球数が多かったとは思いませんし、開幕投手として、それだけの実績、キャリアを残していますので、長く投げ過ぎたということはありません。

――クアントリル投手とヘレディア投手については、いかがですか

 クアントリル投手は明日になるまで、(ケガの)状況というのは診断が下りないと分りません。ご覧になったとおり、アレックス・ロドリゲス選手とひざがぶつかってしまったわけですが、恐らく大丈夫だと思います。

 ヘレディア投手は、とにかくカウントを悪くし過ぎました。それが今日の結果につながったのでしょう。特にティノ・マルティネスに対して、ああいった形でカウントを悪くして真っ直ぐを投げれば、おのずと結果(本塁打を浴びる)は見えていました。

――ロドリゲス選手についてはどう思いますか

 バッティングに関しては、最初の2打席は引っ張る傾向が見られましたけど、第3打席ではそれを認識して、しっかり右方向に打ち返していました。新しい球団に来たときというのは、非常に難しいと思いますが、守備に関しては素晴らしかったと思います。

――松井選手に関して一言お願いします

 今日の攻撃において、松井選手の打撃がわれわれのエンジンをかけてくれました。ご覧のとおり、松井選手のヒットが、ジアンビーの2点本塁打につながったと思います。彼のバッティングに関して、私は何の不安も抱いておりません。キャンプを非常にいい形で終え、どんな打順においてもまったく問題なく順応して、素晴らしい仕事をしてくれます。

――ロフトン選手の三塁打は監督へのアピールプレーだったと思いますか

 そうは思いません。彼はとにかくハッスルプレーを信条とするプレーヤーです。この場において、何か自分を証明したいということは、まったく彼にはありません。あのプレーに関しては、自分の判断によるプレーだったと思います。彼がやったことは的確だったと思います。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/30
違う環境に戸惑ったスター軍団 MLB日本開幕戦第1戦リポート
スター軍団も神社にお参り!?

 試合前、デビルレイズのルー・ピネラ監督は言った。
「雰囲気は……開幕戦っていう気がしないけど、自分の体の中、神経は徐々に開幕の雰囲気になってきたかな」

 試合前のクラブハウス。デレック・ジーターも、戸惑いを隠せない。
「やっぱり普通とは違うよ。でも、野球の試合には変わりがないから」

 そのジーターに、「開幕の日、縁起を担ぐようなことはあるのか?」と聞けば、首を振る。
「まったくないね。縁起を担ぐ選手もいるけど、僕にはないんだ」
 日本では、キャンプスタートの前日、チーム全員で神社にお参りする習慣がある。そんな話をすれば、
「それはいいね。僕らもすべきだね」

 だが、残念ながら泊まっているホテルには神社はない。当然か……。

球場へのバスが渋滞…松井もジアンビーも息つく暇なし

 松井秀喜の乗ったバスは、渋滞にはまり、午後5時前に到着。着いてからはしばらく、招待チケットの整理に追われ、やがてチームミーティング、写真撮影と、分刻みのスケジュールとなった。写真撮影も、例によってギリギリ。慌ててチームメートが待ち構えるひな壇に向かった。

 同じバスで東京ドームに到着したジェイソン・ジアンビーも、息つく間もなく、着替えに追われた。
「何てことだ。ゴメンな、ゆっくり話せなくて。渋滞、何とかなんないのかよ」

 考えてみれば、MLBが座間の米軍キャンプを訪問したきは、渋滞を恐れ、ヘリコプターをチャーター。しかし、肝心の試合には、警察のエスコートもなかったのだろうか?

A・ロッドにもジーターにも笑顔がなかった開幕戦

 初回、松井はいきなりツーベースで出塁。1死後、ジアンビーのレフトスタンドへの2点本塁打で生還した。

「松井がエネルギーをくれたからね」
 ジアンビーは、1打席目のホームランについて聞かれれば明るかったが、試合は敗北。それ以上は口が重かった。

「162試合のうちのたった1試合じゃないか。開幕の雰囲気をちょっとつかむのは難しかったけど、まあ、デビルレイズの選手が良かったから」
 とは、アレックス・ロドリゲス。黒のスラックスにTシャツ姿で、腕組みしながらメディアに応対。厚い胸板、肩からひじにかけて、ほれぼれするような芸術的な筋肉が印象的だった。
「でも、松井はよく振れていたね。俺? 俺はダメだった、今日は」

 敗戦投手になったマイク・ムシーナ。
「違う環境だったからね。でも、それはお互いさま。同じ条件で野球をやっているわけだから」
 2連敗したらどうするのか、そんな質問も飛んだが、ムシーナは冷静だった。
「そういう可能性もあるね。でもまあ、明日はケビン・ブラウンがしっかり投げてくれるだろう」

 ヤンキースのクラブハウスを出るとき、シャワールームの鏡の前で、アレックスとジーターが仲良くそろってネクタイを結んでいるのが見えた。
 ともにブルーのネクタイ。負けた影響か、2人に笑顔はなかったが、仲を疑うメディアも多い中、2人がそろって首筋を伸ばす姿は、ほのぼのとした光景だった。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/29
松井秀喜 「どんな打順でもベストを尽くす」 ヤンキースvs阪神 会見
 米大リーグの日本開幕シリーズ「’04リコーMLB開幕戦」は29日、東京ドームでオープン戦2試合が行われ、ヤンキースは阪神と対戦。松井秀喜外野手は「2番・左翼」で先発出場し、3打数1安打だった。試合は、11-7で阪神が快勝。前日の凱旋アーチに続く、2試合連続の本塁打に注目が集まった松井は、第1打席で中前打を放ったが、第2打席は投ゴロ、第3打席は三ゴロに倒れた。以下は試合後の会見での松井のコメント。

松井秀喜 「気持ちは明日に向かっている」

 今日は前川君(阪神の先発投手)もなかなかピッチングがうまかったし、いいバッティングをさせてもらえなかったですね。さすが、昨年のチャンピオンチームだと思います。

――今日の試合は昨年打てなかった2番という打順でしたが

 僕の中では、何番でも常に準備をしておく、というのは当然のことですし、昨年も2番に入って打てなかったですけど、それは打順が影響したのではありません。僕の中では、どんな打順でもベストを尽くしますし、何番がいいとか、そういったものはありません。

――ヤンキース打線の2番というのは、どのような役割があるのでしょうか

 分かりません。ヤンキースだからどうのこうのではなくて、自分がその状況でどういうことをやるのか、それ以外ないです。

――巨人時代は阪神と何度も対戦していますが、今日の阪神の印象は?

 印象としては、それほど変わっていないですね。僕が日本にいたときも最後の何年かは、強さというか、手強い相手だということは感じていましたし、そういう意味では、手強い印象というのは変わっていません。

――これでオープン戦が終わりましたが、ホッとした気分でしょうか

 ホッとしたというよりも、いよいよ明日始まるな、というか、気持ちはもちろん明日のシーズン開幕に向かっていますね。

――フロリダから日本に場所が大きく変わりましたが、気持ちは切り替わっていますか

 周りのファンや球場など、そういう部分での違いは必ず出てくると思います。だた野球に関して言えば、自分がやらなければならないこと、常にチームの中で動いているということ、そういう意味では(フロリダの時と)一緒だと思っています。

