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Columnコラム

web Sportiva 2010/01/28
イチローvs松井秀喜に注目が集まるアリーグ西地区展望~日本人対決が増える2010シーズンの楽しみ
 日本人のメジャーリーグファンにとって、今オフ最大の関心事は松井秀喜の電撃移籍だったであろう。

 ワールドシリーズMVPを獲得して約1カ月半。松井秀は「愛着のある」ヤンキースに別れを告げ、アメリカンリーグ西地区の雄エンゼルスに身を置くことを決めた。

 今季、ピンストライプを着た松井の姿を見られなくなるのは残念かもしれないが、松井の移籍でこれまでとは違った見どころが味わえるのも確か。ここでは、2010年シーズンの松井秀のエンゼルスと対戦するチームの中で、とりわけ注目度の高いカードを列挙してみる。

マリナーズ戦

 今季最大の注目は、何といっても、松井秀vsイチローの直接対決だろう。

 これまではアリーグの東地区(ヤンキース)と西地区(マリナーズ)だったため年間6試合程度だったが、同じ地区となった今季は、5月7日の3連戦を皮切りに19試合。

 5月から9月まで毎月、同カードが組まれている。松井秀の移籍が決まった際に、イチローは「ウェルかめ・トゥ・ザ・ウエストディビジョン」と、テレビドラマをもじったイチロー節で激励。

 松井も、「(マリナーズには)勝ちたい」と闘志を燃やし、ふたりのボルテージは上がっているようだ。

 さらに、今年はマリナーズが、エンゼルスから俊足巧打のフィギンズを強奪、2008年サイヤング賞投手のクリフ・リーも補強し、3年連続地区優勝を成し遂げているエンゼルスの牙城を崩そうと躍起になっている。

 戦力差が拮抗して例年になく白熱した戦いが予想される中、1番イチローと4番松井、このふたりがライバル対決のキーマンとなるはずだ。

 ちなみに、松井にとって、「コントロールがいいし、緩急を使ってくる。打ち崩すのは難しい」というクリフ・リーはメジャーの中でも厄介な投手と位置付けるひとり。

 昨季は、「今までになかった」というシュート系の食い込んでくる球に惑わされていた。今季、松井秀が彼にどういったアプローチするのか、その点も併せて見てみたい。

ヤンキース戦

 古巣との対戦は、松井にとって複雑な思いが去来するだろう。

 特に、エンゼルスの松井がヤンキー・スタジアム初見参する4月13日は、ヤンキースの今シーズン本拠地開幕試合。つまり、そこで昨季のチャンピオンリングが授与される予定で、劇的なシチュエーションになるだろう。

 ヤンキースファンは、赤いユニホームを身にまとった松井に対して万雷の拍手で迎えるのか。松井はどういう感情で、念願のリングを手にするのか。その一挙手一投足に多くの目がさらされる。

 また、口にこそ出さないが、今オフ松井を積極的に引き止めなかったヤンキースに忸怩たる思いはあるはず。4月13日からの3連戦は、昨季の主戦場で大暴れしたい。

「打席に入れば打つだけです」。会見で言った短い言葉は、打倒ヤンキースへの決意の表れとみた。

 サバシア、AJ、ぺティットら、昨季まで味方だった超一流投手との対戦で厳しい戦いが予想されるが、大舞台になればなるほど力を発揮する松井だけに、何かやってくれそうな気もする。

 今季はこれ以外に5試合、計8試合ヤンキースとの対戦が控えている。

ドジャース戦

 昨季までのヤンキース時代は、同じニューヨークに本拠地を置くメッツとの交流戦「サブウェーシリーズ」が話題だったが、エンゼルスに移籍した今季は、同じ南カルフォルニアに本拠地を持つドジャースとのLA対決「フリーウェイシリーズ」が脚光を浴びそうだ。

 6月11日~13日にドジャースタジアムで3連戦、6月22日~24日にエンゼル・スタジアムで3連戦が行なわれる。松井にとって、ドジャースには縁の深い選手がふたりいる。

