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Columnコラム

web Sportiva 福島良一 MLBコアサイド 2012/04/28
レイズが今、松井秀喜を欲しがった3つの理由
 松井秀喜選手がタンパベイ・レイズとマイナー契約間近です。なぜ、レイズはこの時期になって松井選手の獲得に動いたのでしょうか。まずは、レイズの現状から紹介したいと思います。

 資金力に乏しく、才能がありながら年俸の安い若手選手で構成されるレイズは、『スピード』と『守り』を重視とした野球スタイルです。同じア・リーグ東地区のライバル、ニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスと比べると、どうしてもパワー面で見劣りしてしまいます。しかも現在の打撃成績(4月27日現在)は、チーム打率.246(リーグ9位)、得点圏打率.239(同10位)、DH打率.253(同9位)と伸び悩んでいる状況です。松井選手に白羽の矢が立ったのは、停滞する打撃面を改善する意味合いが強いでしょう。

 また、松井選手が典型的な『セカンド・ハーフ・プレイヤー』だという点も見逃せません。日本では聞き慣れない言葉ですが、シーズン前半戦よりも後半戦のほうが活躍する選手のことを指している言葉で、昔から『夏男』と呼ばれる松井選手は、メジャー9年間でも後半戦のほうが総じて成績がいい。昨年のオークランド・アスレチックスでも、前半戦の打率.209に対し、後半戦の打率.295と、実に1割近くも上昇させました。過去4年間で3度もプレイオフに進出しているレイズは、ポストシーズンも視野に入れて戦っているので、松井選手のようなプレイヤーの存在は非常に頼りになります。

 さらに、レイズが松井選手を獲得するもうひとつの理由は、彼が『クラッチヒッター』だという点でしょう。勝負強さはヤンキース時代から定評があり、通算の得点圏打率は.298を記録。さらに、ゲーム終盤の接戦では打率3割以上をマークしており、この点もレイズにとっては魅力的です。ジョー・マドン監督も、以前から松井選手のクラッチヒッターぶりを高く評価していました。

 おそらくレイズの首脳陣は、昨年のシーズン終盤に見せた『逆転劇の再現』を思い浮かべているのではないでしょうか。レイズは昨年、8月と9月のホームゲームで23勝9敗を記録し、大きく離されていたレッドソックスとの差をひっくり返して、プレイオフの切符をつかみました。特にレギュラーシーズンの最終戦、9回裏ツーアウト、ランナーなしの状態から、代打のダン・ジョンソンがツーストライクに追い込まれながらも劇的な同点ホームランを打ち、結果、奇跡のプレイオフ進出を果たしました。ジョンソンは今年、シカゴ・ホワイトソックスと契約したので、もし松井選手がレイズ入りすれば、大事な局面で期待されるのではないでしょうか。

 レイズの本拠地トロピカーナ・フィールドのあるフロリダ州セントピーターズバーグは、昔からヤンキース人気の高い地域です。なぜかというと、ヤンキースが1925年から1961年まで、毎年のようにこの土地でキャンプを張っていたからです。当時のヤンキースは、ベーブ・ルースやルー・ゲーリッグらが活躍した『第1期黄金時代』から『第3期黄金時代』にかけての最も強かった時代。よって今でも、根強い人気があるのです。

 そんな背景もあってレイズには、ヤンキースで活躍したベテラン選手を獲得してきた流れがあります。ウェイド・ボッグスやティノ・マルティネス、ジョニー・デイモンなどが、レイズのユニフォームに袖を通しました。セントピーターズバーグ周辺に住む市民は、きっと2009年のワールドシリーズでMVPに輝いた松井選手の活躍ぶりも鮮明に覚えていることでしょう。そういう面からも、レイズにとって松井選手は魅力的に映ったと考えられます。

 松井選手がレイズとマイナー契約し、メジャーに昇格すれば、出場機会は少なくないと思います。その理由は、マドン監督がベンチ入り25人のメンバー全員を使う戦い方をするからです。マドン監督の采配の特徴は、『日替わり打線』。レギュラーシーズン162試合のうち、平均で127通りのラインナップを組んできました。他球団より劣る戦力を最大限に生かすための苦肉の策でもあるのですが、マドン監督はその采配で、97勝(2008年)、84勝(2009年)、96勝(2010年)、91勝(2011年)と、数多くの勝ち星を積み重ねています。