――東京ドームの人工芝に、てこずっている選手も多いと思いますが、1年半ぶりにプレーしてみていかがですか

 僕は外野手ですから、外野に関して言いますと、人工芝ですから、打球は天然芝に比べて、勢いが弱くなりにくいということですね。あとは天井ですね。ボールが天井と同化してしまう時がありますが、明日、明後日はナイトゲームなので問題ないと思います。その辺じゃないですかね。基本的な部分で、最後までボールをしっかり見るだとか、その辺さえ気を付ければ問題ないと思います。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/29
岡田監督 「ヤンキースの胸を借りていい経験ができた」 ヤンキースvs阪神 会見
 米大リーグの日本開幕シリーズ「’04リコーMLB開幕戦」は29日、東京ドームでオープン戦2試合が行われ、ヤンキースは阪神と対戦。試合は、1点をリードされた阪神が、2回に一挙7点を奪って逆転し、11-7で快勝した。以下は阪神の岡田彰布監督とジョージ・アリアス内野手のコメント。

阪神・岡田監督「桧山とアリアスのヒットがうれしかった」

――今日の試合の印象を聞かせてください

 ヤンキースと試合ができるということは光栄だと思うし、選手も非常にいい経験をさせてもらったと思います。感謝しています。今日で開幕までの実戦は終わりなんですが、チームとしても勝ち負けではなく、ヤンキースの胸を借りて、いろいろな経験ができて、いい形で実戦を終えることができたという気持ちでいっぱいです。

――ヤンキースは日本で初めて敗れたそうです。すごい攻撃でしたね

 それは全然知りませんでした。もしそうであれば光栄に思います。19安打といっても、調子の悪かったアリアスと桧山が、ここ2試合で本当にいいきっかけをつかんで、開幕に向けて調子が上がってきたので、2人のヒットが一番うれしかったですね。

――松井秀喜選手が前川投手が良かったと言っていましたが、監督から見ていかがですか

 キャンプからの状態を見て、先発でいけるんじゃないか、と思ってオープン戦では先発で使ってきました。ローテーションの6人に入れるのは決めていましたし、最後にヤンキース相手にいい投球をしてくれました。開幕の6試合の中では投げさせたいと思います。

ジョージ・アリアス(阪神)「ケガさえなければいいシーズンになる」

――昨日と今日の2日間で6安打、本塁打は4試合連続放っています。開幕に向け、準備万全ですね

 今はすごくボールがよく見えています。スイングもいい形ですし、シーズンに向けて、いい形で調整できていると思います。オープン戦の最初の頃は、少し打てない時期もありましたが、今はがまんして、いいボールを待って打てるという状態です。

――チームとしてもヤンキースを相手にいい試合をしました。いい形でシーズンに臨めそうですね

 昨日の試合も、最後は相手に追い上げられましたが、いい試合でしたし、今日もヤンキース相手にいい試合ができました。願わくば、こういったいい形をそのままシーズンに持っていけたらな、と思います。

――今は調子がいいと思いますが、昨年は少し不調の時期もありましたが

 シーズンは140試合あります。どういう形で始められるか、どういう形で終われるか、というのは大切だと思います。どういう形で終われるかは分かりませんが、できれば、いい形でシーズンを迎えられればいいと思います。

――メジャーのチームと2試合やって、まだまだ(メジャーで)いけるのでは、と思いましたか

 確かにアメリカのチームと対戦するのは、すごいいい気分です。私もアメリカのことを恋しく思っていますし。しかし、日本人の選手がこういった経験を得ることができたということを、私はうれしく思います。なかなか日本の選手が、こういったアメリカのチームと対戦することはないんですけど、こういう形でプレーできたことはいい経験ですし、選手たちが喜んでいるのを思うと、うれしいですね。

――監督が変わったことについてはいかがですか

 星野前監督は、いろいろな選手をたくさん連れてきて、選手をすごく一生懸命働かせるのがうまかったと思います。岡田監督は一歩下がって、選手にプレッシャーを与えずにプレーさせています。出てきた選手は、うまくゲームに適応してやっていると思います。シーズンは長いので、ケガなくうまく状態を保てれば、いいシーズンになると思います。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/28
トーレ監督 「松井の本塁打には驚かなかった」 ヤンキースvs巨人 会見
ジョー・トーレ監督 「エキサイティングな試合だった」

――本日の試合を振り返っていかがですか

 とてもエキサイティングな試合だったと思います。実は松井選手には「4番・センター」というのは伝えていなかったのですが、バッティング練習のときにセンターでフライを受けていたので、既にそれを感じていたのかもしれません。バッティング練習の後、クラブハウスで「4番・センター」だと伝えると、彼はうなずいていました。そして、「今夜だけ君はゲームより偉大な存在なんだよ」と伝えました。

 今日はプレシーズンの試合でしたが、ファンの反応、エネルギーを昨日から感じることができましたし、その結果、選手全員にやる気が出てきたと思います。今回、守備はいまひとつだったんですが、あまり人工芝でプレーする機会もありませんので、そのせいかなと思います。あと、選手が自分の出番が終わっても、だれもベンチから出て行かなかった。これは、どれだけみんなのやる気が出ていたのか、判断基準になると思います。

――今日は本番を意識した継投があったと思うのですが、投手陣の仕上がりはいかがですか

 今夜に関しては、われわれが持っているレギュラークラスの投手をほとんど使ってしまいました。ですので、明日は、控えを中心にした組み立てを考えております。ドノバン・オズボーンが先発です。3回ぐらいまで投げさせようと思っています。その後はホルヘ・デ・ポーラ、そして残りの投手を使っていこうと考えております。

(ホゼ・)コントレラスは非常に素晴らしかった。(フェリックス・)ヘレディアはややコントロールに問題があった。(マリアーノ・)リベラ、(トム・)ゴードン、(ポール・)クアントリルに関しては、いつものように任せられる安心感を持っていました。全体的な感想としては、開幕に向けて準備が整っている、と思います。

――アメリカの観客との違いについて伺いたいのですが、松井選手が9回に三振した後、(観客が)帰る準備をしていたことに関しては、どうお考えですか

 ヤンキー・スタジアムのファンの熱狂度というのは、皆さんご存知だと思います。今日の試合に関しては、やはりヤンキー・スタジアムとは異なりますが、ファンの熱狂度は十分にご覧になったことでしょう。今日は非常に長いゲームとなりました。これはアメリカだったら、早いイニングからファンの皆さんはソワソワしていたことでしょう。しかし、東京ドームのファンの皆さんは、松井の最終打席まで集中して見ていました。

――選手の調子はいかがでしょうか。長旅でしたし、時差ボケの問題もあります。しかも、明日はデーゲームですが……

 明日はデーゲームですが、これは気に入っています。その後、1日半後の開幕に向けて準備しなければなりませんから。睡眠ですが、私は昨夜8時間寝ましたし、飛行機の中でもゆっくりと睡眠をとって調整してきました。私のような年寄が大丈夫であれば、若い選手は間違いなく大丈夫でしょう。あと、熱狂的な雰囲気の中で選手のエネルギーは上がっております。また開幕戦が2戦控えておりますので、時差ボケなどは吹き飛んでしまうでしょう。

――巨人の選手の印象を聞かせてください

 コントレラスの素晴らしかった投球で、伸びのあった速球を打ち返したあのキャッチャーが目に付きました。しかし、一選手というよりも、私が30年前に来日したときにも感じた選手の全体的な野球に対する能力、いかに集中してハードに野球を展開させるか、これに関しては今日もまた深い感銘を受けました。コントレラスが投げている時にも、一、三塁から見事な走塁を展開した。やはりチームとしての野球を深く理解していると感じました。

――松井選手が歴史的な本塁打を見せてくれました。密かにこういうことを期待していたのでしょうか、それとも驚きましたか

 驚きはしませんでした。なぜなら、昨年を通じて、彼の性格・能力をよく理解していたからです。特にプレッシャーをいかに彼が利用していたか。また、スランプ時においても彼の野球に対する態度、性格は変わることはなかった。これは非常に感銘を受ける部分です。今夜もさまざまな雑音が彼を取り巻いていましたが、ものの見事に見せ付けてくれました。