 ヤンキース時代、師弟関係にあったジョー・トーリ監督と、日本時代ライバルとしてしのぎを削った同級生、黒田博樹だ。

 敵チームとしてトーリ監督と交わるのは初めて。さらに、黒田が登板すれば、日本時代から8年ぶり、メジャーでは初対決となる。

 黒田は「すごい打者。お互い年を取って、これまでとは違った対戦ができれば」と話し、対戦を心待ちにしているという。

 昔のような直球勝負の醍醐味は味わえないかもしれないが、経験を積んで熟練されたふたりの対決は興味深い。トーリ監督の、松井に対する采配も見ものだ。
SPORTS COMMUNICATIONS 佐野慈紀「ピカイチ球論!」 2010/01/25
松井秀喜、守備にこだわるワケ
 昨シーズン、ニューヨーク・ヤンキースで自身初のワールドチャンピオンに輝き、MVPを獲得した松井秀喜選手。オフには彼の移籍がいろいろと取り沙汰されていましたが、来シーズンはロサンゼルス・エンゼルスでプレーすることが決定しました。同じアメリカンリーグ西地区にはイチローが所属するシアトル・マリナーズがあります。日本が生み出した2大スーパースターの対戦は私たち日本人にとっては非常に楽しみですね。

 さて、その松井にとって最大の懸案事項はやはりヒザの具合でしょう。本人によれば、順調に回復へと向かっているようです。昨年1年間休ませたことも良かったのかもしれませんね。その松井のヒザに関してよくいわれているのが日本球界在籍期間における芝問題。もちろん、これだけが原因ではないでしょうし、どこまで影響を及ぼしたかは定かではありませんが、少なからず負担がかかっていたことは確かでしょう。

 現在、NPB12球団のホームスタジアムの中で天然芝は阪神甲子園球場、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島、神戸のスカイマークスタジアムのみ。あとは全て人工芝となっています。とはいえ、人工芝も研究・開発が重ねられ、今ではクッション性も十分にあります。一昔前とは選手のヒザへの負担も大きく軽減されているのです。

 しかし、下の土台が土である天然芝と違い、人工芝はコンクリートの上に敷いています。芝自体の性能が向上し、衝撃を抑えてはいても、やはり土とコンクリートとの違いは大きい。ヒザや股間節といった下半身への危険性は否めません。また、滑りやすい人工芝の上では、選手たちも無意識のうちにブレーキをかけてしまいますから、思い切ったプレーはしにくくなってしまいます。

 一方、メジャーでは90年代以降、人工芝から天然芝にかえるスタジアムが増え、今ではトロピカーナ・フィールド、ロジャーズ・センターの2カ所のみ。他は全て天然芝となっています。

 こうした日米の傾向の違いは、それぞれの気候や文化が異なるからでしょう。日本では梅雨の時期などの集客を考慮すれば、雨天中止がないドーム球場は経営的にも適しているといえるでしょう。その点、米国では雨が降っても、それさえもファンが楽しんでしまいますので、雨でも集客はそれほど減少しません。こうした風習の違いも関係しているようです。

 松井選手はジャイアンツ時代から左ヒザを痛めていましたが、メジャー移籍後には両ヒザを手術しています。2006年に守備で痛めた左手首を合わせれば、3度も手術をしています。実は僕自身も米国でメスを入れた経験があります。渡米した際、右ヒジを痛めていたので、野茂英雄にフランク・ジョーブ博士を紹介してもらい、彼に診察してもらったのです。そこでジョーブ博士に手術をすすめられたわけですが、僕自身が手術をしようと決意したのはジョーブ博士に「手術したら、さらに強くなるよ」と言われたからだったのです。これはスポーツ選手として本当に嬉しい言葉でした。

 それでも手術までは不安もありました。そんな僕を救ってくれたのが、偶然目にしたあるテレビ番組だったのです。その日はジェリー・ライスというアメリカンフットボールのスーパースターがヒザの手術をして復帰した日でした。そこで番組には手術の執刀医が出演していたのです。そこでアナウンサーからの「もし、また同じ部分をケガすれば、今度こそ選手生命は絶たれるのか?」という質問に、執刀医はこう答えたのです。「いいえ。もう一度、手術すれば大丈夫ですよ」。この言葉を聞いて、当時の僕はどんなに心強かったことか……。不安な気持ちを消し去ることができました。

 米国は世界で最もスポーツ医学が発達していますから症例も多く、権威あるドクターも多くいます。日本も村田兆治さんがヒジを手術し、見事に復帰した辺りからメスを入れる選手が増えました。今では国内で手術する選手も少なくなく、技術的には米国とさほどかわらないところまで来ていると思います。

 しかし、リハビリの考え方については、日米では少し違いがあるような気がします。日本でリハビリというと、マイナスになったものを元の状態に戻すというイメージがあります。しかし、米国では先述したジョーブ博士の言葉もそうですが、元の状態よりもさらにプラスの状態を目指すのです。というのも、特にスポーツ選手は他の部分は鍛えることによってプラスとなるわけですから、メスを入れた部分だけが元の状態に戻っても、それは結局はマイナスとなってしまうからです。

