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Columnコラム

Number Web MLB東奔西走 2010/06/26
複数データが裏付けている!?エンゼルスの松井秀喜、今後の爆発!
 このコラムをまとめている時点(6月23日現在)で、エンゼルスの松井秀喜がメジャー通算150本塁打まで“あと1本”の状態で足踏みを続けている。とはいえ、5月は一時打率が2割2分台まで落ち込む打撃不振に陥っていたが、どん底から脱したのは間違いない。

 5月の月間打撃成績は、1割8分4厘、3本塁打、14打点。打率に関しては、これまで松井が過去7年間で残した月別成績で最低のものだったのに対し、6月は22日現在で3割4分3厘、2本塁打、13打点を記録している。

 松井の打撃浮上とともにチームの成績も上昇。

 5月中は地区3位に甘んじていたが、6月に入ってからは一度は首位に立つなど、レンジャーズと首位争いを演じられるまで伸びている。主軸の1人だったモラレスが不運の戦線離脱もあり、松井のバットがチームに与える影響力も確実に高まりを見せている。5月には地元メディアからも不振に陥った松井の起用を疑問視する報道も出ていたが、本人とチームの成績が上昇するにつれてすっかり沈静化したようだ。

「打撃は水もの」だが松井のデータは信用できる?

 誰もが「打撃は水もの」だという通説くらいは理解している。

 そもそも選手の体調、試合スケジュール、対戦チームあるいは相手投手の状態等々、様々な要素が絡み、打撃における好不調の波は基本的に激しくなるものなのだ。

 だが、あるデータを見た時、松井の「好調」を統計的に予測してくれるかもしれないという思いが湧きあがってきた。

 松井の昨年までの月別成績の打率ベスト3とワースト3をご覧頂きたい。興味深いことがわかるのだ。

<ベスト3>
【1】 2005年6月 3割9分8厘 6本塁打 23打点
【2】 2006年9/10月 3割9分6厘 3本塁打 10打点
【3】 2003年6月 3割9分4厘 6本塁打 29打点

<ワースト3>
【1】 2007年9/10月 1割8分5厘 2本塁打 12打点
【2】 2008年8月 1割8分6厘 2本塁打 6打点
【3】 2009年6月 2割4厘 3本塁打 9打点

 6月に注目してみてほしい。

 昨年はワースト3位の打率に終わっている一方で、2003年と2005年は4割近い打率を残している。振れ幅が大きいものの、6月が好調な1カ月だと言えそうだ。

6月から調子が上がり、7月に最も活躍するというデータ。

 さらに松井のメジャー通算の月別打撃成績をご覧いただきたい。
3/4月 2割7分1厘 21本塁打 102打点
5月 2割8分1厘 24本塁打 113打点
6月 3割3厘 28本塁打 123打点
7月 3割2分 31本塁打 102打点
8月 2割7分9厘 25本塁打 103打点
9/10月 2割9分3厘 20本塁打 94打点
(*今年6月22日までの成績を含む)

 通算成績でも、やはり6月が他の月以上に好調なのがわかるが、それを上回る月がある。7月だ。松井にとって最高打率、最多本塁打を記録している7月こそ、最も相性のいい月ということになるわけだ。

 ただし、今年からチームも変わっており、一概に過去の数字を鵜呑みにできないのも事実。開幕直後にこのコラムでエンゼルス番記者の松井評とその環境を紹介したが、エンゼル・スタジアムは左打者が有利だったヤンキー・スタジアムとはかなり違う。過去の成績が良かったからといって、今年も7月に向けて本塁打を量産していくかは微妙なところだ。

ホームであるエンゼル・スタジアムは相性のいい球場。

 だがこんなデータもある。

 松井が50試合以上出場している球場別の1本塁打当たりの平均試合数なのだが、実に興味深い結果となっているのだ。
エンゼル・スタジアム 4.36
新ヤンキー・スタジアム 5.57
フェンウェー・パーク(レッドソックス) 6.00
旧ヤンキー・スタジアム 6.32
トロピカーナ・フィールド(レイズ) 7.00
キャムデン・ヤード(オリオールズ) 7.29
ロジャーズ・センター(ブルージェイズ) 7.71

 そうなのだ。実は松井は、これまでもエンゼル・スタジアムとの相性が抜群に良かったのだ。

 これだけの数字を目の当たりにして、皆さんは7月の松井に期待してみたくならないだろうか。繰り返すがあくまで打撃は水もの。メジャーを観戦するにしろ、取材するにしろ、楽しみが多いにこしたことはないのだから、大いに期待してみるのも悪くないはずだ。
スポーツナビ 杉浦大介 2010/06/18
マツイ・ビーイング・マツイ NYの緊張から遠く離れたアナハイムで
 16日のブルワーズ戦の試合前――。エンゼルスのクラブハウスでたたずむ松井秀喜の周囲を漂う空気は、ニューヨーク時代と変わらぬままに見えた。