阿部慎之助(巨人・捕手) 「松井さんは集中力あった」

――松井選手の印象はいかがでしたか

 やはりすごいな、というのが一番で、体もひと回りもふた回りも大きくなっていたので、ビックリしました。

――ヒットをコントレラスとリベラから2本打ちましたが、感触を教えてください

 1本目はいいボールが来たら初球から打とうと思っていました。しんに当たったのですが、ボールの違いで、やはり少し重く感じました。2本目も同じですね。基本的にきれいなストレートがないというか、全部動いてくるので、やはりとらえにくいですね。松井さんがメジャーに行ったときに、最初それに苦労されたと聞いていたので、そのすごさを体感できました。

――松井選手にホームランを打たれたシーンですが、フォームが変わったことについての印象は

 構えが変わったのはすぐ分かったんですが、それがなぜかというのは、松井さんに聞いてみないと分かりません。1打席目は本当に抑えにいったので、悔しいですけどしょうがないという気持ちが出てくるぐらい、打席で雰囲気もありましたし、すごい集中力もマスク越しに感じました。その辺が違いましたね。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/28
松井秀喜 「おいしい本塁打打てた」 ヤンキースvs巨人 会見
<ヤンキース 6-2 巨人>
 ヤンキ 010 320 000 =6
 巨 人 001 000 001 =2
勝:コントレラス 負:高橋尚

 (ヤ)コントレラス、ヘレディア、クアントリル、ホワイト、ゴードン、リベラ-ポサダ、フラハティ
 (巨)高橋尚、ランデル、岡島、前田、シコースキー-阿部

【本】 松井秀1号(1)(高橋尚)、ポサダ1号(3)(高橋尚)、ジーター1号(1)(ランデル)

松井 「日本のファンの皆さんの前でいいプレーできた」

――本日の感想をお願いします

 久しぶりの東京ドームのゲームで、いきなりおいしいホームランも打つことができましたし、日本のファンの皆さんの前でいいプレーができて、僕はうれしく思っております。

――ひさびさに日本の公式球を打って、軽く感じましたか

 やはり多少は、メジャーリーグで使っているボールよりは飛んだような気がします。

――ホームランの直前の気持ちを伺いたいのですが、ナーバスでしたか、エキサイティングでしたか

 いつもどおりの気持ちで打席に入ることができたし、打席の中でもいつものアプローチができたと思います。

――試合後、ファンの皆さんにどのようなことを言ったのでしょうか。また感傷的になりましたか

 温かい応援を頂いたし、それに対する感謝の気持ちですね。しかしジャイアンツ時代を思い出したり、特別な気持ちにはならなかったですね。

――昨年メジャーのスタジアムでの応援に慣れて、久しぶりに味わう日本風の応援をどのように感じましたか

 まったく問題なかったですね。特別な気持ちもなかったし、いつもと同じような感じで打席に入れたと思います。

――「4番・センター」はいつ、どのように知ったのでしょうか

 試合直前ですね。ジョー・トーレ監督の方から、「今日は4番・センターでいく」と言われました。彼が僕の日本時代のポジションを考えて、サービスでやったと思いますが、それもまったく問題なかったですね。

――“普段と一緒”とよくおっしゃっていますが、今日はファンにとっても、松井選手にとっても特別な試合で、多少感情的な要素も含んだ試合だと思います。その中でどのように平常心を保つことができたのでしょうか

 これはどのゲームでも一緒なのですが、やはり自分がコントロールできること、試合前や試合中のルーティーン(通常の行動)だけに集中していますので、それ以外の僕がコントロールできない要素に関しては、まったく考えていません。ですので、どんなゲームであろうと、それさえできれば、僕は普段どおりのことができると信じています。

――「4番・センター」ですが、監督はファンのためだけでなく、松井選手のためにもやったと考えられないでしょうか

 それは僕には分からないですけど……。確かに、僕はこの球場で「4番・センター」でプレーしていたので、僕を気持ち良くプレーさせるための心遣いだったかもしれませんね。

――トーレ監督が「松井にセンターと伝える前から、センターで捕球をしていたので驚いた」とおっしゃっていましたが

 ケニー・ロフトンが試合前、「今日はたぶん入れ替わってやるよ」と言っていたので、長い間守っていなかったので、一応練習しておかないと、と思って念のためやっておきました。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/28
トーレ監督の粋な計らい「4番・松井」 ヤンキースvs巨人 リポート
試合直前まで極秘事項だった松井の打順変更

「6番・レフト」が、当初予定されていた松井秀喜の打順、守備位置だった。

 しかし試合前日、ニューヨークの番記者らが、ジョー・トーレ監督との定例会見で、提案を持ちかけた。
「こんなに日本のファンが待ち望んでるんだ。4番、センターは、松井でいいじゃないか?」
 その時は、即答を避けたトーレだったが、ほおを緩めてニヤリ。
「I may do that, that's good idea(いいアイディアだ。そうしようかな)」

 果たして試合当日、ロッカールーム脇に貼り出されたオーダー表には、4番の欄に「松井」と書かれていた。

だれもが予想しなかったシナリオ

“ホームラン、ホームラン、松井! ホームラン、ホームラン、松井!”
 そんなファンの大声援を受けて、最初の打席に入った松井。カウント2-2からの6球目、甘く入ったカーブをたたくと、打球は右中間、センター寄りのスタンド上段へ消えていった。

「事実は小説より奇なり」
 日本のファンを喜ばせようとのアイディアが、ここまでのシナリオに発展するとは……。トーレも、ファンも、チームメートも、松井本人ですら信じられなかったかも知れない。

 半信半疑でダッグアウトに戻った松井の表情。チームメートから手荒い祝福を受ければ、ようやく表情を崩したが、しばらくしてテレビカメラは、そっと首をひねり、ほおを緩めた松井をとらえた。
 その後、何度も何度もテレビに映された松井の笑顔。それが、何よりもこのホームランを物語っていた。

一番冷静だったのは……

 一昨年の日米野球以来、何かと松井をサポートしてきたジェイソン・ジアンビーは言う。
「今日のゲームは、松井の試合。しかし、初回からいきなりあんなのを打てるとはね。ちょっと、言葉がなかったよ(笑)。でも、松井はそれができる。どんな状況でも、きっちり自分の力が出せる選手だから」

 試合後のトーレは、自分が描いたシナリオだと言わんばかりに自画自賛。
「彼に告げたのは、ちょうど打撃練習が終わった後かな。ラウンジでね。でも、あんまりビックリしてなかったなあ。あの打席……ちょうど、ベンチで話していたんだ。ここでホームランが出たら凄いなあ、って。スタンドから、『ホームラン、ホームラン、松井』っていう声も聞こえていたからね」

 だが、当の本人が一番サラリ。試合直後、クラブハウスで話を聞けば、
「いや、ビックリはしませんでした。サービスでしょう?」
 4番・センターは、やはり試合直前に知らされたそうだが、
「昨日から少しそんな話を耳にしていたので……」
 トーレは極秘事項としていたようだが、松井は裏でなんとなく、その思いやりを感じていたのかもしれない。

 ホームラン、ヒットの後、フォアボール2つ。これには、満員の観客から、味方チーム(ジャイアンツ)の投手に対してブーイング。
 トーレは言った。
「めずらしいものを見せてもらったよ(笑)」
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/27
ピネラ監督 「本場のベースボールを味わってほしい」 デビルレイズ来日会見
ルー・ピネラ監督 「ヤンキース戦はいつもチャレンジ」

 言うまでもないですが、今回、日本に来て2004年の開幕を迎えることができ、とてもうれしく思います。フロリダのタンパからは大変な長旅でしたが、皆さまにはとても親切にしていただいて、感謝しております。この美しい都市で開幕できることは素晴らしいことです。皆さまにアメリカの本場のベースボールをぜひ味わっていただきたいと思います。また、阪神と巨人という日本は素晴らしいチームとの試合を楽しみにしております。

――4試合の先発投手はだれですか?