 こうした考えの違いは、立場の違いにも表れています。日本ではリハビリを担当する理学療法士はあくまでも医療的サポートをする役割のみ。しかし、米国ではスポーツコンディショントレーナーの国家資格があり、権威ある職業として広く認められているのです。

 さて、松井選手のヒザは現在も回復の方向に進んでいるとはいえ、完治はしていません。それでも松井は今回の移籍で守備への強いこだわりを見せました。その理由は今後のことを考えてのことだと私は見ています。

 先述したようにワールドシリーズで日本人初のMVPに輝く活躍を見せ、松井自身も打撃に対しては確かな手応えをつかんだことでしょう。しかし今後のことを考えれば、守備もできるようにしておかなければいけません。というのも、打撃だけではレギュラー獲得はDHのみです。しかし、メジャーには松井よりもパワーヒッターは山といるわけですから、結局は代打要員にならざるを得ません。これでは選手寿命が短くなってしまいます。 これから先、レギュラーを獲得するにはバッティングだけではなく、守備も含めた総合的なスキルアップが必要と松井選手は判断したのでしょう。

 ヤンキースに在籍した7年間、松井選手は輝かしいストーリーをつくりあげました。特にラストとなった昨シーズンは周知の通り、最高のかたちで締めくくったわけです。そこではジャイアンツ時代の「ゴジラ松井」ではなく、チームバッティングに徹した彼を見ることができました。

 そして今シーズンからは新たにエンゼルスでのスタートを切ります。彼自身もホームランへのこだわりを語っていますが、今度はぜひホームランバッター松井の姿を見せてほしい。僕を含め、日本のファンが期待しているのはそこではないでしょうか。
スポニチ 2010/01/03
松井秀喜独占激白
 エンゼルスに入団した松井秀喜外野手(35)が本紙の新春独占インタビューに応じ、新天地に懸ける思いを語った。7年間過ごしたヤンキースを離れ、FAで昨年12月16日(日本時間同17日)にエ軍と1年契約を結び、31日には故郷・石川に帰郷した。約1カ月半に及んだ移籍先決定までの真実、そして松井が金額以上に重視した出場機会への熱いこだわりとは――。チャレンジと語る第2のメジャー人生の目標を「全試合出場」と力強く記した背番号55が2年連続のワールドチャンピオンへ挑む。

 松井 皆さん、あけましておめでとうございます。エンゼルスの松井秀喜です。

 ――もう、そう語ることに違和感はないのか。

 「ええ、もう気持ちの上ではね。完全にエンゼルスの一員になっていますよ。新しいスタートになるわけで、今は本当にすがすがしい気持ちです。入団会見後も自主トレで南カリフォルニアに数日滞在していましたが、町でも何度か声を掛けられた。“ウエルカム・トゥ・ロサンゼルス”みたいな感じかな。うれしいですよね」

 ――巨人、ヤンキースと名門一筋で17年間歩んできた。今回は本当に新天地という感じがする。

 「確かに巨人からヤンキースへ移った時と違う感覚はありますよね。前回は舞台が完全に変わった。今回は自分自身にとって、本当に新たなチャレンジだと思っています。もちろん新しいチャレンジには不安は付きものなのだろうけど、でも今は楽しみの方が多い。一番楽しみなのは、自分自身がここでどういうふうになっていくのか、という楽しみ」

 ――それは環境が変わることによる新たな進化、変革、可能性といったことか。

 「自分の中でね、新たな可能性がまた出てくるんじゃないかと期待している部分はある。これはもうすべてにおいて。例えば打撃に関してももちろんだし、もっと打てるように、パワーが出るようになったりとか。もちろんやってみないと分からない。どう出るかは、やってみてのお楽しみでしょう」

 ――ここ数年は両ひざの故障に悩まされ、守備にも就かなかった。その一方で打撃に関しては積み重ねてきた自信があるのでは。

 「う~ん、難しいですね、それは。常に試行錯誤、というのは変わらないんですよ」

 ――昨季は打率・274、28本塁打、90打点。先発出場が116試合しかなかったことを考えれば、全試合出場すれば本塁打と打点は単純計算で大きく伸びることになる。

 「打率以外の数字は、試合数と比べればいい部分もあったかもしれない。でも満足することはないですよ。それはそれで去年の自分の実力だったと受け入れ、今年もっと良くなるように努力するしかありません」

