Matsui's Space 松井秀喜ファンサイト

Columnコラム

スポーツナビ 渡辺史敏 2003/02/27
『GODZILLA MEDIA WATCHING』 VOL.1
マツイ・メディアに当惑する地元メディアの報道
松井報道に必ず盛り込まれる“ある事柄”

 日本ではヤンキース入りした松井の動向がそれこそ一挙手一投足を伝える勢いで報道されている。では、この新人“ゴジラ”が現地ニューヨークでどんな風にとらえられ、伝えられているかというと、かなり日本とは状況が違っているようだ。この連載では、ヤンキース、そして大リーグに松井がどのように挑戦し、さらにその一員となっていくかを、米メディアによる報道やファンなどの様子を通して紹介、分析していきたい。

 さて、第1回である今回は、地元メディアが松井報道の多くで盛り込む“ある事柄”について触れておきたいと思う。
 ようやくオープン戦ということもあり、今のところ大リーグに関する報道は紙メディアも電波メディアもそれほど大きなスペースをとって伝えていない。しかし、ニューヨークの地元紙などは、やはりヤンキースとメッツについては毎日なんらかの話題を掲載し続けている。その中で松井に関する記事はかなり多く、これはメディアの事前注目度の高さを示すものと言っていいだろう。そして、これらの記事に必ずと言っていいほど出てくるのが、「100人を超す日本人記者の前で」とか「大勢の報道陣を引き連れて」といった日本人報道陣の多さを紹介するフレーズだ。

 これほどの数の報道陣がキャンプの段階で集まることなど、大リーグではかなりの異常事態なのである。ましてや特別なことがあるわけでないキャンプの様子を、テレビが生中継することなどあり得ないことで、日本のテレビ局が中継を行ったことなどは、複数の米メディアが日本の熱狂ぶりを伝える格好のネタにしていた。

日本メディアを皮肉る米メディア 正しいヤンキース報道とは?

 しかし、そんな状況が地元メディアを困惑させつつあるのも確かだ。日本の報道陣は何を伝えるにも松井がらみで、松井のみに興味があるように写ってしまっている。そのため、最初はその多さや熱心さを単純に驚きをもって伝えていた記事が多かったのだが、最近ではかなりの皮肉、さらにはネガティブな雰囲気を漂わせるものが増えてきている。

 その典型が25日付のニューヨークタイムズが掲載した「マツイ・メディアの嵐に遭ったマイナーリーガー」という記事。24日の紅白戦で松井と対したマイナー投手、ジェーソン・アンダーソンが試合後に取材攻勢を受け、困惑した様子を伝えたもので、松井にのみ集中する日本報道陣(マツイ・メディア)を強烈に皮肉った構成なのである。

 実際のところ、日本人が大リーグ、そして伝統あるヤンキースを知っていく、そしてメディアがそのことをファンに知らせていくのに、松井をまず最初のステップにするのは決して悪いことではないと思う。しかし、同時に地元メディアはあくまでヤンキースという地元チームを基本に報道してき、現在もそうしているのだということも理解すべきことだろう。彼らが現在の状況に当惑するのはあまりにも当然なのである。

 だからと言ってわれわれの松井への関心、報道を減らせ、というのもおかしな話であるわけで、これが正解、というのは見つけられないのだが……。

 いずれにしても、今回の松井の挑戦は、自身よりもその周囲の状況で、あまり芳しくない部分もある中での開幕ということになってしまいそうだ。松井の成績とともに、すべてがハッピーな方向に行くよう願いつつ、この欄を進めていきたいと思う。
スポーツナビ 2003/02/03
ヤンキース・松井渡米直前会見 「ファンにもらったパワーをグラウンドで発揮したい」
 米大リーグ、ヤンキースの松井秀喜外野手(28)は3日、ニューヨークに向けて成田空港を出発した。渡米後はニューヨークに数日滞在した後、キャンプ地のフロリダ州タンパに移動して本格的な練習を再開。現地時間18日から始まるヤンキースのキャンプに備える。

 松井は出発直前、千葉県成田市内のホテルで記者会見。グレーのスーツで登場した松井は、「いろいろ大変なことがあると思うが、とにかく決めたのは自分自身だし、我慢強さと前向きな気持ちを持って、頑張っていきたい」と、米国での本格的な野球活動のスタートに向けて抱負語った。また、空港に来るまでの車中、巨人・原監督に出発のあいさつをし、「大変なこともあるが、どんなことがあっても頑張ってこい。応援している」と激励されたことを明らかにした。

松井 「我慢強さと前向きな気持ちを持ってやる」

 今日、2月3日、僕は今年よりメジャーリーグでプレーするということでアメリカに旅立ちます。最初は、いろいろ大変なことや不慣れなこと、不自由なことがたくさんあるとは思いますが、とにかく決めたのは僕自身ですし、どういうことがあろうと我慢強さと前向きな気持ちを持って、頑張っていきたいと思います。そして少しずつ自分のペースをつかみ、皆さまにいいプレーがお見せできるように一日一日を頑張っていきたいと思います。今日は、お天気も大変素晴らしいですし、僕を後押ししてくれているような感じがします。いろいろな追い風に乗ったつもりで、飛行機の中で気持ちをまた新たにして、1年間頑張っていきたいと思います。