 オープン戦ですが、阪神戦がダグ・ウェクター、巨人戦がマーク・ヘンドリクソンになります。ヤンキースとの開幕戦は(ビクター・)ザンブラーノ、第2戦はジェレミー・ゴンザレスを考えています。

――昨年はヤンキース戦は大きく負け越しましたが

 監督が悪かったんでしょうね(笑)。ヤンキースはもちろん素晴らしいチームで、メジャーでも最高のチームの一つです。昨季は彼らも好調だったので、勝つのは難しかったわけですが、今年はぜひいいスタートを切りたいと思います。

――今年のキャンプの成果はいかがですか

 故障もまったくありませんし、順調で準備万端といった感じです。もちろん日本でいいスタートを切りたいですし、開幕戦では自分たちがどういう状況なのか、いいテストになると思います。

――異国の地で古巣と対戦することについては、どのような心境でしょうか

 ヤンキースとの対戦はいつもチャレンジです。ワールドチャンピオンも最多のチームですから、そういうチームに勝つのは、スリリングです。特に監督の場合はそうです。とにかくベストを尽くして頑張りたいと思います。

――ホームで開幕した方が良かったと感じますか?

 今回、日本で開幕できるのは、いい機会だと思っています。もちろん(デビルレイズは)松井選手がいるヤンキースほど名前が知られているチームではありませんけど、日本のファンの皆さまにわれわれのプレーを印象付けて、もっとファンを獲得したいと思います。また、われわれはプレーするだけでなく、いいプレーヤーを探すという目的でも来ております。ですから、もしいつかアメリカでのプレーを考えている選手がいたら、デビルレイズも検討していただきたいと思います。

――この会見には投手が出席しておりませんが、コンディションを考えてのことですか

 ヤンキースから隠すためです(笑)。

オーブリー・ハフ 「日本は親切でビックリ」

 この1カ月で来日するのは2度目(1月の開幕戦記者会見の際に来日)なんですけど、本当に皆さま親切でビックリしております。アメリカではあり得ないことです。ヤンキースとの対戦も楽しみですし、また日本のチームとの対戦も楽しみにしております。

ティノ・マルティネス 「日本開幕戦は栄誉」

 私は1987、87年に来日しておりますが、この時は日本だけでなく、ほかの国のチームとも対戦しました。東京だけでなく、新幹線に乗って、いろいろな町に行きました。今回デビルレイズの一員として来日することができ、うれしく思っており、ここで開幕を迎えられることは名誉だと思っています。日本のチームとの対戦も楽しみですし、ヤンキースにぜひ勝っていい開幕にしたいと思います。また、日本の皆さまに最高の野球をお見せしたいです。

 今年のヤンキースは史上最強のチームではないでしょうか。彼らと対戦する時は、だれでも「ぜひ勝ちたい」というやる気が出るものなんです。特に今季はA・ロッド(アレックス・ロドリゲス)らが加わりまして、さらにやる気が出てきました。同じ地区でもありますので、チャレンジではありますが、ぜひ頑張って、なるべく勝ちたいと思います。

カール・クロフォード 「たくさんの盗塁を決める」

 初めての来日なので、興奮しております。ヤンキースももちろんですが、日本のチームとの対戦も楽しみにしております。数日間の滞在ですが、すべてが新しいものばかりだと思います。あとは両試合ともぜひ勝ちたいですね。

(長旅だったが)睡眠は足りていると思いますし、今は疲れていません。体は戻っていると思います。観光については、まだ考えていませんが、だれにでも付いて行きます(笑)。

 試合では、できるだけたくさんの盗塁を決めたいですね!

ロッコ・バルデリ 「4連勝したい」

 クロフォードと同じように、私も初めての来日となるのですが、皆さんとても親切ですし、東京は素晴らしい都市です。また私がこれまで訪れた中で、最も美しい場所なのではないでしょうか。今回は4試合とも勝ちたいと思っていますし、心からプレーしたいと思います。また、野球を世界中に普及したいとも考えております。日本はアメリカと同様に野球が盛んなので、このような形で来日できたことを感謝しております。

(長旅だったが)思ったより(到着は)早かったですね。(観光では)町を歩き回ったり、なるべく自分の足で歩いたり、食事をしたりしたいですね。

 東京ドームに関しては、特によく知りませんが、アメリカのドームでも試合をやっていますので、大丈夫だと思います。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/27
トーレ監督 「松井の打順は6番」 ヤンキース来日会見
ジョー・トーリ監督 「日本のファンは熱狂的」

 今回、日本に来ることができて、とてもうれしく思います。今、(会見場に)入ってきた時に、日本のメディアの皆さまは拍手で迎えてくれましたが、ニューヨークのメディアの皆さまからは拍手がありませんでした。こんなものでしょう(笑)。私は30年前にも来日しておりますが、その際にも日本のファンの皆さまは大変熱狂的でした。今も松井選手のおかげでさらに熱狂的になっているかと思います。今回はすぐに帰ってしまいますが、少しでもアメリカの野球をお見せしたいと思います。

 4試合の先発投手ですが、28日の巨人戦はホゼ・コントレラス、29日の阪神戦は2人考えておりまして、開幕戦はマイク・ムシーナが第1戦、ケビン・ブラウンが第2戦となります。そして、松井の打順ですが、彼は6番を打ちます。

デレック・ジーター 「われわれは勝つことが仕事」

(日本語で)オハヨウゴザイマス(笑)。今回初めて来日できてうれしく思います。日本のファンの皆さまが、松井選手に対してどのように反応するか、楽しみにしております。一つ楽しみではなかったのが(長時間の)フライトだったんですけど、思ったより長くはなく快適でした。私もチームも、今回の来日をとても楽しみにしております。

 試合に関しては、どんな試合でも負けると思って試合に臨むことはありませんし、それはオープン戦でもそうです。われわれは勝つことが仕事ですから。最も重要な開幕戦でもベストを尽くしたいと思います。

アレックス・ロドリゲス 「日本のチームも将来アメリカでプレーしてほしい」

 前回は1996年の日米野球で来日したのですが、松井選手やイチロー選手をはじめ、素晴らしい選手たちと対戦することができました。とてもいい経験でした。それから8年経って、またここに来ることができ、より慣れた状態で東京ドームでプレーすることができると思います。また日本の熱狂的なファンの皆さまに、またお会いできるのを楽しみにしております。いいプレーをお見せしたいと思います。

(オープン戦で対戦する)阪神や巨人で知っている選手はいませんが、イチロー選手や松井選手など素晴らしい選手もいますし、日本の野球はリスペクト(尊敬)しています。

 われわれは現在、日本でプレーしていますが、将来は日本のチームの皆さんにもアメリカで、われわれのファンの前でプレーしてほしいと思います。

マリアーノ・リベラ 「日本の皆さんに楽しんでほしい」

 今回、(来日できて)うれしく思っております。私にとって初の来日となりますけど、日本の皆さまは本当に親切で、今まで温かく歓迎してくださいました。日本の皆さまには楽しんでいただきたいと思います。

(オープン戦で対戦する)阪神や巨人で知っている選手は、正直申し上げまして、だれもおりません。知っているのは松井選手だけで、かれはウチのチームにいますから……。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/27
松井秀喜 「勝つために来日した」 ヤンキース来日会見
「ヤンキースのみんなに日本のいい面を紹介したい」