 ――松井選手が満足する数字はあるのか。

 「ないね、ないよ。10割打ったら、満足するかもしれないですね」

 ――打球が飛びやすいと言われる西海岸ではこれまでも本塁打が多い。出場試合数が増え、40発狙えると指摘する評論家の方も多い。

 「そうなの?そうなるといいね。ただあくまでデータですから。どうなるかは分からない」

 ――そこで掲げる2010年の具体的目標。色紙には「全試合出場」と書いたが。

 「はい。これはね、選手として何よりも必要な部分。やはりここ数年試合に出られないということを経験してきた。それは選手として非常につらいことだった。それまでは幸運にも、周囲の手助けもあって出続けることができていましたから。外野の守備に戻りたい、という気持ちはもちろんありましたけど、それはなぜかというと、試合に出るためには守備が必要だということ。DHだけだとどうしても出場機会が狭くなる。DHだけでも、たくさん出場機会があるんだったらそれはそれでいいとは思うんですけど。でもやはり他の選手も、休養などでDHに入れたいというチーム事情も出てくる。それはヤンキースだけじゃない、どこの球団でもそう」

 ――エンゼルスでも背番号は55。もとは王貞治の持つ日本記録のシーズン55本塁打を目指す、というメッセージでもあった。全試合に出場できれば、メジャーの舞台で55発も狙えるのでは。

 「可能性はゼロではないと思いますよ。ただそういう意識は、今は全くないんですよ。もちろんただ意識しないだけであって、可能性はゼロじゃないと思う」

――エ軍との契約が合意したのは、昨年12月15日(日本時間同16日)。ワールドシリーズMVPから42日目だった。それは同時にヤンキースへの決別でもあった。

 「ワールドシリーズでMVPを頂いた時のインタビューでも言いましたけど、やっぱり僕はニューヨークという街が好き。ヤンキースが好きだったし、チームメートも大好きだったし、ファンも大好きだった。僕にとっては最高の野球環境。やっぱりそこにいたいという気持ちも強かった。何て言うか、心のどこかで期待している部分もあったと思います」

 ――エ軍からオファーが届いた時、ヤ軍のことが頭をよぎったのでは。

 「もちろん。エンゼルスのソーシア監督、リーギンスGMと直接会い、そこで具合的な話が出て正式オファーをいただき、それにイエスかノーかを答える、という形。ある程度、何日以内にという期限付きで。ヤンキースが少しでも興味を示してくれれば、という気持ちはもちろんありました。それだけ愛するチームでしたから。その晩は、ずっと考えてましたよ。非常に悩みました。ずっと悩んでいました。ヤンキースから少しでも何かアクションがあれば、というふうには思っていたけど、何もなかった…。まあ、仕方ないですよね」

 ――ヤ軍からはどんなオファーを期待してのか。

 「いや、どんなオファーというより、とにかくヤンキースが考えるなりのオファーがあれば、僕はそれで良かった。それが自分にとって納得する、しない、じゃなくて、“オファーする”イコール“チームに必要”ということ。どんなオファーでもね、あったら多少は自分の気持ちとしては変わったものになったかもしれない」

 ――代理人のテレム氏は“ヒデキはヤンキースで引退したいと考えていた”と話していたが。

 「それは常にヤンキースから求められる選手でいたい、ということ。結果的にそうなれば、それはそれで幸せだったとは思うけど。決してそこがすべてとか、目標だったというわけではない。あくまで自分の現在いるチームから求められる選手でいたいという。それは選手としての純粋な気持ちですよね」

 ――今年からはそのヤ軍が最大の強敵となって立ちはだかる。

 「実際に試合が始まってみないとどう感じるのかは分からない。でも打席に立てば打つだけ。それ以外ないです」

 ――今年4月14日、ヤンキースタジアムの今季開幕戦でいきなり激突する。

 「現時点で楽しみということはない。もちろんヤンキースと同じく、ヤンキースタジアムも自分にとって特別な場所。本当に素晴らしい空間です。でも今度から敵地になるわけですから」