 一歩一歩を確かめるかのように静かに動き、自身のロッカー前に悠然と腰を掛ける。たまにちらりとテレビに目をやり、そして多くの日本人記者たちの取材にときに笑顔を交えながら順番に答えていく。
「西海岸と東海岸の違い? スタジアムに来てしまえば同じです。生活自体は大きく変わりましたけど、ニューヨークはニューヨークで楽しかったし、こっちはこっちで楽しめてる気がするし。どちらの生活もいいですよ」

 メジャー随一の名門球団ヤンキースを去って、新天地エンゼルスでの1年目。劇的な変化を表現するコメントを期待するこちらをはぐらかすように、丁寧でいながら飄々(ひょうひょう)としたポーカーフェイスを崩さない。
 筆者は過去5年ほど、ニューヨークにいながらにして決して近づき過ぎず、日本人だからと肩入れもし過ぎず、1人のメジャーリーガーとしての松井の活躍とクラブハウスでの日々を眺めて来た。

 記憶の中の松井は、無安打が続いている真っ最中でも、1試合2本塁打を打った翌日でも、同じルーティンを保ち、同じように周囲に接する。感情の抑揚は、微妙な距離を保っているものにはまったく判断がつかない。そして……2カ月以上をアナハイムで過ごして来た今も、すべては以前と同じままだった。
 マツイ・ビーイング・マツイ。メジャーでの安定した活躍の原動力となって来たはずの「不動心」は、やはりいまだに健在のようである。

ニューヨークとは対照的なアナハイムの雰囲気

 だが松井自身は変わらずとも、プレー環境自体は大きく変わった。カリフォルニアと言っても、ロサンゼルスよりさらにのどかなアナハイムは、生き馬の目を抜くようなニューヨークとは対照的な場所だ。
「ワールドシリーズMVP」の看板を背負って移籍して来たスラッガーは、主役の働きが即座に期待される1人のはず。それでも極端にくつろいだ雰囲気のアナハイムでは、ヤンキース時代のように過剰なまでのプレッシャーに襲われることはない。エンゼルスも過去5年中4度も地区制覇しているが、「常勝のオーラ」はチームの周囲には存在しない。

「ファン気質の違い? ニューヨークのファンはすごいブーイングするので、そういった意味では違うのかもしれないけど、どうなんだろう? 試合中はファンの反応とか実際にそんなに気にはしていないですからねえ」
 松井本人はそう語るが、しかし担当記者たちは「地元選手がブーイングされることなどほとんどない。ニューヨークと比べ物にならないほどのんびりしている」と口をそろえる。これまで打率2割6分台と必ずしも当初の期待に応えているとは言えないが、地元はそんな松井を温かく見守っているという。
 実際に本塁打が出れば花火がぽんぽん上がるエンゼル・スタジアムは、ほとんどテーマパークの様相。地元メディアもほのぼのとしていて、常に何か刺激的なもの引き出そうとする東海岸のような厳しさは感じられない。
 そんな場所で静かに試合を眺めながら、筆者は過去にニューヨークを出て行ったヤンキースの選手、監督たちの言葉をふと思い出さずにはいられなかった。

「西海岸ではレッドソックスの選手に与えた死球のことを20分以上も説明し続ける必要はもうない。本当に助かるよ」
 ヤンキース退団後にそう語って記者たちを笑わせたのは、現在はロサンゼルス・ドジャースの指揮を執るジョー・トーリ監督。一方で西海岸同様に温厚なヒューストンのアストロズに移籍し、「ニューヨークの緊張感がすぐに恋しくなった」と公言したアンディ・ペティットのような選手もいる(ペティットは故郷ヒューストンで3年プレーした後、2008年にヤンキースに復帰)。

プレッシャーから離れて思うのは?

 常に最高のものを引き出そうと周囲が躍起になるニューヨークと、まずは現状に感謝する西海岸。前述通りどこに行っても「松井は松井」なのだが、しかし読売ジャイアンツ、ニューヨーク・ヤンキースと常勝チームを渡り歩いて来た男なら、もちろん環境の大きな変化に気付いているはず。さて、36歳を迎えた現時点の松井にとって、いったいどちらが相応しい舞台なのだろうか。

 それを尋ねてもまたはぐらかされるだろうし、ほかの記者たちにも詳しくは語ってはいないという。もしかしたら本人の中でも確かな答えは出ていないのかもしれない。すべてが分かるのは(話すのは)、今季のプレーオフの季節を終えるころか、あるいはもっと先の話になるのか。
「ヤンキース? うーん、もう結果を『ESPN』のニュースでチェックするくらいかな。でも、まあ、彼らは心配しなくても大丈夫(強い)ですからね」
 今季のヤンキースについて尋ねた際、言葉は少ないながら、7年もの長い時間を過ごしたチームへの愛情が微かに透けて見えたような気もした。そんな古巣との対決がもし秋に実現すれば……、過去と今がつながり、彼の中で現在地に対する明確な答えが見付かる助けになるかもしれない。

 いずれにしても、プロ人生で初めて「必勝の重圧を背負うチーム」を離れて迎えた2010年。「天使の街」での1年目を終えるころ、またこの穏やかな場所を訪れ、緊張感の違いについて尋ねてみたい気もする。松井はトーリのように安堵(あんど)を見出すか、もしくはペティットのようにスリルを渇望するか?
 ただ、もっとも……質問をはぐらかすのがうまい松井が、そのときにも筆者に望むような答えを返してくれるのかどうかは、まったく微妙なところなのではあるが。
MATSUI55.TV 2010/06/07
インターリーグが始まります!
はい、皆さん、こんにちは!松井秀喜です!
みなさん、いかがお過ごしでしょうか?