 今回はヤンキースの一員として、この場に帰ってくることができまして、僕個人にとっても素晴らしい舞台ですし、ここに立てることをうれしく思っております。とにかく僕としては、帰ってくるという感じはあまりなくて、とにかくヤンキースの一員として開幕戦に勝つために来たという心境です。僕自身、この東京ドームで10年間、ジャイアンツの選手としてやってきましたが、今度はユニフォームは違いますけど、またプレーできるということは光栄に思っています。とにかく日本のファンの皆さんの前でプレーするのは1年半ぶりぐらいなので、なんとかいいプレーをお見せして、今までと違った松井秀喜をお見せしたいと思います。また、わざわざ遠くからやって来たヤンキースのみんなにも日本のいい印象を持ってもらえるように、いろいろ紹介したり案内したりして、「日本には行きたくない」と言われないように、なんとか日本のいい面を見せていきたいと思います。もちろん野球の方でも精一杯頑張りますし、ファンの皆さんにいいプレーをお見せしたいと思います。

――巨人と対戦することについてはいかがですか

 日本のファンの皆さんは、僕のジャイアンツ時代のイメージが強いと思いますので、その対戦を楽しみにしていると思いますし、僕自身も楽しみです。気持ちとしては、今は複雑ではないし、みんなに会うのは楽しみにしています。ファンの皆さんも、その試合に注目してくれて、開幕戦の頃には騒ぎも収まってくれて、いいんじゃないかと思います。

――ロドリゲス選手のヤンキースでの初めての公式戦が日本で行われるということで、松井選手に違和感はありますか

 彼のヤンキースでの初めての試合が日本で行われるということは、日本のファンにとっては、スーパースターのヤンキースでの歴史的なデビュー戦を見られるということで、最高のことだと思います。僕もチームメートとして最高です。彼の気持ちは分からないですけど……。

――日本の子どもたちとアメリカの子どもたちと反応は違いますか

 僕は違いはないと思っています。野球に対する気持ちだとか、プロの選手に対するあこがれの気持ちなどは、一緒だと思います。

――日本のファンはヤンキースに対してどのように感じているのでしょうか

 日本のファンの皆さんも、もちろんヤンキースがどんなチームなのか、どんな歴史を持っているのかはご存知だと思います。日本でも、ヤンキースの試合はほぼ毎試合ライブで中継していますし、ほとんどの選手の顔と名前も一致していると思います。ですから、みんながせっかく日本に来ても、外を歩けないんじゃないかと心配です。
スポーツナビ 丹羽政善 2004/03/27
スター軍団も今回は脇役!? MLB開幕戦リポート
打撃練習のデビルレイズよりストレッチのヤンキース

 東京ドームが、もし、水の上に浮かんでいるのなら、間違いなく今日のドームは、ヤンキースが陣取った、三塁側に傾き、ひっくり返っていたであろう、と思う。

 タンパベイ・デビルレイズ、ニューヨーク・ヤンキースの順で行われた記者経験の後、少し遅れて、三塁側の裏通路からグランドに向かえば、そこは無数の人だかり。
 その中、人をかき分けグランドに上がれば、ストレッチを始めたヤンキースを囲むようにして、メディアが囲み、ラッキーにも三塁側の席に座った子供たちは、身を乗り出して、松井に声援を送った。

 その時、まだグラウンドでは、デビルレイズの選手たちが、打撃練習を行っていたのだが、カメラのレンズがどこに向いていたのか、言うまでもない。そして、対照的に、デビルレイズの一塁側ダッグアウト前は閑散とし、練習を終えて、引き上げてきた元マリナーズのポール・アボットに久々に会えば、言葉にならない笑みを返してきた。
「すごいね、さすがに(笑)。まあ、ヤンキースだし、松井もいるし、仕方がないのかな。こっちはできることをやるだけ。それで少しでも、デビルレイズが認知されればそれでいいよ」。

ヤンキース、デビルレイズともに観光気分はなし! いい試合を期待

 しかし、そう考えていたのは、デビルレイズの選手ばかりではない。ヤンキースのデレック・ジーター、アレックス・ロドリゲスでさえ、今回ばかりは、松井人気の影に隠れ、脇役的な選手としての扱いになってしまう――そう、考えているに違いない。

 練習に先立って行われた記者会見では、ジョー・トーレ監督、ジーターらがユーモアあるコメントでメディアをひきつけた。ヤンキースの選手が入場するにあたり、会場のメディアからは拍手。しかし、壇上から見て右手に陣取った、ニューヨークメディアからは、何のリアクションもなかった。
 それを目ざとく見つけた、トーレは言った。
「日本のメディアは、こんなに温かく迎えてくれるのに、ニューヨークの皆は、ずいぶん冷たいもんだね(笑)」。

 18時間にも及ぶ、長旅について聞かれたジーターは、
「本当は、それが一番心配だったんだけど、悪くなかった。意外と快適だったよ(笑)」
 と語り、会場全体を和ませた。

 前出のアボットも言う。
「フライトそのものは悪くなかった。『お酒を飲まないように』と、言われたのが厳しかったけど(笑)。見てない映画もあったから、3本ぐらい見たよ」。

 両チームの選手とも、阪神、巨人については、「何も知らない」と話した。「俺が知っている日本人選手は、松井だけだから(笑)」とはマリアノ・リベラ。

 しかし、明日からの2試合は、開幕につながる重要なゲーム。各選手とも、少し入り混じった観光気分は、練習の後半、すでに消えかけていた。ヤンキース、デビルレイズとも、いい試合を見せてくれそうだ。

 そして、何よりも注目は松井だが、古巣相手に、どんなプレーを見せるのか、日本人にとっては、開幕戦以上に、興味深い試合になるかもしれない。
スポーツナビ 2004/03/26
原辰徳 独占インタビュー第4回 愛弟子・松井秀喜に託す夢とは?
「1年目はたたき台 今年は35本以上打つ!」

 打率2割8分7厘、16本塁打、106打点で1年目を終えた松井。本拠地開幕戦での満塁本塁打、オールスター出場、日本人初のワールドシリーズ本塁打……。数々の劇的な場面を演出し、日本を代表する打者として、大きな足跡を残した。だが松井本人、そして原氏は昨年を振り返って、どのような思いを抱いているのだろうか。

「やっぱり昨年、彼の中で良くやったか否か、というところは、彼しか分からないところだと思います。一般的には、ワールドシリーズは勝てなかったけれど、出場できたんだし、良くやったと言われているでしょう。もちろん、1年目を終わって(本塁打数の)16本という数字は、僕自身も、彼にもやや不満が残る数字ではあります。ただ1年目のたたき台というか、(1年目の経験を)今後ステップアップする材料には必ずしていくと思っています」

 原氏は2月末から3月初めにかけてメジャーリーグの春季キャンプを取材するため渡米し、松井を激励している。松井のフリー打撃を食い入るように見つめた原氏は、昨年との体の違い、打撃フォームの変化などから、2年目の飛躍を確信した。

「今年は1年目の経験も踏まえて、その中で、僕自身は、松井が35本以上必ず本塁打を打つ、と彼の前でも断言したし、彼自身もそのぐらいの目標を持ってやっています。ただ彼の中では、昨年の教訓というものは、すごくあると思いますね。一番感じたのは、日本とメジャーリーグのボールの違い。大きさはもちろん、手触り、そして飛距離の差なんかだと思うんです。反発力という部分で、日本のボールよりも落ちる。例えば、彼のようなホームランバッターが、ライト方向へとらえたとしても、日本だったら“1打数1安打、1本塁打、1打点”だったのが、メジャーだと“1打数0安打、外野フライ”で終わってしまうケースもあるわけです。昨年の教訓から、それならどうしたらいいか、という対策を練って、今年を迎えているな、と思います」

「松井はまだ若いので、一つ一つ成長していってほしい」

「まずはウエートトレーニングをして、体が大きくなって、パワーアップした。これは歴然と目に見える部分ですね。もう一つは、重心の位置を下げてスタンスを広めにして、速いボールに負けない、という打撃をやっています。それが大きな違いでしょうね。あとグリップエンドにやや小指にかけている。これは彼の特徴なんですけど、いつでも課題を持ちながらステップアップしていっているという部分においては、日本の時から一緒だなと思います。あとは、メジャーリーグが開幕するまでにオープン戦が20試合ぐらい行われますが、その中でどうアジャスト(調整)して、どう変わっていくか。僕は今回、彼のバッティングをしっかりと目に焼き付けてきたから、今度日本に来た時、それがどのように変化しているのか、すごい楽しみですね」

 “アジャスト”――松井が1年目のシーズン中によく口にした言葉だ。メジャーに慣れるための調整が終わり、いよいよ2年目、松井の真価が問われる。原氏が松井に託す夢とは?