 ――ファンは歓声で迎えてくれるのか、それともブーイングか。

 「分からないですね。自分としてはどう迎えてほしいとか、そういうのは特にありません。どういう形であれ構わないですよ」

 ――エ軍とは1年契約で年俸600万ドル(約5億4000万円)。昨季の1300万ドル(約11億7000万円)から半額以下になった。

 「それは今回に関しては全く重要視していなかった。とにかく僕が考えていたのは出場機会」

 ――極端な話、それ以下でも納得できたのか。

 「僕の考えではそう。だから年数や年俸は、判断基準にはそんなに大きく影響しなかったと思います」

 ――実際、決断する前に代理人の自宅でソーシア監督と会い、直接「毎日試合に出てほしい」と言葉をかけられた。

 「そうですね。その中で僕の健康状態さえ良ければ、守ることにもチャレンジしてほしい、と。この言葉を頂いたのが大きかったのは間違いないですね」

 ――まず、全試合出場するために守備が必要だと考えた。その上で、それだけじゃない守備復帰へのこだわりもあった。

 松井秀喜「やはり野球選手である以上、守りたい。ただそれだけ。DHになるまではずっと守ってきた。それが当たり前になっていた。その後、DHをやってみて、自分としては守りながら試合をした方がプレーをしやすい。僕なりにそう感じただけ。一番は空気の違い。DHだと守備の間にロッカーなどで準備ができる分、グラウンドにもなかなかいられない。グラウンドとの空気感の違いは、多少は感じていました」

 ――昨年12月にはミニキャンプを行ったが、ここまでの手応えは。

 「ある程度はできたんじゃないかなと思います。ゴロもフライも、軽いノックを受けました。ランニングも全力疾走まではいかないけれど、近くまではいっています」

 ――12月6日の始動日には、動く時に左ひざへの「怖さ」はまだ残っていると話していた。

 「怖さは正直まだある。これはもう昨年のシーズン中と同じ感じです。怖さがあっても守備ができるのか、それとも完全に怖さを取り除かないとできないのか。それはこれからやってみないと分からない部分。シーズン開幕も、まずはDHからになるでしょうから。そこから守れたら週に1試合、2試合と増やしていければいい」

 ――それだけこだわった出場機会と、そのための守備復帰。その意味では来季は野球人生の転機になる。

 「はい。確かにそうなるかもしれない。守備をやれるか、やれないか、ですから。今はまだそれ以上のことは言えません」

 ――7年間住んだニューヨークを離れる。南カリフォルニアでの生活については。

 「まず気候がいいことは間違いないですよね。非常にありがたいこと。ロサンゼルスは食事も困らないと思う。生活環境は、米国の中では間違いなくいい街ですよね」

 ――同地区のライバルにはイチローが所属するマリナーズもいる。先日は独特のコメントで歓迎の意を表していたが。

 「そういう気持ちでいてくださるんですから、それはうれしいですよ。同地区のライバルとしてこれから対戦も増えるでしょうし。ただ試合になれば、お互いチームが勝つために頑張るだけ。マリナーズは補強も凄くしているし、チーム力も上がっている。でも他のチームも強いし、楽なところなんてない。エンゼルスが強豪といっても厳しい戦いが待っているのは間違いない」

 ――松井選手に対するソーシア監督の期待は大きい。

 「そりゃ新しく来る選手には期待しますよ。期待されなかったら、それはそれで寂しい。あとは自分がどれくらい応えられるか。期待が大きくてもプレッシャーにはなりません。どういう人から期待されても、あくまで自分の持つ良いものを出すだけ。自分が今まで養ったもの、身に付けたものを全部出し切りたいと思っています」

 ――エ軍はヤンキースと比べて選手も若い。監督は松井選手にリーダーシップも期待している。

 「外野陣は決して若くないと思いますが、それ以外は確かにそういうチームなのかなとも思います。言葉の壁以外は、できることはできると思いますよ。エンゼルスも十分強豪ですし、今は名門への階段を上がっている途中。その力に少しでもなれればいいなと思います」

 ――昨年はワールドシリーズでMVPを獲得した。これは松井選手の考えにおいて、唯一無二といえるくらい最高のタイトルだったのでは。今年も目指すところは同じ。

 「ワールドチャンピオンにならないと獲れない。そう考えれば確かにそうかもしれないですね。最高の舞台でチームが勝って、なおかつMVP。確かに究極かもしれません。でも確かに素晴らしいタイトルだけど、いつも言っていることですが個人を目標にすることはない。MVPを獲るために頑張る、とか。あくまでチームが勝つために頑張るわけで。目指すのはチームがワールドチャンピオンになる。ただそれだけです」

 ――「全試合出場」とともに目標となるのは、ボールに記した「2年連続ワールドチャンピオン」。チームが変わっても、これは不変にして最大の目標になる。

 「何においても勝つためにプレーするだけです。それ以外ないです」