 また、マドン監督は代打を積極的に起用することでも有名です。代打の起用回数は、4年連続でア・リーグ1位を記録しています。相手ピッチャーに応じて打順を入れ替え、スタメンも頻繁に変更し、代打も多用するので、松井選手の出場機会は十分にあるのではないでしょうか。

 前述したとおり、レイズは守りを重視するチームなので、松井選手が外野で起用される可能性は低いと思いますが、DHや代打では貴重な戦力となるはずです。今シーズン、DHで起用されているルーク・スコットは打率が低く、左投手との相性が良くありません。その点、松井選手は対左投手の通算打率も高いので、調子次第ではDHのポジションを奪う可能性も十分ありえます。2012年5月、松井秀喜選手の今シーズンがついに幕を開けそうです。メジャー10年目、レイズのユニフォーム姿が今から楽しみです。
NHKスポーツオンライン 石田大輔 2012/04/16
どうする?松井秀喜
4月12日。
38歳のジョニー・デイモンがクリーブランド・インディアンズと1年、125万ドル(およそ1億円)で契約をした。
インディアンズは中堅手のグレイディ・サイズモアが故障で戦列を離れ、外野手の補強が急務とされていた。
このデイモンの契約を聞けば、日本のファンの方ならば、誰もがいまだ所属先の決まっていない松井秀喜の契約はどうなるのか、と考えるだろう。

38歳のデイモンは昨季、2割6分1厘、16本塁打、73打点の成績だった。
打撃成績だけで見れば、松井が残した2割5分1厘、12本塁打、72打点も遜色はない。
しかも松井はデイモンより若い37歳、昨季の外野手としての出場もデーモンの16試合に対し松井は27試合を守っている。
メジャー球団に外野手に次なるケガ人が出れば、今度こそ松井秀喜とも考えたくなる。
しかし、残念ながら現状でその可能性は低い。
ア・リーグ西部地区のあるスカウトに松井秀喜の話を聞いた。
彼は現状をしっかりと把握していた。

「ニューヨークでトレーニングをしていることは聞いている。ケージ(室内)で打っているんだろう。残念ながら、その状況では球団にはいい報告は出来ない。もう4月も中旬だ。実戦とかけ離れ過ぎているよ」

ある関係者の話しによれば、松井のもとへメジャー球団からのオファーは一切ないという。
熱心に松井を口説きにかかっているのはいずれも日本の球団ばかりだ。
最もご執心なのは在京セリーグの某球団。
負けじとパリーグのある球団も積極的だ。
また、もうひとつのパリーグ球団は正式オファーこそ出していないが、「日本に戻るならばいつでも連絡して欲しい」と獲得の意思表示を見せている。
この状況下、松井はいつまでメジャー球団からのオファーを待つのであろうか。
メジャーにこだわれば、最悪、今季に限っては充電という考え方もあるが、野球を続けたいならば、この選択肢は選んで欲しくない。
一昨年にトミー・ジョン手術を受け、一年間のブランクの後、今季からコロラド・ロッキーズの先発投手として復帰を果たしたジェイミー・モイヤーの例もあるが、投手と野手では環境が違いすぎる。
実戦の勘というものに投手、野手の差はないと思うが、打者は投手が投げる真剣勝負のボールを打席に立って見ることが最も重要だ。
ましてや7月に松井は38歳を迎える。
動体視力を維持していくためにも高いレベルでの実戦は必要だ。
野球を続けるのであれば日本への復帰がベストだと思う。

今回、松井は2月22日に米国に入った。
永住権も就労ビザも持たない今のステータスは一般の旅行者と変わらない。
意味するものは滞在期間であり、5月22日を迎える前に米国からは出国しなければならない。
ひとつの節目の期日となるであろう。
2002年11月1日。
松井秀喜はメジャー移籍の思いを日本のファンの前で誓った。
「何を言っても裏切り者と言われるかもしれないが、いつか『松井、行ってよかったな』と言われるように頑張りたい。決断した以上は命をかけて頑張りたい」

あれから10年。
松井はヤンキースのワールドチャンピオンに大きく貢献し、MVPにも輝いた。
彼の命をかけた頑張りと、「松井、行ってよかったな」という思いは日本のファンならば誰もが持っている。
そして、一番大切なことは松井秀喜のプレーが見たいということだ。
日本への凱旋。
その時はやってきたと思うのだが。