「彼はまだ若い。これから1年1年、いろいろな経験を経て、一つ一つ成長していってほしいですね。自分の野球を完成に近づけていってほしい!」
スポーツナビ 2004/03/25
原辰徳 独占インタビュー第3回 原にとって「ライバル」だったメジャーリーグ
「メジャーに行こうとは思わなかった」

 原辰徳は東海大相模高校の1年生で甲子園デビューし、父である監督・貢氏とともに「親子鷹」として東海大でも活躍。3年時に出場した1979年の日米大学野球では、3勝4敗と敗れたが、4本塁打を放ち、敢闘賞を獲得している。当時、米国の関係者からも高い評価を得ていた原氏だが、メジャーリーグに行こう、という気持ちはなかったと語る。

「あの頃はそういう時代だった」
 原氏はこう続けた。
「米国に対しては、あこがれよりも、むしろひと泡吹かしてやろうという気持ちが強かったですね」

 プロ入りしてからも、選手、監督として出場した日米野球で、何度もメジャーリーグ選抜などに挑んだ。88年は、グレッグ・マダックス、オーレル・ハーシュハイザー、デービッド・コーン、カービー・パケットら、そうそうたるメンバーを相手に、2勝3敗2分といい勝負を演じたが、92年にはクレメンス、オジー・スミス、ケン・グリフィーJrらを相手に、1勝6敗1分と完敗。そして監督として松井らを擁して臨んだ2002年も、メジャーリーグ選抜に3勝4敗で逆転負けを喫した。

「印象に残っている選手は、オリオールズのエディー・マレー。一塁手で、スイッチヒッターなんですけど、メジャーリーグでも500本ぐらい本塁打を打っています。彼が平和台で槙原(寛己)から打った本塁打はちょっと忘れられないね。セカンドの篠塚(和典)さんがジャンプしたような感じ。それが右中間の場外に消えていった。グーンと。それとヤンキー魂を持っていて、『あーメジャーリーグだな』と思ったのが、ロイヤルズのジョージ・ブレッド。それと、クレメンスはやはり迫力のある投手でしたね。あとはドジャースの右の変化球ピッチャー、ハーシュハイザーね。ボールがすごくよく動いた。カル・リプケンJrも当時、(親子鷹という意味で)同じような状況にいて、走攻守そろったいいプレーヤーだな、と思いましたね。でもあんなに長く、鉄人的にやるとは思わなかった。ちょっとひ弱そうな感じがあったから」

 メジャーリーグのスーパースターたちと対戦しても、決してひるむことはなかった。むしろ「自分が勝っている」と感じることもあったと言う。しかし、ここでもメジャー挑戦の道はなかった。

「われわれのころはFAもなかったしね。FAができたのはもう晩年だから。もちろん野球協約が、今とは違ったというのもあるかもしれませんね」

「選ばれし人間がメジャーに挑戦している」

 原氏がかなわなかったメジャーへの挑戦。しかし時代は変わり、95年に野茂英雄がドジャースに入団したのを契機に、佐々木主浩、イチロー、松井秀喜、松井稼頭央と、日本プロ野球界のスターたちが、相次いで海を渡った。この時代の変化をどのように考えているのだろうか。

「やっぱり選ばれし人間がメジャーリーグに行っているという状況ですよ。だれしもが行けるポジションではないし、だれしもが成功するステージではないですね。そういう意味では、スターター(先発)である野茂が行って、いまだに頑張っている。よく“パイオニア”という言葉を使われますけれども、野茂のたどった足跡というものが、日本の選手に大きな勇気を与えたと言えるでしょうね」

「次にクローザー(抑え)の佐々木。これも非常に存在感を出した。そしてセットアッパー(中継ぎ)としては長谷川(滋利)。野手で初めて門をたたいたイチロー。これまたすごい。しかし彼はアベレージヒッターで、外野手である。次にパワーヒッターで外野手の松井秀が行った。彼もヤンキースで、すごい存在感を見せました。そして今年、初めて内野手で、しかもリードオフマン的な存在の松井稼が入る。あと残っているのはキャッチャーぐらいじゃないかな。そういう意味で、今年の松井稼は注目に値しますね。彼はリードオフマンだから1番を打つでしょ。特にショートというポジションは、守備の面ではピッチャーとの連係をはじめ、内野手、外野手と、いろいろな面でコミュニュケーションを取って、核となるポジション。その中で、どういったプレーを見せてくれるのか、非常に楽しみですね」

 もし今、原氏が現役を続けていたら……果たしてメジャー挑戦の可能性はあっただろうか。無理を承知で、こんな質問をぶつけてみた。すると、少し間を置いた後、ゆっくりとこう答えた。

「行ったかもしれない……。その可能性はあったかもしれないね。どちらかと言うと、メジャーリーグの野球は、力対力の真っ向勝負で、プロだったらだれしもがあこがれる、胸と胸を付き合わせた勝負という気がします。実際、日米野球でアメリカチームと対戦しても、そういう感じがしたし、たとえ負けても、打ち取られてもすがすがしい。もしくは、打った時には大いに喜べる。そういう気持ちを味わせてくれる感じがしました。そういうところにあこがれて、やった可能性はあるでしょうね」
スポーツナビ 梅田香子 2004/03/25
松井秀、2年目の好調の理由とは? MLB日本開幕戦コラム
生活に食事、何事にも苦労する1年目

 13年前、筆者がフロリダとアリゾナでメジャーリーグの春季キャンプ取材を開始したとき、今とはまったく違った。まず日本人に会わないし、日本語を話す機会がないので、言葉が出にくくなった。たまに会うのはミズノのスタッフだったから、よく間違えられた。

 特にフロリダは世界中からセレブが集まってくる避寒地だったので、夜になるとファクスが使えなくなるホテルが幾つかあり、レンタカーにファクスを積み込んで移動したものだ。デジカメ(デジタルカメラ)も普及していなかったから、撮影したフィルムは苦労して現像し、AP通信社の支社を探して、電送してもらなくてはいけなかった。

 今は、注意するのは日焼けで顔の皮がむけることぐらいで、取材そのものは本当に楽になった。日本食レストランもどこにだってある。とは言っても、すべてが日本と同じというわけではないので、1年目はいろいろ生活の雑用がのしかかってきて、フラストレーションも募るようだ。料理好きの佐々木主浩(現・横浜)も、
「アメリカのスーパーマーケットってコンソメの素が売っていないよね!」
 と言い出し、
「そんなまさか。ちゃんと探したんですか?」
 などと反論したこともある。

オープン戦序盤の不振にも指揮官は余裕

 けれども、「慣れ」というのは恐ろしいもので、野茂はもちろん、イチローも松井秀喜も、年を重ねるごとに顔つきがリラックスしてきた。2年目を迎えた松井は、オープン戦の最初の10試合こそ打棒が振るわなかったが、まったく焦った様子はなかった。
「どこが悪くて打てないか、理由が分かっていますから。そこを調整していけばいいことです」