――今日の目覚めはいかがでしたか

 実は準備が遅くなってあまり眠れませんでしたが、その分、日の出を見ることができて(笑)、いい出発になると思いました。

――何か特別なものを持ってきましたか

 特にないです。野球をするわけですから、野球さえできる環境があれば大丈夫です。

――FA宣言してから3カ月ありましたが、心境の変化はありますか

 その時、その時でいろいろ変化はありましたが、メジャーリーグでプレーしたいという強い気持ちだけは何一つ変わらなかったです。その気持ちさえ持っていれば、大変な日々ではなかったと思っています。

――ファンの温かい声援に対しては

 温かい声援をいただいて、僕自身うれしかったですし、心強かったです。FA宣言当時のようなそういう気持ちは大分、なくなってきました。それは、本当に皆さまの温かい声援のおかげだと思います。

――日本を去る寂しさと夢への期待感はどのくらいの割合ですか

 初めて日本を離れてプレーするわけですから、多少の寂しさはありますけど、自ら新たな場所を求めて道を選んだわけですから、どちらかというと期待感というか、ワクワクする気持ちのほうが強いと思います。

――自主トレーニング中に風邪を引かれていましたが、現在の体調は

 体調は万全です。

――メジャーリーガー松井は、初めてのキャンプでどんなことにチャレンジしたいですか

 すべてが初めてですから、最初は戸惑う部分もあるかもしれないですけど、少しずつ自分のものにしていきたい。その中で課題も出てくると思いますが、その時、その時でベストを尽くして前進していきたいと思います。その中で今までと違う部分はあると思いますけど、前向きな気持ちを持ってやりたいと思います。

――今後のスケジュールはどんな予定ですか

 ニューヨークに着いて、2、3日滞在します。そしてすぐにキャンプ地のフロリダに向かいたいと思います。

松井 「原監督には『お互い、いい1年にしよう』と言われた」

――日本では巨人のキャンプも始まっていますが、巨人の選手と最後のあいさつはしましたか

 1月の自主トレ中にそういうものは済ませたんですが、先ほどこちらに向かう車中で、原監督に電話しまして、一言「行ってきます」と言いました。

――原監督には何を言われましたか

「自分が決めた道だし、大変なこともあるが、どんなことがあっても頑張ってこい。応援している。お互い、いい年になるように頑張ろう」と温かい言葉をいただきました。

――家族と最後に会ったのは

 先月の29日に両親と東京で食事をしました。本当は兄も一緒に来る予定だったんですが、小松空港(石川)からの飛行機が欠航になりまして(笑)、来れなくなって、両親と3人で食事をしました。30日に別れましたけど、最後に「頑張ってきます」と言いました。

――家族からは何を言われましたか

 母親は女性なので、体や食事を心配しているとは思うんですけれど。父親からは「とにかく自分でやるしかない。そういう強い気持ちを持ってやってこい」と言われました。

――日本で最後の食事は何を召し上がりましたが

 昨日は普通の和食です。いろいろ食べました。

「皆さんの声援は僕に勇気を与えてくれる」

――今度帰ってくるときはファンにどんな姿を見せたいですか

 もちろん、活躍して帰ってくるのが一番いいと思いますが、どういうことがあろうと自分なりにベストを尽くしたいです。毎日、毎日が新しい発見になると思いますが、野球の部分でも、生活の部分でも、一つの挑戦の中で、いろいろな部分が勉強になると思いますから、一つひとつ勉強して、吸収して帰ってくればいいかな、と思います。僕自身はそういう変化にあまり気づかないかもしれないですけど、皆さんが、何か変化があったな、と思ったら教えてほしいと思います。とにかく一番大事なのは野球ですから、まずグラウンドでいいプレーをするために最善を尽くしたいと思います。

――最後にファンへ一言お願いします

 ファンの皆さまには、たくさんの温かい声援を頂いて、すごいパワーをもらいました。それを毎日肌で感じていました。その頂いたパワーを必ずグラウンドで発揮したいと思っています。今後、野球中継は朝が早いと思いますけど、皆さん、早起きして僕のプレーを見ていただいて、その朝の僕のプレーを見て、皆さんが今日一日頑張ろうという気持ちになっていただけるように、僕も頑張りたいと思います。場所は遠いですけど、そういう声援は必ず僕に届きますし、僕に勇気を与えてくれますから、またこれから僕を応援してください。僕もその声援にしっかりとこたえられるように頑張ります。

――日本の子供どもが、松井さんが夢を実現させたということでワクワクしながら見ていると思うのですが、ぜひ日本の子供たちにメッセージをお願いします

 僕も夢を実現したわけではないので(笑)。僕も夢の途中ですし、大きな夢を持って、それに近づこうと頑張っています。小さな子供たちにも自分の夢というか、目標というか、そういうものを持ちながら、大きなものに向かって少しずつ近づけるように頑張ってほしいと思います。またそういう子供たちの夢の実現にパワーを与えられたら、と思っています。

――巨人に入団した時に、小松空港から飛行機に乗る時と現在の心境は同じですか

 忘れちゃいましたね(笑)。当時もふるさとを離れる寂しさはあったんですけど。結構近いものがあるかもしれないですね。新たな場所に向かって旅立つという意味では、かなり心境的に近いような気がします。

――アメリカからの自主トレ、キャンプに対して不安は

 特別なことをやるつもりはないです。新しいことばかりだと思うので、いろいろな環境に何とか対応していきたいな、と思っているだけで。現時点ではそれしかないですね。今、特別、準備していることはないんですけど、自分なりにしっかりとプレーができる体と心構えは準備しているつもりです。後はしっかりとメジャーリーグの練習方法、試合に対応していきたいと思っています。