エンゼルスはですね、開幕以来、波に乗ることができず・・・未だ借金生活を送っておりますが、
力があるチームですから、これから徐々に巻き返してですね、
まずは地区優勝できるように頑張っていきたいと思います!

これからですね、インターリーグが始まります!
昨年はナショナルリーグの球場では、一切スターティングメンバーで出ることは無かったんですけど、
今年は守備がある程度できる状態ですので、
守備でも何試合かインターリーグで出れるんではないかという風に思っております!

僕自身もチームも今はいまいちですけど、これからですね、どんどん僕も打って、
チームも連勝を重ねてですね、巻き返していきたいと思います!
頑張ります!
web Sportiva 2010/06/04
大不振でも一向に気にせぬ、松井秀喜の鈍感力
 好調な滑り出しを見せた松井秀喜も、5月は想像を越えるほどの不振を極めた。

 月間打率1割8分7厘、3本塁打、14打点。

 きっかけをつかみかけては、スルリと落ちる――。プロ18年目の松井もさすがに、「(調子の)波は絶対出てくるんで、そのへんはつかめそうで、つかめないものじゃないですかね、(プロで)十何年やっていても、たぶん……」と語り、アナハイムの晴れた空とは対照的な“曇った表情”を見せたこともあった。

 不振を極めたこの1ヶ月、首脳陣は松井にあらゆる手立てを尽くした。5月3日、開幕からずっと任せてきた4番から、5番に降格。さらに7日のマリナーズ戦後には、ソーシア監督と松井が緊急会談を行ない、9日の試合で今季初めて休養を与える方針を決めた。それでも、松井の調子が上がらないと見るや、14日は6番に落とし、24日にはついに7番に……。守備につかなければならない交流戦でも、3試合中、出場は1試合のみ。明らかに打撃不振が原因だった。

 時を同じくして、チームも5月は絶不調。背に腹は代えられない――。ソーシア監督ら首脳陣は常に「スランプはヤンキース時代だってあったこと」と、変わらぬ信頼を口にするものの、チームの勝利が最優先なのは言うまでもなく、打順降格は仕方なかった。

 加えて首脳陣に、「本当に大丈夫なのか?」という疑心がまったくなかったとは言えない。あるコーチは「松井はみんな(報道陣)には何と言っているの?」と、心配顔をして聞いてきたこともあった。

 周囲も騒がしさを増す。一部米メディアでは、「ナポリをDHにして、松井は控え、もしくは解雇か?」という報道もあったほどだ。

 ただ、喧騒に包まれる中、唯一、当の本人だけは愚直に、マイペースに、浮上のきっかけを探っていたように思う。

 ソーシア監督が松井と緊急の話し合いを持ったときのことだった。その会談後、ソーシア監督は「不振脱出のため、特別な打ち込みをするかもしれない」と発言していた。しかし8日の昼下がり、日本メディアが集まってみたものの、早出の練習に当の主役はいない……。快音を響かせていたのは、主軸のハンターや、ウッドら若手選手。松井はいつも通り、身体のケアを行ない、通常の集合時間に顔を出し、「おはよー」と、ひと言。悠然と出勤したその夜、松井は日米通算1500打点をやってのけた。

 それ以降も、特打や打ち込みで不振脱出を図る松井の姿は見受けられない。だからといって、準備を怠っているわけではない。しっかりと、試合前後に身体をケアし、練習前には風呂に入り、持病のひざを温める。ルーティーンは決して崩さない。たとえ、不振に陥っても、たとえ、遅刻しても。

「打てなくて、焦っても仕方ねぇよ。やるべきことをきちっとやるだけ」

 決して強がりに聞こえないところが、松井の凄みだ。

 もちろん、悩ましげな姿もあった。守備練習中でも、打撃のことを考えている仕草が目についた。外野のポジションで、重心を左において、右でステップする動作を繰り返す。口調も、本当に若干だが、とがっている感じはあった。それでも、松井の気持ちの振り幅は小さい。いや、小さく見える。「スランプ真っただ中、もう打てなくなるんじゃないかと考えることは?」と聞くと、一笑に付された。

「あるわけないだろ。スランプなんて、いつでもあるんだから」

 ならばと、「ストレスで眠れなくなるときは?」と尋ねると、「ベットにはいったら、すぐに寝られるよ。寝つきいいんだよ、俺は」。役者が違った。

 打率も、打撃の調子も、周囲の反応も、上がったり、下がったり。いろいろな波がとめどなく押し寄せる。だが、松井秀喜自身は、ヤンキース時代と変わらず、大きな波も、小さな波も、まっすぐ、同じように進んでいる。

 6月に入って3試合連続マルチ。そろそろ爆発しても、何ら不思議はない。