 ジョー・トーレ監督も松井秀の意図するものが見えていたらしく、
「まだじっくりボールを見ている段階なのだろう」
 と、これまた報道陣を逆取材していた昨年と違って、2年目の余裕を感じさせた。

開幕に照準を合わせる松井

 開幕が近づくにつれてバットが火を吹き始めたが、ある意味でこれも松井秀の計算どおり。1年目ほどオープン戦で結果を示す必要に迫られていなかったから、1シーズンを乗り切る体力づくりに重点を置き、相手ピッチャーの球筋やタイミングの取り方を計り、開幕に照準を合わせてきた。

 何よりも、バットとスパイクをマイナーチェンジしたのだから、それに慣れるまで時間がかかったのは当然だ。
「昨年の経験を生かして、このオフに今までお世話になっていたミズノと相談して、基本的には日本と同じものなのですが、幾つかの点を変えて作ってもらったのです」

 まずバットの長さを昨年より短くした。これはミズノの久保田五十一(いそかず)名人が、カナダに自ら足を運んでメープルシュガーの原木を選び、日本に持ち帰って、丹精込めて削って仕上げた逸材である。

 日本にいたときは、もっぱらアオダモ製を愛用し、実績を残していたのだが、「しなり過ぎる」と松井。アオダモよりも固いホワイトアッシュも試してみたが、耐久性に問題があり、すぐに折れてしまう。

 実は昨年の春季キャンプの時点で、既にアオダモとメープルとホワイトアッシュの3種類を持ち込んでいて、
「メープルが一番いい」
 という結論が出ていた。ところが、日本ではめったに使われない素材だったため、上質のメープルを入手するのに時間がかかる。そのため、4月はホワイトアッシュ製を使い、5月上旬にやっとメープル製の新バットが誕生したといういきさつがあった。

松井は「健康な」ヒーローとなれるか!?

 メープルといえば、木目が美しくて、しかも密度が濃く、重厚な家具の素材だ。試合が続くと、心なしか重く感じられた。とはいえ、ツインズとのプレーオフ地区シリーズでは、このバットで本塁打を放っている。

 外角にやや広い大リーグのストライクゾーンに対処するため、日本時代より長くしていたのだが、今年からは元の長さに戻した。これで30グラムも軽くなった。さらにスパイクの方も、刃の材質を軽いチタン製に変えることで、30グラム軽くしてもらった。まさに「30グラムのこだわり」である。

「気分的な問題が大きいんですけどね。スパイクが軽いと、足がその分よく動くような気がするし、疲れも違うと思うんですよ」

 ありったけの知恵を絞り、グラウンドではあらゆる可能性を想定し、筋力トレーニングでは文字どおりパワーを蓄え、公式戦に向けてボルテージを高める。

 日本人大リーガーたちの台頭とは裏腹に、大リーグでは観客動員の落ち込みが目立つ。飛び交う札束とまん延するステロイド疑惑の最中、今一番求められている救世主は、心身共に「健康な」ヒーローなのだ。
スポーツナビ 2004/03/24
原辰徳 独占インタビュー第2回 デビルレイズの注目は原前監督も欲しかった若手右腕
「補強はうまくいった」 原氏に自信を見せたピネラ監督

 タンパベイ・デビルレイズ――。1998年に球団数拡張のため、ダイヤモンドバックスとともに創設されたメジャーリーグで最も新しいチームだが、昨季まで6年連続最下位と不振にあえいでいる。しかし原氏は、今年のデビルレイズはひと味違うと期待を込めた。

「今回(ルー・)ピネラ監督とも話をしたんですけど、『今年は補強が非常にうまくいった』と言っていましたよ。ヤンキースほどではないにしても、ティノ・マルティネスだとか、ホゼ・クルーズJrだとか、円熟期に達した選手も獲得できたし、それに昨年までの若い力を組み合わせて、『今年は最下位を絶対脱出できる』と脱出宣言までしてくれました」

 また「期待する選手は?」と聞くと、身を乗り出すようにして真っ先にザンブラーノの名前を挙げた。

「ザンブラーノというピッチャーはいいね! たぶん開幕(投手)は彼だと思う。僕は巨人の監督の時に、このピッチャー欲しいな、と思ったんですよ(笑)。バスケスもちょうどFAで欲しいな、と思ったんだけど、お金が高くて取れなかった。ザンブラーノはまだ若くて、今年でメジャー4年目。直球、変化球、コントロールとすべていいですよ。体はそんなに大きくないけれど。ヤンキース打線だって、ちょっと苦しむと思うね」

バルデリをはじめとした外野陣にも注目!

「あとは(昨年松井と新人王争いをした)ロッコ・バルデリ。これもいいよ。というか、デビルレイズの外野手3人はみんないいね。バルデリに加えて、昨年盗塁王の(カール・)クロフォード、今度入ったクルーズJrでしょ。スイッチ(ヒッター)に、左、右とそろっているし、外野手はなかなか面白いよ。あとはマルティネスも頑張るかもしれないしね」

 前評判は高いデビルレイズだが、アメリカン・リーグ東地区は強豪がそろう最激戦区の一つ。

「あの地区はみんな強いんだよね。レッドソックスがいい補強してるでしょう。ブルージェイズ、オリオールズも強い。だからどう考えても、やっぱあそこのチーム(デビルレイズ)はビリなんだよね(爆笑)」

 開幕戦で対戦するヤンキースにもこれまで、対戦成績で大きく負け越しているデビルレイズ。だが、原氏と対談したピネラ監督は、かなりの自信を見せていた。

「僕はこういう質問したの。『日本のファンは、ヤンキースがかなり高い確率で勝つと思ってますよ。だからデビルレイズが勝てば、日本のファンは盛り上がるよ』って。そしたら『オレはそっちを狙ってるんだ。まかしとけ」って。そういう感じでしたよ。ひと泡吹かせてやるって」
スポーツナビ 2004/03/22
原辰徳 独占インタビュー第1回 「日本開幕戦には全米のファンも注目」
原辰徳 「ヤンキースは全米オールスターチーム」

 3月30日から行われるヤンキースvsデビルレイズのメジャーリーグ日本開幕戦。この試合を特別な思いで迎える人がいる――元巨人監督の原辰徳氏だ。2002年のオフ、フリーエージェント(FA)宣言してメジャー挑戦を表明した松井秀喜を、残留を切望しながらも、最後は快く送り出した原氏。ヤンキースの一員として1年目から奮闘する姿も、遠くから見守ってきた。その愛弟子が、ピンストライプのユニフォームを着て、1年ぶりに東京ドームに凱旋(がいせん)する。原氏は高まる興奮を抑えるように、開幕戦、そして松井の2年目への期待を語りだした……。

「そりゃ楽しみですよ。松井もそうですけど、今回のヤンキースに至っては、全米のオールスターを出そうと言ったら、このメンバーが集まるんじゃないか、というぐらいのチームがやって来るわけです。そういったそうそうたるメンバーを、しかも公式戦の開幕試合を東京ドームで見られるというのは、野球ファンにとっては、この上ない出来事だと思いますね。全米のファンでも注目しているゲームですから!」

 日本でメジャーリーグの開幕戦が行われるのは、メッツとカブスが対戦した00年以来4年ぶり2度目。しかも今回は、スーパースター軍団で松井も在籍するヤンキースと、伸び盛りのデビルレイズという、非常に興味深い対戦となった。原氏は両チームについて、こう語る。

「今年のヤンキースとデビルレイズは、非常に対照的なチームです。例えばサラリーの面においても、一番高い球団と、下から数えた方が早い球団。選手層においても、若いチームと、円熟期というか、力のある選手をそろえたチーム。非常に対照的です」

松井は“史上最強打線”の何番を任されるのか?

 メジャーリーグ最多となる26回の優勝を誇るヤンキース。これまでも、他チームがうらやむような豪華な補強をしてきた。さらに今年は、昨季のMVP、アレックス・ロドリゲスの加入によって、“史上最強”とも言われる強力打線を形成した。

「A・ロッド(ロドリゲスの愛称)はキャンプで見ました。まだバッティングは本調子ではなかったですけど、すごいです。メジャーリーグ100年以上の歴史でも、間違いなく僕は、3本の指に入る選手だと思う。守備も上手で、今回は(デレック・ジーターがショートを守るため)サードになるということで、みんな来ていないうちから朝早く来て、一生懸命練習していましたよ。僕らが見ていても、ミスター・メジャーリーガーという感じで、松井もそういう選手と一緒にプレーできるというのを楽しみにしてましたね」

 日本では不動の4番だった松井も、昨季はメジャーを代表する打者がズラリと並ぶヤンキース打線で、2番から7番までさまざまな打順を経験。今季はロドリゲス、そして(ゲーリー・)シェフィールドも加わり、さらに破壊力を増した打線の中で、(ジョー・)トーレ監督は松井を開幕6番に指名したという(昨季の開幕戦は5番)。この打順について、松井本人はどのように感じているのだろうか。

「本人と話をしたら『こういうメンバーでやるんだから何番でもいいです。ただし希望を言わせてもらえれば、2番は打ちたくないですね。やれ、と言われたらやりますけど』と言っていました。やはり自分の中で、本塁打、長打力、打点の部分のプライドというか、威厳というか、そういうものを持っているからだと思いますね」

 打線ばかりが注目されるヤンキースだが、投手陣も負けていない。アンディー・ペティットとロジャー・クレメンス(ともにアストロズへ移籍)、デービッド・ウェルズ(パドレスへ移籍)の3人は抜けたが、その穴を埋めるために、ドジャースのエース、ケビン・ブラウンと、エクスポズからハビエル・バスケスを獲得した。

「トーレ監督が一番言っていたのは、『やっぱりブラウンだ』と。ブラウンが自分のベースボールさえやってくれれば、エースの(マイク・)ムシーナにもプレッシャーがかからない。とにかく今年の投手力というのは、ブラウンに掛かっている、と言っていました。(開幕戦で予想される)ビクター・ザンブラーノとの投げ合いが楽しみですよ」

 そうそうたるメンバーをそろえるヤンキース。しかし、これだけの選手たちをまとめるトーレ監督の苦労も多いのではないか。かつて巨人の監督として強力打線をまとめた原氏に、そのあたりも聞いてみた。

「日本の野球は70人枠の中から、28人のメンバーを構成していきますが、メジャーの場合は、春の時点でメンバーが構成されているわけです。もちろん、その中でケガをすれば、3Aや2Aから補強したり、というのはあるのでしょうが、少し日本とは違いますね。毎年、補強次第では、まったく別のチームができますし」

「監督で言えば、静の(冷静な)トーレと動の(熱い)ルー・ピネラ、この顔合わせも楽しみです。彼らは僕にはない経験という部分がありますよ。長い経験の中で、今のスタイルを確立しています。僕はまだ経験が浅いですから、彼らの話を聞いたり、スタイルを見ていると、非常に勉強になりますね」
スポーツナビ 梅田香子 2004/03/11
ロドリゲスとジーター、全米の注目を集める黄金の三遊間
梅田香子の『松井秀喜 メジャー交友録 2004』 VOL.1
松井が楽になったA-ロッドの加入

 ヤンキース入りしたA-ロッドこと、アレックス・ロドリゲスとデレック・ジーターは、同じアメリカン・リーグ、同じ遊撃手、同じ世代だったから、長年のライバル関係にあった。

 「両雄並び立たず」という格言に似た“定説”は大リーグにもある。もっとも、大スターは大スターを知る、という“説”もある。どちらに転ぶにせよ、2人はグラウンド内外での一挙一動に注目が集まっているといっても決して過言ではない。今年は注目が2人に集まったので、
「おかげで僕は昨年より少し楽になりました」
 と松井。相変わらずポジティブ・シンキング(楽観的)だ。

スポーツ報道にもソープ・オペラの芸風が持ち込まれた……

 さすがに英語を理解する日本人大リーガーが増えたせいか、はたまたインターネットが津々浦々に普及したせいか、
「アメリカのマスコミは日本と違って、グラウンドを離れた選手たちの私生活は報道しない」
 という話をを信じる人はめっきり減ってしまった。確かにそういう“古き良き時代”もあったのだ。ベーブ・ルースの愛人がどうのこうのと、追いかけ回す慣習はゼロに等しかった。

 けれども、今は違う。マドンナの自宅から朝帰りするホゼ・カンセコやカジノで遊んだマイケル・ジョーダンが、華々しく一般誌のヘッドラインに踊る。スキャンダルだけではない。ロジャー・クレメンス(現アストロズ)はビキニ姿の夫人と『スポーツ・イラストレーテッド』誌のグラビアで肉体美を披露し、ミザール・キャブレラ(マーリンズの外野手)はボートの上で水着のギャル2人を両側に従え、ニッコリとほほ笑む写真が『ESPNマガジン』の表紙とカバーストーリーを華やかなものにした。

 実はこれほどアスリートたちのプライベートな部分が派手に露出するようになったのは、ここ10年ほどのことだと聞く。スポーツライターの重鎮、ジェローム・ホルツマン氏はこう言ったものだ。
「大きなきっかけはナンシー・ケリガン騒動だった。あれをきっかけに一変してしまったんだ。スポーツ報道にソープ・オペラ(昼の連続テレビドラマ)の芸風が持ち込まれてしまった」

無二の親友に起こった兄弟ゲンカ

 もっともケリガン騒動と違って、ロドリゲスとジーターは無二の親友同士である。ロドリゲスいわく、
「初めて会って5分話したら、たちまち打ち解けてしまった。お互い兄弟のようになってしまったんだ」
 野球がオフになると、2人はほとんど行動を共にしていたし、シーズン中もそうだった。ロドリゲスはNYに遠征するとホテルではなく、ジーターの自宅に泊まったし、ジーターもシアトルに遠征したときはロドリゲスの自宅に泊まった。

 ところが、2001年にロドリゲスがテキサス・レンジャースに移籍してすぐのことだ。雑誌のインタビューを受けたのだが、これがチームリーダーとしてのジーターを批判した形になってしまった。シアトルの春季キャンプ地ポートシャーロットから、ヤンキースのタンパまでは車で2時間ほどだ。ロドリゲスはすぐに車を飛ばしてジーターのところへ謝罪に駆け付けた。ジーターは述懐する。
「兄弟ゲンカみたいなものさ」

かつてないほどの注目を集める今年のヤンキース

 その後も対戦した試合やオールスターゲームのとき、2人が兄弟のようにふざけあっているシーンを目にした。もっとも『NYポスト』誌は「寒波注意報」という見出しで、この「兄弟ゲンカ」を深刻な事態として報じている。時を同じくして、ロドリゲスはNY遠征の際、ジーターの自宅ではなくホテルに泊まるようになった。
「だってもう一人身じゃないからね。妻との時間も大切にしてあげたい」
 4年の交際期間を経て、ロドリゲスは高校教師のシンシアと02年11月に挙式。もちろんジーターも招待された。

 いずれにせよ、はっきりしているのはケリガン騒動のおかげで、リレハンメル五輪は米国で過去最高の視聴率を記録し、フィギュアスケートのテレビ放映料は翌年から跳ね上がり、現在に至っている。
 おそらく今年のヤンキースもかつてないほど人々の注目を集め、莫大な収益を上げることになるはずだ。